虫の解放 後編
「困った事、ですか?」
と少年が尋ねた。
「ええ。私は、今まで生き物を飼った事がないんです。
犬や猫はおろか金魚ですら飼っていた事がありません。なので、こんな特殊な虫を飼い続けられるか不安なんです」
と少女が言う。
少年は確かにその通りだな、と思う。
「確かにその通りだ。貴女がいま持っている虫は、他のどんな生物よりも特殊ですから……確かに、僕でも分からない」
彼女の表情は曇っていた。
「自分で連れてきたのに、それで飼えないなんて、本当に自分勝手ですよね」
と少女は言う。
虫は「キキー、キキー」と鳴き声を上げながら身を震わせていた。
「……あの」
ふと少年は気が付いた事があったので、彼は少女に聞いてみることにした。
「なんでしょうか?」
と少女は言う。
「実は、僕の知り合いに、とても虫が好きな女の子がいるんです。虫の事になると熱心で、それで……その友達なら、いま貴女が持っているその虫も喜んで引き取ってくれるかも知れません」
その時、少女の表情がパッと明るくなった。それはまるで、広大な光が見えたかのような表情だった。
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