第2話 創作における「面白い」とは

こんにちは。連載2話目になります。


今回扱いたいテーマは、「面白い」。初回の概要の説明でもふれたように、この言葉は非常に意味の広い言葉で、それゆえに理解しづらいものとなっています。


しかし、どのジャンルどの媒体でも、創作において追求すべきは「面白さ」と言えるほど、非常に大切な概念です。この記事では1話で示した方法にのっとって、分析・細分化を可能な範囲でやっていこうと思います。


まずは辞書で代表的な意味を三つ紹介します。


1 興味をそそられて、心が引かれるさま。興味深い。

2 つい笑いたくなるさま。こっけいだ。

3 心が晴れ晴れするさま。快く楽しい。


あれ、辞書引きだなんてそんな文系的なことをするの?と思ったかもしれません。じつは、理系でも言葉の定義は大事なんです。各々の解釈で理解することは大切ですが、初めは必ず定義から入るべきです。


意味の話に戻しますが、やはり先人の考えには感服されるものがあります。上の三つの意味はそれぞれ被りの大きくない範囲を持ち、代表的な「面白い」という感情を別の言葉で表しています。


もちろん、さらに辞書を調べれば他の意味もあることがわかるでしょう。しかし、あまりに多くても扱いきれないので今回はこの三つを考えたいと思います。


初めに概観として、この三つの意味にそれぞれ対応する英単語を与えたいと思います。


まず1つ目、興味をそそられて、心が引かれるさま。興味深い。これには、interestingを設定します。(これからは「iの面白さ」として扱う)

次に2つ目、つい笑いたくなるさま。こっけいだ。これは、そのままですがfunnyを設定します。(これからは「fの面白さ」として扱う)

そして3つ目、心が晴れ晴れするさま。快く楽しい。これには、comfortableを設定します。(これからは「cの面白さ」として扱う)


特に上2つの違いは、感覚的にも納得してもらえるのではないでしょうか。テレビ番組で言うならば、1つ目はドキュメンタリー番組、2つ目はお笑い番組といったところでしょう。


次に3つ目の心が晴れ晴れするさま。快く楽しい。ですが、ここにはcomfortable(心地よい)を設定しました。これをテレビ番組で表すなら、早朝5時くらいに放送している自然や動物を映している番組でしょうか。


実際には、どんなエンタメでもこれらの複数の面白さが絡み合って全体の面白さとなっています。クイズ番組は、その問題のクオリティによって「iの面白さ」を追求した番組と言えますが、出演者に芸人を採用することで「fの面白さ」も同時に追い求めています。また、「cの面白さ」はどんな番組にも発生しえます。何となく、ながらでテレビを見ているとき、わざわざテレビを消さないのはリモコンのボタンを押すのが面倒だからではなく、その状況に心地よさを感じているからではないでしょうか。


さて、ようやくですがこれらの意味の小説における立場を考えていきます。


まず、「iの面白さ」。

私は、この「iの面白さ」が発生するのは、「驚き」があった時だと考えます。「驚き」には大小があり、大きいものだと文字通り体が震えるような「衝撃」でしょうし、小さいものだとふとした「気づき」かもしれません。


例を出しましょう。

誰も予想しなかった人物が物語の黒幕だった。これは大きな衝撃でしょう。その事実が露見するまでは感じなかった「iの面白さ」を、事実の判明とともに一身に感じることになります。

小さいものでは、登場人物がその人なりの考えを話したときなどです。内容としては物語のカギを握るような発言じゃなくとも、見ている側と異なる考え、予想できなかった考えを話すと、「なるほどな」と「iの面白さ」を感じるでしょう。


あまり掘り下げると何千字書いても終わりそうにないので、このあたりで留めておきますが、言っておきたいことは「iの面白さ」を生むには「驚き」が必要だということです。


次に、「fの面白さ」。

これはお笑いと云うジャンルが確立しているため、ある意味わかりやすい概念です。ただし、プロのお笑い芸人でも、笑いとは何なのかに苦しんでいることから、難しいもので考えてどうにかなるものではないと思っている方もいるかもしれません。しかし、私はその公式ともいえるものを既にある程度作り上げています。この話は始めるとすごく長くなるので、連載3話から数話かけて心理学から始まる笑いの法則とその作り方を解説したいと思います。


最後に「cの面白さ」。

これが今回上げた概念の中で一番飲み込みにくいものでしょう。小説を読んで心地よさを感じるとはどういうことなのか。いくつか例をあげてみたいと思います。


「cの面白さ」として最たる例は、文章です。あなたも文章・文体によって好きな作家や苦手な作家がいるのではないでしょうか。表現一つをとっても魅力的な文章もあれば、描写が美しく想像をかきたてられるような文章も存在します。そしてこれらを読んでいるとき、あなたはある種の心地よさを感じているのではないでしょうか。

別の例としては、キャラクターがあります。キャラクターを好きになるとそのキャラクターの行動一つ一つが愛おしく思えたり、もっと見ていたいと感じると思います。シナリオとしての面白さは同じでも、キャラクターが好きならば読んでいて面白い。これぞ「cの面白さ」と言えます。


このように「cの面白さ」は一瞬に感情として生まれる「fの面白さ」や「iの面白さ」とは異なるので、定量化するのが難しいです。言語化するならば「cの面白さ」は「継続的な面白さ」ということです。


ここまで3つの面白さについてその概観を見てきましたが、この記事での目的は、私とあなたとの間にそれぞれの面白さの定義について共通の理解を持つことです。これらを基礎としてそれぞれの面白さをさらに掘り下げていこうと思いますが、とりあえずある程度の共通認識が持てたのではないでしょうか。わからないことがあればぜひコメントしてください。


今回の記事では「面白さ」を大きく3つに分割しました。第3話では「fの面白さ」についてさらに掘り下げていきたいと思います。ご拝読ありがとうございました。




併せて読んでみてはいかがでしょうか?

3つの面白さの概念について具体的な作品を取り上げて考えます。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893829588/episodes/1177354054893831126

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文学(小説)の理系的観測 望月弥 @amane7

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