文学(小説)の理系的観測 -寄り道-

望月弥

第1話 有名アニメの「面白さ」の分類

皆さんこんにちは。望月弥です。


文学(小説)の理系的観測 -寄り道-編ということで、この連載では本編では書ききれなかったことや、その補足になるようなことをつらつらと書いていきたいと思います。文章のノリも説明主体の本編とは差別化していこうかなと考えています。


では早速いこー!


記念すべき第一回で扱うのは、『有名アニメの「面白さ」』についてです。早速本題に入りたいのですがその前に。本編「文学(小説)の理系的観測」の第二話において、創作における代表的な面白さを3つに細分化し、それぞれに名前を与えました。とりあえず確認の意味も込めてもう一度整理しておきましょう。


興味をそそられて、心が引かれるさま。興味深い。 ←interesting「iの面白さ」

つい笑いたくなるさま。こっけいだ。 ←funny「fの面白さ」

心が晴れ晴れするさま。快く楽しい。 ←comfortable「cの面白さ」


どうでしょう、思い出せたでしょうか。本編の第二話が未読だという方はぜひ一度目を通してから、本稿を読まれた方がいいと思います。


リンク: https://kakuyomu.jp/works/1177354054893793484/episodes/1177354054893817384


確認も済んだところで、いよいよ本題に入っていきます。


まず初めに、人気アニメと言われて皆さんは何のアニメを思い浮かべるでしょうか。ドラえもん、ワンピース、ソードアートオンライン。ジャンルも様々、多種多様な作品が上がると思います。


その中で本記事ではより多くの皆さんに伝わる作品を選ぼうと思い、次の3つの作品を扱うことにしました。「進撃の巨人」「けいおん」「この素晴らしい世界に祝福を」。本当は今大人気の鬼滅の刃なんかを扱えればよかったのですが、私がまだ未視聴なので今回はパスさせてもらおうと思います。すいません(^^♪


選んだ3つの作品は、それぞれ異なる面白さを体現したもので、その人気の理由も大きく異なっていると思います。この記事で分析を行うことで、本編で取り上げた3つの面白さの概念をより深く理解してもらえると嬉しいです。あ、あと基本ネタバレはなしでいきますが、意図せず軽いネタバレを含んでしまっていた場合はすいません。


ではまずは、「進撃の巨人」を見ていきましょう。


この作品を語るうえで外せないのが、いくつもの伏線回収です。「あの時のこれはこういう意味だったのか!」という展開が最新話でも途切れることなく続いています。その伏線の絡まりあいが謎をつくりあげ、次の展開を考察する動画や記事がネット上に散見されたりもしています。


伏線回収は強い「驚き」を与えるという意味で、「iの面白さ」に該当します。本編にて「iの面白さ」は、瞬間的な面白さだと言及しましたが、進撃の巨人ではそれを途切れることなく打ち込むことで、あたかも継続的なものとして作品の魅力となっています。

また、次の展開の考察はネット上にてコミュニティの形成を促進しており、「あの話面白かったね」というような感想大会だけでは終わらない、継続的なグループの形成につながっています。これは、いうなれば「cの面白さ」、同じ展開や平凡なバトルだとしても『進撃の巨人だから見たい』という心地よさを生み出していると言い換えられます。


また、進撃の巨人はキャラクターの面でも人気があります。キャラクター数の多い進撃の巨人ですが、リヴァイ兵長や第104期訓練兵団卒業生の面々、エルヴィン団長など魅力的なキャラが数多くいます。しかし、これは進撃の巨人のキャラクター演出がある法則に則っているから実現できているものです。それは、「主要キャラにはとことん描写する時間を与える、サブキャラには物語上本当に必要な時のみ描写する」です。どうでしょう、あなたは納得がいきますか?


描写された時間が長いキャラほど愛着を感じ、死んでしまったときに悲しいと感じるものです。ネタバレを避けるため具体的には名前を挙げませんが、死んだメインキャラの描写量とサブキャラの描写量を思い浮かべてみてください。特に注目してほしいのはサブキャラの方で、彼らの登場シーンはほとんど物語を進めるための駒としてではないでしょうか。


進撃の巨人はこのあたりの割り切りが非常にはっきりとしています。少年漫画原作の作品としては決して多くない冊数の作品ですが、特定のキャラクター人気は他の長編作品にも劣りません。このあたりに、作者のキャラクター演出の妙があるように感じます。


こうして、進撃の巨人はキャラクター人気を得たことで、常に「cの面白さ」を体現しています。実際、あまり人気でない内政編でもリヴァイ兵長が活躍するから面白さを保てていたのではないでしょうか。あのアークで他のある章のようにリヴァイ兵長が登場しなければ、さらに不人気が加速していたと思われます。


ということで、進撃の巨人について語ってきましたが、少し長くなってしまいました(汗)。戦闘の格好よさや、賢いキャラの発想の豊かさなど他にも言及できていないことは多くあります。そんな状況ですが、総じて言いたいのは進撃の巨人は「iの面白さ」と「cの面白さ」を突き詰めた作品だということです。


ここから、他二つの作品について書いてもいいのですが、そうするとすごく長い記事になってしまいそうなので、次回に続くという形で第二話にて他の作品の分析をしたいと思います。


それでは一旦、では!

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文学(小説)の理系的観測 -寄り道- 望月弥 @amane7

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