第三回こむら川小説大賞
「化け猫おちる」について
『第三回こむら川小説大賞』概要
https://note.com/violetsnake206_/n/n4ecd4fc4c01f
作品ページ
https://kakuyomu.jp/works/1177354055451648831
喜びの声(帆多の)
ジュージさんからファンアートもらったーーーー!!!
ユエだーーーー!!!
美人さんだーーー!!!
おしゃれデザインだーーー!!!
タイトルロゴだーーー!!!
https://twitter.com/GNekogasuki/status/1346502120736915458
【執筆振り返り】
はい。ここから執筆振り返りです。
つらつらと考えたメモ、は、今回3行です。
”テーマ「空」
そら、から、くう
空っぽがみたされる話?”
即座にユエが出てきた。
「なくして」いくのが宿命の人なので、キャラとしては申し分ない。
ちょっと悩んだのが、完全新作ではないこと。
レギュレーションでは禁じられていないけれど、ほら、人物造形や舞台設定を考えないで済む分、いくらかラクをしてるところは否めないから、こう、罪悪感的な。
結論。普通に大変だった。
いまさらだけどユエ、きみ、なんでそんな設定複雑なん?
今回の作品「おちる」はシリーズ第三作ですが、時系列は「ユエ」と「まつり」の間にあります。前後に確定済のエピソードがあるので、両者と繋がりを持たせつつ、単体でもきっちり成立するように書かなければなりません。
ここで今回の課題ふたつ。
・出さなければならない情報はバランスよく散らして開示
・読んだ人が最後に明るい気分になるように仕上げる
では、いってみよう。
「空」を「空っぽ」として解釈しましたので、ユエの根本的な設定「魔女に思い出を喰われる」を早々に出す必要がありました。喰われる条件は「魔女が飢える」および「ユエの生命が危機に瀕する」です。
当初の案は、更地に座り込んだユエが、右目の相棒に顛末を聞くところから始めようとしてました。ただ、実際に場面を書いてみるとどうにも、動きが、ない。
だもんで、逃亡してもらいました。逃げながら基本設定を開示していきます。
なぜ逃げているのか、この時点で決まっていません。ノープランです。ノープランですが、「ユエには、会いたい人がいた」ことになりました。
あいつあいつ。第一作のラストシーンでユエが鼻っ柱をぶつけたあいつ、あいつを使おう。なんかこう、呑気で平和なやつがいい。意味もなく歌っちゃうようなレベルの。
しがない行商人で、お人好しで、唄が好きなクォン
オッケーそういうことでよろしく。
追われる側のユエですが、
・蛇ノ目の呪符: 位置把握&空間移動阻害(見られていると発動しない)
・罠と人数: 持久戦で疲弊させる(猫なので持久力に欠ける)
・
・密林の結界: 魔法を阻害&魔女の食事の阻害
用意周到だなおい。こんな組織力、町の
ですので見ず知らずの王太子が死にます。ごめんね。
周到な準備のおかげで魔女の飢えと魔女の出現を続けて出すことができました。魔女のシーンは書いてて楽しいです。自由だからあの子。お漬物つくる感覚で人をモノの怪に変えます。
わたし、クリームシチュー大好き! みたいなノリで言わせます。
「わたし、情念に満ちたモノの怪がとても好きなの!」
かわいらしいですね。
作中で「藍色の左目」と書いたんですが、第一作を見返したら「琥珀の左目」となってました。おもくそ間違ってましたんで、第一作の方を変えました。力技。
いいの。琥珀と稲穂はユエの色。魔女のパーソナルカラーは藍色なの。
さあ、魔女が出てきたからには、ユエは何かを失わなければなりません。
喪失の要因が二つとも出てきているので、前作で失った「手鏡」よりも大きくないと、ちょっと整合性がとれない。では、クォンとの幸せな日々は忘れてもらいましょう。さようなら今までの三年間。
王太子暗殺と、忘れてしまった同棲生活。
この二つを軸に話を練っていきます。
クォンがモノの怪に変えられる展開も考えた(呪術廻戦みた)のですが、救いがありませんし、そんな強力な呪術を使う
それにこの百年後には「化け猫まつり」が控えています。この作品上で起こったことが、百年後にも意味を持っていてほしいな、と思いました。
だからユエには取り戻してもらうことにしました。
いちばん強くそう願っているのは右目のリールーでしょうから、彼に語ってもらいます。
また、クォンが何をしてくれたかという記憶や、その時の気持ちはなくしてしまっても、暮らした家のそこかしこに、ユエ自身の気持ちは残っているはずだと思いました。
必要なのは後ひとつ、クォンという人が確かにいたとユエに実感してもらうだけです。そしたら、帳簿が落ちてました。ツイッターがない時代ですので、あふれる気持ちはこういう所にふと現れるのです。
クォンについて描写するチャンスはここだけなので、彼がいい人だということを認めてもらうべく気合を入れました。「笠が降ってきた」で第一作とほんのり繋げ「人でもモノの怪でも、どちらでもいい」で百年後につなぎます。
それはそうと、徴税の役人はどんな顔して帳簿を見たんでしょうね(無責任)。
つづいてガサ入れ。
リールーが怒りました。そりゃそうだよな、と思いながら書き進めます。私も大概未熟なんですが、部屋を荒らすまでリールーが怒ると思っていませんでした。ユエに怒らせる気でいました。
リールーも一緒に三年暮らしたんだもんな。その家をひっくり返されたら悔しいよな。
号令役には「やや!」とクォンの行方をわざとらしく語ってもらって、その後きれいに蹴られていただきました。ひとりひとり丁寧に叩きのめそうかと思ったのですが、一方的な戦いにしかならないので割愛。
役人の一人に「ばっ、化け猫ユエ!」と叫ばせたら、思いのほか気持ちよかったです。驚いてくれるモブの存在って大事だなぁ。
そして、駆け足気味に大詰めへと進みます。
全体的に駆け足ぎみだったかな、という気もするので、順次加筆修正していくつもり。
落下の場面が気に入ってます。別作品でも落下を書きましたが、落下からの復帰にエモを感じる。
この時点でまだ、ラストシーンを迷ってました。2択です。
脱出後の様子を描くか、クォンの墓前を描くか。
ラストに迷いを抱える帆多をほっといて、ユエがクォンを抱えて跳びます。
二度と落ちてくることはなかった、と置いた直後に、だれか唄ってました。
あ、これは脱出後、別の国の様子だなと。
なんか親し気に話してます。
三つぐらい会話文を続けて、ここは地の文ナシと決めました。親し気に、のどかな話をしている。この事実以外は要らぬ。
当初の締めの流れは
「あ、そうだユエさん」
「なに?」
「大好きですよ」
でした。
また、結びの言葉は
「……わたしも」
でした。
イメージは『船を編む』の宮崎あおいでしたが、ボツに。
「この三十年があってよかった」は、やっぱりどこかで示さなければならない。
そして推敲中に閃きます。
墓前のシーンを、冒頭にもってくればいいんじゃないか!?
そうしてできたのがn話です。
8話のあとの26年間でたくさんのエピソードがあった、というつもりで「n話」です。「n+8話」が意味的に正しいんでしょうけど、数学感が出すぎちゃって却下。
冒頭n話の発生により、「大好きですよ」は「愛してますよ」に変わり、「……わたしも」が「……もう」に変わりました。
「わたしも」要素はn話のタイトル「わたしもね」に引き継ぎます。
「わたしもね。生きている間に、この三十年があって良かった」
「愛してるよ」
……ヨシ!
(ヨシっつったクセに公開後に走る微調整の数々)
【術】
・蛇ノ目の呪符
このアイデアは”xxxHOLiC”からの借用。あちらでは「すでに(傘の内側を)覗いている者がいるから、他の者が覗くことはできない」という意味付けですが、こちらはどストレートに「お前を見ているぞ」。
・鷹ノ目の呪符
なんで鷹の目なんでしょうね(雑)。
ユエの自宅に仕掛けが無いはずないので。身を隠す系の術でなにかひとつ。「消える」だとなんだか安直なので「無視される」にしました。透明マントよりも石ころ帽子の方が呪術的です。
「無視される」のはなぜ? → 見えないから? → いや、もう見たからだ。
じゃあ、何かの目の呪符にしよう。蛇ノ目の呪符も出したし、なんの目にしようか? → 鵜の目鷹の目? → 語呂がいいから鷹の目にするか。という発想でした。
ラストシーンでもいい感じに働いてくれた。
・猫はいつの間にかいなくなる / どこにでも現れる
猫の魔法シリーズを考えていた時にひらめいた、適度に不便でお気にいりの魔法です。前二作では匂わせるだけで出せなかったので、ようやくお披露目できました。
(亡霊に阻害された魔法。および、少年の背後に回った魔法です)
なお、平笠で行き先を決めている間は徒歩です。あの笠は方角は示せても距離を示せません。
猫の魔法で今までに出したのは、猫纏い、猫の爪は鋭い(引き裂く指)、猫はすり抜ける、猫はよく跳ぶ、猫はよく伸びる。これ以外に「猫のぶるぶる」「猫は倍々に膨れる」「
【モノの怪】
・
ベトナムの妖怪、コ・ホンから。漢字は当て字です。名前と概略以外の部分は不明。なお、ネットでは現地における実際の用例や逸話が見つけられていませんので、正確さは保証できません。
・
第一作の「黒犬」に現地語の発音をつけたもの。(犬 地獄 でGoogle翻訳にかけた)
子盗小鬼からの護り犬となるはずが、背を下に埋められたために地獄に落とされた犬の
【セリフ】
・「事実上そうなるか」
ここの表現は迷いました。当初「昼も夜も営んでおった」とリールーに言わせましたが、遠まわしが逆に下品と感じて却下。
そして、裏設定として暖めていた「ユエと交わった男性は死ぬ」をここで捨てます。
直截に書きますが、魔女は子宮にいるので、そこを直に叩かれたら「なんじゃワレやる気か?」とばかりに攻撃が始まると思ってました。
そこまでしなくていい。魔女さんちょっと我慢して。
・「ユエさん」
クォンの呼びかけは、すんなり出てきた。出てきた後で、なんかいいな、と思った。クォンだけ年をとって父娘みたいに見られてても「ユエさん」って呼んだと思います。
・「右目殿もそう思うってよ?」
帆多のノリと勢いで設定された事実婚生活ですが、クォンは既にユエの特殊性を受け入れているはずだ、という確信がありました。
「右目殿」というのは「月」と同様、クォンが帳簿にこっそり書くときに用いた呼称です。ユエは秘密の日記を読んでしまった事になりますが、8話の時点でその事をクォンも知っており、かつ、もう大した事ではなくなっていると示すためにユエに言わせたセリフです。
普段のユエはリールーを名前で呼びますので、これはユエ、クォン、リールーの三者が揃わないと発生しない表現です。よって、墓前での呼びかけも「右目殿」となりました。
第一作のユエはリールーの存在をあまりオープンにしていませんが、第二作(百年後)では逆に隠そうとしません。それは、やっぱりクォンとの生活で変わった事なんだろうなと思います。
なんか、すごい上手く繋がってくれた。
・「この三十年があってよかった」
上橋先生の「獣の奏者」から拝借したセリフでもあります(「生まれて、死ぬまでのあいだに」「この十年があって、よかった」)。
私が同作のなかで一番好きな台詞です。
具体的な描写はしませんでしたが、ユエとクォンの暮らしぶりのイメージは「獣の奏者」からかなり拝借しました。外伝のお祭りのシーンすごくいいんですよ。草の葉でおまじないをかける所がすごい良い。
あと、これは確定してない可能性なんですが、8話以降の時間の中で、魔女が出てきたり、ユエの魂を齧ったりしたこともあったんじゃないかと思ってます(すでに三十年の最初の三年を一度なくしてる)。
何がなくなるのかはランダムですが、クォンもリールーと共になくした物を補い続けたことでしょう。
ここまで書いて「50回目のファースト・キス」って映画を思い出しました。
【反省】
8話からn話に戻ってもらえない可能性を考えてなかった。楽観的にも程がある。
n話単体だと
以上、振り返りの自作語りでした。
お付き合いいただきありがとうございました。
「化け猫ユエ」「化け猫まつり」も併せてお楽しみいただけると幸いです。
ユエ
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896395656
まつり
https://kakuyomu.jp/works/1177354054905399762
あとがきの分量が本文の半分あるってなんなの。
2021.01.27
講評いただきました。
大賞のいぬきつねこさん始め、受賞された方々おめでとうございます!
主催のこむらさきさん、および謎の評議員の方々、たいへんお疲れさまでした。ありがとうございました!
https://note.com/violetsnake206_/n/n62efca918534
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