いつかまた僕の隣に

チタン

第1話

 分かってたんだ。君が僕に呆れているのは。

 僕は君と離れたくなかったけど、何かを変えようとするわけでもなくって、居心地の良いぬるま湯に肩まで浸かって。


 「夢のため」って就職もせずに、中途半端な日々。

 「夢」を言い訳に使うようになったのはいつからだったろう。


 だから君が離れていったのも当然なんだ。

 僕も予感はしていたけど、それでも君は一緒にいてくれるって高を括って。


 そうなってから初めて気づいたんだ。僕が君にどれだけ支えられていたのか、どれだけ君が大切なのかを。


 それ以来、君がどうすれば戻ってきてくれるかって、そればかり考えていた。

 そのために僕は変わろうとしてるんだ。君にもう呆れられないようにね。

 けど、それだけじゃ君は僕の隣に戻ってきてはくれないだろうな。


 だから夢を叶えたら、その時こそ君を迎えに行こう。

 きっと君は僕を待ってはいないけど、それでも。

 夢を叶えて、自分に胸を張れる僕になっていられれば。


 その時には君はもうこの街にはいないかもしれない。

 君が遠くに居たって気づいてくれるよう有名になるよ。なおさら頑張らなくっちゃね。


 今さら会いに行っても迷惑がられるかもしれない。

 だったら、それでもまた好きになってもらえる男にならないと。


 そんな風になれたら、君はまた僕の隣に戻ってきてくれるだろうか?


 ……いや、きっと無理だろうな。

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いつかまた僕の隣に チタン @buntaito

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