自作「マリア」の話
アリクイ
なんかこういうの恥ずかしいですね
【はじめに】
少し前に「マリア」という短編小説を投稿した。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893605154
この作品は私のフォロワーであるこむらさき氏の主催する企画「第一回こむら川小説大賞」に参加するために執筆したものであるが、完成に至るまでのアレコレを参考までに残しておこうと思う。(こむら川小説大賞については以下を参照のこと)
https://note.com/violetsnake206_/n/n833164509fff
【きっかけ】
この作品はこむら川小説大賞に投稿した二本目の作品で、実はその前にもう一本「POOPEES」という作品を投稿していた。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893286731
こちらについて多くは語らないが、今回の大賞、あるいはそれ以前に開かれていた自主企画でよく用いられた「KUSO創作甲子園」というフレーズ。これを文字通りの意味で表現したらどうなるのか?というノリで書き上げた作品だ。
タイトルや台詞にROOKIESのパロディを仕込んでみたりと一応面白くする努力はしてみたものの、リアルうんこを小説に出す行為自体は過去の大賞でも行われている上、今回はより地力のある方も(内容は全然違うものの)リアルうんこを書いていた為、あまり爪痕を残せていないなという感覚があった。
そこで、残ったもう一作分の枠を使って前回の大賞に出したような恋愛要素のあるものを出そう、と思い立ったのが始まりであった。
【ネタ出し・プロット作成】
恋愛ものを書く。では、具体的にどのような作品なら書けそうか?また、面白くなるだろうか?ここが大きな壁であった。
なんせ私には恋愛小説に関する知識やノウハウが殆どない。のだめカンタービレやホタルノヒカリ、ヤマトナデシコ七変化などコミック原作のラブコメ系ドラマは一時期かなり見ていたが、小説、それも一万文字に収まるサイズのものとなると、インプット量はゼロに等しい。
結局、自身の経験をベースに軽く盛れば物語として成立するだろうと考え、以下のようなものを書こうと計画した。
【アイデアその1】
主人公がいつものように上司の目を盗んでネットサーフィンに勤しんでいたところ、偶然とある記事を発見する。それは、かつて想いを寄せ合い、しかし結ばれることは無かった女性の結婚を報じるものであった。自分の知らぬ内に彼女が世間の話題になる程の有名人になっていた事への驚き、そして叶わなかった恋への未だに消えない未練を抱えながら、主人公は彼女に関する様々なページにアクセスしていく。疎遠になって以降の足跡をひとつひとつ辿るかのように……
【ゾンビ投入】
上記のアイデアでは、着実にライフイベントをこなしていくヒロイン(?)と未練に捕らわれた主人公を並べることで『男は名前をつけて保存、女は上書き保存』というよく言われる傾向を表現するつもりであったが、最終的にこの案はボツになった。理由としては
・規定の文字数の中で過去の回想などを幾つも織り込もうとすると窮屈になってしまうと思った
・物語として起伏をつけるのが難しく、淡々とした話になってしまいそうだった
・いい具合の着地点が思い付かなかった
といった感じである。
ここから『終わってしまった恋に対する未練、執着』といった要素を残したまま新たな筋書きを用意しようと考えた際、頭にあるワンシーンが浮かんだ。映画版バイオハザード2で、神父がゾンビとなった妹を拘束、飼育していた場面である。
「死とそれに伴う自我の消失」という不可逆な現象の中でも特に強力なものを物語に投入し、それでもなお抗う主人公を描くことでよりテーマを強調することができるのではないか。そのような考えにより、物語の筋書きにゾンビ(本編では屍鬼病という形で表現した)が投げ込まれることになった。
そして出来上がったのが次のようなものである。
【アイデアその2】
人を死に至らしめアンデットに変える屍鬼病が蔓延し荒廃してしまった世界の中で、主人公はアンデッドと化したかつての想い人と再会する。身柄を拘束し、彼女と家庭を築くといういつか夢見た光景の真似事をしながら暮らすようになる。しかし主人公も既に病に侵されており、自我の消失まで残された時間は徐々に減少していく。限界を悟った主人公は家を燃やし、彼女と共に自身を火葬したのであった。
……ゾンビを投入することで舞台設定も変わり、投稿したものとかなり近い内容になっている。また最終的にボツにしたものの、主人公も病に侵されているという設定を生やすことで物語を終わらせるためのトリガーを作るなどしていた。
【最終形態へ】
先程の内容でおおよその流れは固まっていたのだが、本文を書き始める前になってさらに変更を加えることとなった。どうしても性描写を挟みたくなってしまったのである。
主な理由としては、拘束した成れの果てとままごとをするよりも直接的な行為を描いた方が主人公の歪んだ執着心を正確に表現できそうであったのと、荒廃により恐らく秩序も失われているであろう世界でそのような場面に出くわしたら、少なくとも私は行為に及ぶだろうなと思ったからである(というのは建前で、本当は私がそういう性癖を持っているからかもしれない)(そんなことはない)。
それに合わせて物語の結末も変更した。前のバージョンでは主人公が死んでいるものの、それは自ら納得して選んだ結末であり、またアンデッドと化した女性との奇妙な暮らしは彼にとってポジティブなものとして描く予定であった。そういう意味では比較的ハッピーな終わり方であると言えなくもない。
それに対して変更後のエンディングは悲惨なものである。彼が真に望んでいたはずのものは既に失われ、二度と手に入ることはないという事実を突きつけられる。これにより大きく上げて落とす流れを作ると同時に、物語の根幹であるテーマへの答えを提示しようと試みたのである。
【性描写の難しさ】
大まかな流れが決まってから完成まではそこまで長い時間を必要としなかったが、性的な描写については少しばかり苦労した。今回はどちらかというとシリアスで重い話であった為、直接的な表現をしてしまうと雰囲気を損なう恐れがあった。また、カクヨムの規約的にあまり露骨な描写をすると不味いので、慎重にならざるを得なかった。使用する単語などを吟味しながらなんとか書き上げたが、この辺りは今後の課題である(もっとも今後の作品にセンシティブな要素を入れるかどうかも現時点では不明だが)。
【完成】
そんなこんなで無事に作品を完成させた私は二作目の作品を投稿し、新たな人権を得ましたとさ……というだけでは味気ないので、最後に作品のキャッチコピーに関する裏話を書いて終わりにしようと思う。
作品のキャッチコピーである『なんてことはない、ただのありふれた後日談』というフレーズは、永い後日談のネクロニカというTRPGの名称から引っ張ってきたものである(http://www.nechronica.com/)。このTRPGは人類滅亡後、つまり後日談の世界を舞台としており、プレイヤー達の演じるキャラクターはアンデッドである。執筆時にはあまり意識していなかったが、本編の内容にも少なからず影響を与えていそうである。
自作「マリア」の話 アリクイ @black_arikui
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