その涙さえ命の色

八重垣ケイシ

その涙さえ命の色◇コメディ


「あー、まいった」

「オマエ、何、頭かかえてんだよ?」

「このお題でなんか書けって、先輩がさー」

「お前、文芸部だっけ? なになに?『その涙さえ命の色』? ずいぶんとポエミイだな」

「俺にポエム書けってのかよ、あの先輩なに言ってんの?」

「可愛がられてんじゃね?」

「だいたい涙に色がついてたらこえーだろ。宇宙人か? しかも命の色ってなんだ?」

「オマエ、本当に文芸部かよ」

「俺はドキュメントが好きなんだよ」

「入る部活間違えてんぞ」

「あぁ、ダメだ、ぜんぜん浮かばね」

「お題のタイトルからお話、ねえ」

「お、なんか、アイディアあるのか?」

「ストーリーにならない、くだらない戯言ならなんぼでも」

「くれ、ネタくれ」

「そのタイトルだと、涙から命の色が感じられたらいいんだろ?」

「だから、どうしたら命の色が見えるんだよ。特殊な検査機器か? サーモグラフィーか?」

「温度を見てどうする。具体的な色でなくてもいいだろうに。えーと、うん、無人島だな」

「無人島?」

「そう、無人島に漂着するんだ。そこで水も無い、食べ物も無い。さあどうする?」

「探すよ。魚でも取るとか、最悪、蜂の子とか」

「そうして食べ物を探していると、なんと、ひとつだけ無事に流れ着いた食べ物を発見するんだ」

「お、何か盛り上がりそうな。その食べ物を奪いあったりするのか?」

「ケンカすんなよ。そこは協力しよう。平和的に助け会おう。さて、流れ着いた食べ物とは、なんとカップラーメンだったのだ」

「なんでカップラーメン?」

「しかし、残念なことにお湯が無い、火も起こせない」

「お湯無しカップラーメンをパリパリ食べるのか? 泣けてくるな」

「泣けてくるだろう? その涙でカップラーメンを作るのさ」

「はあ?」

「涙で作ったカップラーメンを食べて生き残る。ほら、命が感じられるだろう?」

「くだらねえ!」

「だから、最初にくだらない戯言って言ってるじゃないか。さて、命の色は、シーフードかな? カレーかな?」

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その涙さえ命の色 八重垣ケイシ @NOMAR

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