エピローグ

 迷宮核が破壊されたことは、すぐに伝わった。

 街に住民が戻ると、即座にお祭り騒ぎは始まる。


 迷宮核が破壊されても、魔力に侵された土地は元に戻らない。

 それどころか、時間を置けば再び迷宮の核は異世界から送り込まれるそうだ。とは言っても、それは数十年後だそうだ。暫くは、比較的危険の少ない『迷宮』となるそうだ。


 今まで通り、冒険者たちがその特殊な環境を生活の糧にするだろう。

 そう、この街の景色は、まだ続いていく。


「よお、お疲れさん」

 宴もひと段落着いた頃、ようやく俺はユーサーと話が出来た。

 英雄と言うことで常に引っ張りだこだったし、なによりテレサが居たから話しかけられなかった。

「君もね」

 黙ってグラスを傾けあう。

「次はどうするんだ?」

 なんとなく、聞いていた。

「西へ行く。樹海が異界化しているそうだ」

「そうか」

 勇者は、まだ戦うのだろう。

「ニック、君は来てくれるんだろう?」

「それはまず、テレサに言ってやれよ」

「そうかもね」

 まったく、といいつつ二人して笑う。

「いいぜ、勇者の後始末が、俺の仕事だ」

 また、命をかける日々は続くのだろう。

 それが、少しでも軽くなりますように。


 あの聖剣と同じ輝きを放つ月に、願った。


◆◆◆


 勇者がなんだって?

 知ってるよ。

 死んでも戦うことを選べる、余りにも純粋で――放っておけない戦士のことだよ。


◆◆◆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

勇者の後始末 狼二世 @ookaminisei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ