第2話  襲撃

 ブンメイシとやらになってはや五日が経った。

特に何も起こらず、意識せずとも握ったグラスやゲーム機のコントローラーがぐちゃぐちゃになる。こともない。

五日前、無意識に力を発動させることのできた波和には力のコントロールにも慣れていた。変わったことといえば自分の額に黒い点が打たれたということだけだ。

Fも一向に連絡すらよこさない。何をすればいいのかわからないまま時間だけが過ぎてゆく。

 ピンポーン

誰か来たようだ。

何の警戒もなく扉を開けると黒いスーツの男がいた。額には、黒い点。

男の形相は悲しそうで、怒り狂っているようにも見える。

"こいつ…‼俺を殺る気だ‼"

とっさにそう思った。

その途端、体を引く前に目の前の男の腕がみるみる膨張し、

家のドアを吹き飛ばした。

「てめぇなにしてくれんだ!!」

そういうと男は冷淡につぶやいた。

「…力をよこせ」

『力の譲渡を狙った分命使にも気を付けることだ…』

あいつが言ってたのがこれか!?

なぜおれが力を受け継いだことを知っている!?

この襲い方…俺の経験が浅いことも承知だ…!!

どこからか…情報が洩れているのか!?

その刹那、男の左腕から放たれた大きな打撃に吐きそうになった。

「…さぁ、お前じゃ俺には勝てない。よこせ」

勝つ道は一つしか残されていない。俺にできるか?

できる。

イタチのしっぽ切りはもう終わりだ。

殺さなければ殺される。

「あーもぉ、わかったよ。死ぬのはごめんだしな、はいよ」

男は額を突き出した。

"波紋"

5、男は動じない。

4、違和感に気づいたか。

3、男の顔が激痛にゆがむ。

2、男が俺の腕をつかみ、彼の腕を膨張させる。

1、手を放されても波紋の効果は継続するようだ。

0、やがて男は口から血を吐いてそこに倒れた。

男の屍の額から点が消えた。

『分命使を殺すことでも力の譲渡は行われるよ』

まさか、俺に力が移ったのか…!

"膨張"

波和の腕が膨張し、壁に穴をあけた。

「くっそ、なんでだよ」

彼はその月に家を追い出されることになった。


「ハハッ…人を殺しても動じない…!器にぴったりだ!!」

Fはそういうとまた彼方へ消えた。

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異能戦争 高望み男 @takaminokenbutu

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