特別編 ウイルスパニック!
ついに、アメリカ合衆国にコロナウイルスが上陸した。人々は、スーパーマーケットやアマゾンでティッシュペーパーとトイレットペーパーを買い漁り、マスクを求めて数軒のドラッグストアをはしごする毎日を送っている。
スミス・ガンストアも例外ではない。
恐怖にかられたアジア系の住民が鉄砲店の扉を叩いている。彼らは恐怖による暴力から身を守るために銃を欲しているのだ。
私は朝から憂鬱な気分に包まれていた。
お客さんの数は通常の3倍、要領良く裁いていかないと仕事は増えるばかりだ。
それに同じ事を何回も聞かれるつらさがある。入荷未定の商品がいつ配送されるのかは神のみ知ることだ。つまり、人間には知る余地がないことなのに。
近くの中華料理店の店長がショットガンと拳銃を受け取りに来た。3日ぶりの来店だ。私は注文品のモスバーク・M590 Shockwaveとグロック17の4世代型を引き渡す。
「インフルエンザに続いて新型ウイルスだ。商売上がったりだよ」
「ですね」
30歳の白人が9ミリ パラベウムの箱を手に持っている。男性はアメリカンイーグルを2箱、SIGのFMJ弾を1箱購入した。代金は28ドル+13ドルで31ドルだ。
次のお客は眼鏡をかけた中国系のアメリカ人。レミントン・M870 Expressを手に持っている。私は彼に申請書を渡さないといけない。
「12ゲージのバードスラッグをくれ。1箱でいい」
「ウィンチェスターのスーパーターゲットは8.6ドルです」
お客がショットガンの申請書を書いている間に私は背後の棚から白いデザインの箱を取りだした。鳥撃ち&クレー射撃用のスラッグ弾を引き渡す。
次のお客はレイ・チャールズ氏。久しぶりのご来店、なじみの顔なじみを見ると安心する。
「今日はホームディフェンス用? 」
「そうだよ。00バックを3箱頼む」
私は背後の棚からホーナディのクリティカルデフェンスを取り出した。ダンボールと同じ色の箱にバックショット弾が10発入っている。
「合計46ドルです」
「ありがとう。今日も良い1日を」
「困ったことがあれはいつでもどうぞ」
次にカウンターに来たお客は中国系の女性だった。女性は安くて撃ちやすいライフルが欲しいと言っている。私はスタームルガー・AR-556 standardを女性に渡した。
「AR-15は子供と女性にピッタリですよ。674ドルです。弾丸も買いますか? 」
「買います」
私は背後の棚から弾丸が20発入った箱を取り出した。ウィンチェスター製のヤツだ。
「鉛製の弾丸でよろしいでしょうか? 1箱9ドルです」
「ええ。じゃあ、それを2箱もらうわ」
「では、ライフルの引き取りは3日後にお願いします」
「わかりました。3日後に来ます」
黒人の老人が銃を引き取りに来た。白髪と白髭が特徴の老人が注文した品はブッシュマスター・XM-15。アメリカで最も人気があるAR-15だ。
「こちらがご注文のブラックライフルです」
「助かるよ。ありがとう」
韓国系のお客は珍しい。私はメガネの男性が3日前に注文したグロック21とグロック45を引き渡した。
「グロックは家族に持たせようと思って。物騒な世の中だからね」
「ありがとうございました。またどうぞ」
黒い長袖の上着に青いジーパンを着た黒人の若い男性が来た。
「CZのS1カービンモデルを注文していたんだが」
私は背後の棚から売約済みスタンプを押した9ミリカービンを取り出した。黒人は長財布からドル札を取り出している。
「スコーピオン エボ3は1084ドルです」
「あんがとな。助かった」
次のお客は若い東洋人夫婦。その男は自宅での護身用に扱いやすい銃が欲しいと言っている。
「9ミリカービンをくれ」
「でしたら、反動が少なくて安いルガー PC9がオススメです。マグプルのM-LOKハンドガードがついて624ドル。警察も採用した信頼性のある銃ですよ。もし、自宅にグロックのマガジンがあれば使えますよ」
「これ買うわ」
こうして、私は在庫が尽きる日まで店に立った。あっという間に時は過ぎていった。ついにロックダウンの日を迎えた。私は困難に負けない。
シカゴの一角で銃を売る人々【完結】 阿野ミナト @RAM06
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