第5話 戦う女
ガンショーの翌日、スミス ガンストアに白髪頭の老人が来店した。私は老人が拳銃を購入することを願いながら、カウンターに向かう。
「カーアームズ P380の引き取りですね」
「3日経過したからな」
私はハードケースの中に入ったP380とマガジンを老人に見せた。老人は満足そうな表情で拳銃をじっと見つめている。
物騒なシカゴでは警察はあてにできない。
シカゴの市民は拳銃を買って自己防衛する。拳銃を持ち歩ければ老人も安心だろう。
「お客様は拳銃を持ち歩きたいと思いませんか? 」
「できるならそうしたい」
「150ドル払えばコンシールドキャリーの申請ができますよ」
「うーん、考えておこう」
店に20代ぐらいの女性が入ってきた。茶色のコートを着こなした栗毛の女性だ。
「いらっしゃい。お探しの商品はありますか? 」
「シカゴ警察のマイク刑事に紹介されて。できるだけ反動が少ないヤツが良いと思うのだけど」
私は9mmのウィットネスエリート マッチをカウンターから取り出した。ステンレスは高級感があって見映えが良いと思う。
「でしたら、ウイットネスエリートはいかがでしょうか? ほとんど反動がありませんよ」
「デザインはCZ75に似てますね。装填数はマガジンに17発、チャンバーに1発。普通はチャンバーには入れませんが、警察の方は入れますね」
女性はサラと名乗った。サラはトリガーのキレが良いとウィットネスを絶賛し、素早くトリガーを引けそうと呟いた。
「じゃあ、これにするわ」
「では、登録用紙に記入を」
中折れ帽子を被り、黒いスーツを着た男が店に現れた。その風貌はまるでマフィアだ。口には葉巻をくわえている。私はアル・カポネがシカゴを支配していた暗黒時代を頭に思い浮かべた。
「ポンプアクション 12ゲージショットガン」
「レミントンM870とモスバーグM500があります」
「レミントンだ。00パックを1箱」
「壁を破壊できますよ。何に使うんです」
「護身用だ。000パックは2箱くれ」
私は対物用の00パックと対人用の000パックを棚から取り出した。
ショットガン用の弾丸は、お客が手に取れない場所に置いてある。ターミネーターのアラモ鉄砲店を反面教師に。誰だって死にたくないでしょう。
店に黒人の若い男性が来店した。上は黒のシャツで、下はベージュの長ズボン。男は強烈な銃が欲しいと言っている。
「とにかく拳銃をくれ。アメリカ製の安いやつがいい」
「うちはハイポイントやSCCYを扱っていないんです。予算はどの程度ですか?」
「うーん。300ドルかな」
「でしたら、315ドルのルガーLCP380がオススメですね」
「姉ちゃん。できれば9ミリで頼む」
私はスミス&ウェッソンのSD9 VEをカウンターに出した。見た目はグロック19風、銀色と黒のツートンカラーが特徴の9ミリ拳銃。
「威力は充分ですよ」
「アメリカ製はいいね。グレート メイド イン アメリカだよ」
午後6時に店の営業を終えようとした時、店に2人組の覆面を被った男が入ってきた。男は拳銃を突きつけて言う。
「いいから金を出せ。金を出さないと撃つぞ! 」
男はタウロス G2Cの銃口を私に向けている。200ドル~250ドルで購入が可能な格安拳銃だ。男はトリガーに手をかけている。本気だ。
まさか、強盗が鉄砲店に入ってくるとは考えもしなかった。私はバカで無鉄砲な強盗に制裁を加えてやろうと決意する。
私はホルスターからSIG P226 X-FIVEをさっと抜いた。もう一人の強盗が立つ入口のドアに2発~3発弾丸を撃ち込む。これは警告に過ぎない。立ち去ってくれ。
強盗が放った弾丸はカウンターのガラスに直撃。私は負けじと147グレインの9ミリ ホローポイント弾を放った。
拳銃を突きつけてきた強盗が右腕を押さえている。弾が当ったのだろうか?
強盗は店のドアから外に逃げ出した。2人組は安っぽいガソリン車に飛び乗ると、勢いよく車を発進させて走り去った。
私は今後、店が狙われないように神に祈った。強盗の来店は丁重にお断り願おう。今後は正当防衛の名のもとに反撃する。容赦はしない。私の戦いはこれからも続く。
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