第4話 ガンショーに出張する女

 今日は待ちに待ったガンショーの日だ。

 私はいつもより早起きして、朝ごはんの準備を始めた。

 朝食は牛乳をかけたシリアル。朝食の後に、ハードケースに入れた拳銃をダンボールに詰め、木箱にライフルを入れる。


 商品は台車に載せて駐車場まで運ぶ。スバル・フォレスターに荷物を載せて準備完了。

 車でガンショーが開催される会場に向かう。2.5リッターの水平対向エンジンはストレスを感じさせない。それに、ハンドリングも良い。


 ガンショーの会場は大会議場を借りたやつだ。早速、私は会場の長机に拳銃を並べた。

 この10年、拳銃を持ち歩くコンシールドキャリーが流行している。最近は、380.ACP弾を使用する拳銃が人気を集めていて、売り上げにも大きく貢献している。


 会場は熱気でムンムン、老若男女がガンショーに押し寄せている。あるお客は「入場料に10ドルを支払ったから損したくない」と言っている。わかるわ、その気持ち。


 私はワルサー PPQ M2を手に取った客に声をかけた。

「ワルサーはグロックよりも品質が良いですよ。 やっぱり、拳銃はドイツ製に限りますね。トリガーのキレも良いですし、オススメの品ですよ」

「最近のワルサーは目立たないな。PPKばかりが話題になる」



 コヨーテカラーのSIG P320とグロック19Xは人々の注目を集めていた。

 私はグロックを手に取ったお客に「グロックはホルスターから抜きやすいよ。価格が安いから絶対にお買い得」と話しかける。

 P320を手に持ったお客には「アメリカ軍のサービスピストルだよ。軍も認める信頼性! 」と魅力をアピールした。


 私は防弾チョッキを触るお客に商品を売り込む。笑えないジョークを交えながら、なごやかな雰囲気になるように意識する。

「これはシルクみたいに軽いよ。昔の防弾チョッキはシルクだったけど」

 お客は一言だけ「らしいね」と言った。


 20代前半ぐらいの青年が「強烈な威力の拳銃はないか」と聞いてきた。私はちょうど、入荷したばかりの新製品があると答えた。

「FN 57はないけど、ルガー57は入荷してるわ。価格も800ドル」

「安いね。取り敢えずキープしといて」

「わかった。キープしとくわ」


 老年の男の視線がS&W M36-9を向いている。男は私にリボルバーを見せろと言ってきた。

「スミスのスナブノーズを見せてくれ」

「スミス&ウェッソン・M36の3インチです」


 男はM36を触り、シリンダーを何回も回している。男はリボルバーを机に戻して、こだわりを突き付けてきた。

「ニッケルは目立つから黒にしてくれ」

「黒ですか? 探せばあると思います」

「グリップはラウンドバットだ」


 私はこだわりが多いお客だなと思いながら、ダンボールに手を突っ込んだ。丸みを帯びたグリップ形状のM36を取り出す。

「こちらでよろしいでしょうか」

「それでいい。38スペシャルも2箱」


  私はドルと引き換えに、Mag tech社の50発入りの箱を男に渡した。弾は重たい。私は2重にしたビニール袋を手渡した。


 チャラそうな黒人の若者が「1911が欲しい」と言ってきた。私はキンバー・カスタムⅡを勧める。

「キンバーは品質が良くて安いから。価格は約700ドル。よく当たるよ」

「かっけぇな。これ」


 親子連れがブースにやって来た。大人は40代ぐらい、子供は10代前半に見える。

「息子にグロックを持たせたい。オススメは? 」

「初心者ならば、22口径のグロック41がおすすめです」

「そうか。では、コンシールドキャリーに使えるグロックはあるか? 」

「最低でも10発は欲しいですね。となると、グロック26とグロック43xがありますよ。どちらも9ミリ、威力は保証します」


 私はシルバースライドのグロック43xとグロック26を取り出した。

「シルバーがいいな。見せてくれ」

「グロックは最高ですよ。撃ちやすくて扱いやすい」

「いいな。これ買うわ」


 ガンショーの売り上げ成績は最高の結果に終わった。やっぱり、人が集まる場所は拳銃がよく売れる。売り上げも絶好調、この調子で明日も頑張ろう。

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