ドーナッツの穴
雨世界
1 くすくすっと白い幽霊の女の子は楽しそうに笑った。
ドーナッツの穴
プロローグ
愛することを知っていますか?
本編
噂の幽霊探し
くすくすっと白い幽霊の女の子は楽しそうに笑った。
問題 その一
『ドーナッツの穴は、この世界に存在するのか? あるいは、しないのか? その理由も書いてこの問いに答えなさい』
……えっと。……わかんない。
テスト(試験)中。
清は、真っ白なテスト用紙を前にして途方に暮れていた。
なんとか少しでも良い点数をとろうと思って頑張ったのだけど、すぐに、きーんこーんかーんこーん。と言う無情な鐘の音が、真っ白な部屋の中に響き渡った。
「はい。おしまい。では、二人とも、テスト用紙を回収します。清くん。美雪ちゃん。自分の名前は書き忘れてないよね? ちゃんと書いた?」
看護婦さんの言葉に、清は美雪と一緒に「はい、ちゃんと書きました」と答えた。
看護婦さんは「よろしい」と言ってにっこりと笑うと、二人のテスト用紙を回収して、それからテストのために用意された筆記用具などを回収して、そのままいつものように、清と美雪のいる病室から出て行った。
「はぁー。終わったー。疲れた」ベットの上にある簡易テーブルの上にうなだれて、清は言う。
「本当。疲れたよー。でも終わってよかったね、テスト」にっこりと笑って、白いカーテンでわけられているだけの、(今、その敷居となるカーテンは開いていた)清のベットの隣のベットにいる美雪は言った。
「どう? 清くん。テスト。できた?」
美雪の言葉に清はゆっくりとその小さな顔を左右に振った。
「そうなんだ。ふふ。でも、私は結構できたよ。テスト。結構自信あるんだ」にっこりと笑って美雪は言った。
清と美雪は、この『ドーナッツの形をした真っ白な病院』の同じ病室に入院している入院患者の友達どうしだった。
清はもうずっと、かれこれ『七年』くらいこの病院に入院している。
最初は友達も誰もいなくてすごく寂しかったのだけど、一年前に同じ病室に美雪が清のいる病室にやってきた。自分と同い年くらいの美雪が清の隣のベットで、入院生活を送るようになって、清の一人で辛くて寂しかった病院での生活は、本当にずっと明るくなった。(それこそ、雲間から太陽の光が差し込んだように明るくなった)
それからというもの、今までとは違って、あっという間に時間は過ぎていったような気がする。(それくらい、美雪がいる、一人じゃない生活は楽しかった)
清が美雪と一緒に入院生活をするようになって、『今日でちょうど一年』になる。
美雪が清のいる病室にやってきたのは、去年のクリスマスの日だったから、それは間違えることのない、正確な日にちだった。
十二月二十五日。
今年もあと、数日で終わりだ。……僕は、来年も、こうして年を越すことができるだろうか?
それとも、……新しい年を迎える前に僕の命は燃え尽きてしまうのだろうか?
わからない。わからないけれど、……僕はまだ生きていたいと思った。
君と一緒に、もっと、もっと、生きて、成長して、ちゃんとした大人になるまで、生き続けたいと思っていた。
(そう思えるようになったのが、君と出会ってからの僕の一番の変化だったと思う)
なにも予定の書かれていない真っ白なカレンダーを見て、それからちらっと美雪のことを見て、清はそんなことを考えていた。
「あ、雪だ。見てみて、清くん。雪降ってるよ!」
美雪が言う。
清が美雪の言葉を聞いて、窓の外をみると、確かに病室の窓の外には真っ白な雪が、降り始めていた。
ドーナッツの穴 雨世界 @amesekai
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