詰め将棋の技法の一つにそれがある。盤上に攻め方の玉以外の駒三十九枚(将棋は敵味方合わせて四十枚の駒がある)を並べ、敵玉を含めて三枚の駒で詰ませる。なお攻め方は玉を詰ませるには最低二枚の駒が必要なので、つまり必要最小限の駒以外は全て煙と消える。
本作は煙詰めさながらの傑作だ(※完成した煙詰めは全て傑作である)。
それにしても、黒魔女の魅力はかの『ジョジョの奇妙な冒険(荒木飛呂彦、集英社、敬称略)』に出てくるディオさながらだ。『悪には悪の救世主がいる』とは第三部で条太郎と対決したンドゥールの台詞だが、黒魔女はそれに勝るとも劣らない。
本作はまた、登場人物が誰一人として良心だの倫理だのを持ち合わせていないことも特徴的だ。これはもう、黒魔女の言から類推するに、ポストモダニズムのサバトとしか表現のしようがない。
必読本作。