第11話 私たちは 同じ 鍵を 持っている

 町家の件は結局、類に相談した。


 さすがの類。

 解体の危機に瀕していた京都の町家を、あっさり救った。

 さくらから話を聞くと、翌日には町家の所有者に話をつけ、シバサキのものにしてしまった。


「フルリフォームして、貸家にしよう。芸術家を目指す若者に、安く貸そう」


 あの町家から、芸術家が生まれる。想像するだけで楽しい。

 玲も、快諾してくれた。

 柴崎家の新居計画と並行し、町家の再生活動も新企画室の事業となった。


***


 さくらたちは、両親の住んでいるマンションに戻ってきた。


 しばらく空室で、そのあとは真冬が使っていたけれど、結局この形……マンション内同居がよさそうだった。


 そして、さくらたちが住んでいた部屋に、玲が引っ越してくる。ついでに、イップクも。オトコのシェアハウスである。


「ただいま、だね」

「うん。ただいま。おかえりなさい、類くん」

「さくらの『おかえり』はいいよねえ、ほんと癒される」


 新居は、場所の選定をしている。会社にそう遠くなく、玲の工房も確保できる、三世帯住宅である。少し、時間がかかりそうだった。


 あおいは、玲と住みたいと言っている。

 ただし、ぱぱまま……類、さくらを諦めるつもりもないらしい。類、というか、聡子に似ている気がしてきた。天上天下唯我独尊。

 約束通り、ダンスを習いはじめて毎日くるくると楽しく踊っている。ますます愛らしく、歌もだいすきなので、『このまま、アイドルになっちゃうかも』とさくらは危惧している。



 会社も順調である。

 類の『円卓の騎士』には、壮馬。叶恵。営業部時代の上司。それに、涼一と玲を加えた。いずれは、聡子も加わるだろう。


 会社への復帰を果たした、0番目の騎士・さくらは、類の心を支えている。

 慣れない家族広告にも、継続で参加。撮影のたびに、武蔵社長から悪態をつかれている始末だが。


 毎日が充実している。輝いている。できることなら、このままずっと一緒にいたい。

 出逢ったときは、最悪だったのに。

 さくらのベッドで勝手に寝ていた類に、帰宅したとたん襲われそうなった。

 つい、昨日のことのようなのに。

 だいすきな人になった。家族になった。

 同じ鍵の仲になれて、よかった。


「そう。いつまでも、私たちは『同じ 鍵を 持っている』。」




『同じ 鍵を 持っている』


                           ~END~



(最後まで、ありがとうございました!)

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同じ鍵 もう はなれない! fujimiya(藤宮彩貴) @fujimiya

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