第17話

 喫茶店『ダルマチア』に入ると、マスターと友美ちゃんはテレビを見ていた。


「おはよう。あらマスター、朝からなんのテレビを見てるの?」

「「おはようございます」」

「俺は女子マラソンのファンなんですよ、今日は朝から実業団の女子駅伝の大会があって、それを見てるんです」

「おはようございますっ」

「あら、啓太さん。顔色が良くないわね、どうかしたんですか?」

「友美ちゃん、昨日は大変な1日だったんですよ」

「何があったの」

「それが……」

「啓太、まだ話さないで。マスターと友美ちゃんに今度の仕事の応援を頼むんだから、その時にゆっくり説明しましょうよ」

「仕事の応援?」

「今回の仕事は厄介な問題になりそうだから、2人に手伝って欲しいのよ」

「今度はどんな仕事ですか?」

「ある女性の失踪事件を調べてるの、コーヒーを飲みながら話しましょう」

「いつものコーヒーでいいですか?」

「ええ」


 ロコさまは例の席に着く、僕は隣に座った。数分後、友美ちゃんがコーヒーを持って来て向かいの席に座ると、マスターは友美ちゃんの隣に座った。


「ロコさん、どんな仕事ですか?」

「失踪したのは製薬会社の女性従業員で、長野からの出張で連絡が取れなくなったの。総務の人が彼女の宿泊先を調べていたら、変なものが残されていたのよ」

「なんですかそれは?」

「それがHな塗り物で、ロシア製だったわ。でもそれを売っている歌舞伎町の薬屋さんへ行ったら同じものじゃ無かったの。で、そこのおじさんにホストクラブで働いているロシア人ハーフの男のことを聞いて、2人で調べに行ったのよ」

「そのホストクラブで大変な事になったんだ」

「啓太さん、どうしたの?」

「ロコさまはドンペリ飲んではしゃいでたけど、僕は亀ばばあに食べられそうになったんでーす」

「亀ばばあ?」

「啓太、そんな話はどうでもいいのよ」

「はあ、ロシア人ハーフの男の名前がマルコヴィッチという名前で、そこの店のオーナーにロコさまをホテルへ連れ出せって言ってたんです」

「まあ、で、どうなったの?」

「僕がドライアイスで煙を出してから火災報知機を押してロコさまを救出しようと思ったら、本当に火事になったんです」

「なんだそれ? 啓太君どうなってるの」

「私が火を付けたのよ」

「「えええ!」」

「私も店の事務所に忍び込んで男の事を調べていたら、消防車が思ったよりも早く来ちゃったから……」

「ロコさんそれって放火ですよ、放火!」

「ちょっと酔ってたのよ、でも、そのマルコヴィッチが白いベ〇ツのカブリオレに乗っていて、目黒のマンションに住んでいる事がわかったわよ」

「ロコ姉さん、ドンペリどうでした?」

「若い男に囲まれて飲むのって最高だったわよ!」

「ロコさまはお金も払ってないんでしょ?」

「それが、ドンペリを持って来た時にカード清算させられたわよ。4万円もしたんだけど、調査費で請求できるかしら?」

 出来るわけないだろ! と思った。

「へー、私も行きたかったわ」

「そんなことより啓太、動画は撮った?」

「はい、撮りましたよ」

 僕はスマホを取り出して、昨日撮影したスパイカメラの画像を再生した。マルコヴィッチの顔写真が写っているところで一時停止させてからみんなに見せる。

「この男がマルコヴィッチですよ」

「あらまあ、すっごいイケメンじゃない!」

 友美ちゃんが僕のスマホを取り上げて、デレデレした顔で画像を見ている。今にもよだれが出そうだな。

「ロシア人ハーフって言ってました」

「ふん、啓太が余計な事しなかったら、昨日の夜楽しめたのにーっ」

 ロコさまが目を吊り上げて僕をにらんでるぞ、助けてあげたのになあ。

「ロコさん、この男が製薬会社の女性をさらったんですかね」

「徹さん、私の勘では間違いなくこのマルコヴィッチが楠田元子さんの失踪事件に関わっていると思うのよ。4人で居場所を突き止めたいから、あなたの車を出してくれる?」





「じゃあ、みんなで俺のランクルに乗って捜索開始だ!」

 


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啓太24才が片思いの女社長 古森史郎 @460-komori

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