第一部は中古品店の店主が主人公ですが、第二部はキーパーソンとなった録音技師が中心人物となっています。つまり一冊の長編小説を読んで、二つのミステリーを楽しめるという構成になっています。
舞台設定も東京、甲府、京都そして中国、ロシア、ドイツなど、世界をまたにかけて巡るなど、本人の体験談をもとにしているのかわかりませんが、スケールの大きさを表現する思いを感じます。
ただ時代背景が現代の描写から大正・昭和の時代に飛ぶなど、読み返しをしないと作者の意図を理解するのにやや苦労するかもしれません。
また理科系の話がよく出てきます。文化系の読者としては難しそうな話題には素人にもわかるような補足説明してほしいし、登場人物のキャラクターが反映するエピソードやドロドロした人間関係を描いてもほしいです。
一話ごとにテーマをしぼって書いているので読みやすいですし、物語の展開が意外なのでわくわく感があります。なので、面白そうなストーリーになると確信するところは、もっと厚化粧をしてもらうとおいしいですかね。
最後に、第一部のエンディングが良かったので、とくに二部作にしなくても旗島真が登場した部分で、回想する形をとってもよかったのではないでしょうか。
それでも続きをみないで寝ると夢に出てくるような物語なので、最後まで読み届けたいと思います。古森史郎さん、がんばってください。
中古品店の「冬菇(どんこ)」で働く片桐 耕太郎をはじめ、女子高生の芦田 美咲が持ってきたあるマイクロフォンの謎を解き明かすお話です。
ほのぼのとした日常の中で物語が進むので、落ち着いた作風が好きな読者さまにおすすめです。仕事熱心だけど厄介事は嫌いな耕太郎・礼儀正しくも意外とちゃっかりしている美咲――など読んでいて楽しくなるような個性豊かな登場人物が多数登場します。
時折ミステリー的な内容も含んでいるため、現代ドラマと謎解きの双方を組み合わせた小説です。時折専門用語も出てくる場面もありますが、作品の中でしっかり説明されているので、読者向けにしっかりと配慮された小説だと思います。
さらに非常にしっかりとした文章で書かれているため、ゆっくりと作品の情景を思い浮かべることが出来ることもポイントです。現在と過去を読み比べるという意味で、1つの作品でありながら2つの視点からお話を読み進めることも出来ます。
とても読みやすい作風で書かれていると同時に、色々と深く考えさせられることも多々ある小説です。物語はまだ完結していないようですが、一読者として多くの方におすすめしたい小説です!