自己言及のパラドクス

作中にて堂々〝小説〟と銘打たれた、しかし明らかに考察や議論の覚書と思しき文章。
手強いお話でした。構造の罠というか、こちらの認識をぐらぐら揺らしにかかるような、ある種のいたずら心のようなものを感じます。
この作品、作中で堂々と「これは小説である」と銘打たれています。登録ジャンルは「エッセイ・ノンフィクション」となっていますが、しかし小説の自主企画に登録されていることからも、これが小説として書かれたものであることは間違いないはずです。
したがって、小説として読もうとするのですが、でもそれがなかなかうまくいかないのです。
気がつけば、作者自身の考察のように読んでいる。小説を読んでいるときの感覚にならない。そこまで考えた時点で、必然的に「小説とは何か?」という疑問が浮かびます。
普段なんとなく、知っているつもりで読んできた〝小説〟というもの。でもそれって一体なに? と、そんなものを突然突きつけられるようなお話でした。内容そのものも興味深かったです。