護れたもの
この国で起こった大規模な戦争が終わって数年、ようやくそれぞれが幸せを取り戻し始めたが戦争の影響からか悪党は蔓延り、国民は安心出来ない日々が続いていた。
その日も、とある村の近辺で山賊が幼い子どもと母を襲っていた。
「おいおい……逃げんなって………金目の物を寄越せば何もしねぇって言ってるだろ? まぁ持ってねぇんだったら仕方がねぇ、運が悪かったと思って奴隷商に売り飛ばされてくれや……ケヒヒ……」
山賊の一人が怯える母子に近付こうとしたそのとき、空から降ってきた一人の女性がスッと間に割って入った。
「なっ! 誰だテメェ!」
「ふふふ………軒並みな台詞を吐きますね………早速名乗りたいところですがあなた達は後回しです! あっもし自分からお縄につきたい人がいるようでしたら武器を捨てておいて下さい、抵抗したところで何も変わりませんが……あぁもちろん命を取るつもりはないのでご安心を……死ぬほど痛い目には遭ってもらいますがね」
そんな場違いなことを言ってから女性は母子の方に近付き、傷負っていないかを確認してから逃げるように促した。
「見たところ大きな怪我はしていないようですね……でしたら走って逃げてください……えっ? 山賊達がいる方向が村のある方向? あぁ気にせず間を走り抜けて下さい大丈夫です、そんなに心配する必要はありません、ほら速く走った走った!」
訳が分からないが奴隷になるくらいなら、と覚悟を決めた母子は山賊に向かって走り出した。
『はい、お疲れ様でした! もう走らなくても大丈夫ですよ』
そう言われて足を止めるといつの間にか自分たちの住んでいる村にまで着いていた。何が起こったのか分からず困惑していると、光る小さな球からさっきの女性の声がした。
『びっくりしました? いわゆる
それを言い終わるとポンッ! と愉快な音を立てて球体は消えてしまった。終始何があったのか分からない母子ははてなを頭に浮かべながら我が家へ帰っていった。
「なんてね………、もしかしたら私、作家になれるかしらね?」
母子を空から見下ろしていたシェスターが誰に言うわけでもなく独り言を呟いた。最近、彼女は朝日と一緒に国の巡回をしていた。元々シェスター自身は乗り気ではなかったのだが、どうしても、と朝日に頼み込まれてその熱意を無下に出来ず昼間っから天馬を駆けさせていた。
「何回言っても朝日が天馬から飛び降りるくせは治らないねー………先代の悪いところは継がなくっても良いってのに………なぁ聞いてるかい、英雄さん?」
最近の朝日はナフトのあとを継ぐように精を出していた。恐らくナフトの言っていた勇者になりたいんだろう。
「本当に面倒事だけを押し付けてくれたもんだよ……そうそう知ってるかい? みんながアンタのことを英雄って呼んでるんだけど朝日だけは勇者って呼んでるんだよ、全くどんなこだわりがあるか知らないけど可愛いモンだよホント」
誰に伝える訳でもない言葉が空へ飛んでいきかき消されてなくなった。
『シェスターさん! もしもし!? 迎えに来てもらっても良いですか!?』
「わわっ!? びっくりしたぁ……反抗期かしら………?」
『反抗期じゃないですよ! っていうかいい加減その口調疲れません?』
本当にこの子はなんでも気づいちゃうのが良くも悪くも……………。
「………………………えっ?」
異世界転生された世界 アイスティー @optimistically
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