詩人願望
唐突ではあるが私は詩人である。
特に誰かから認められた訳でも、自分から目指した訳でも無い。詩学も学んではいないし、有名な詩人の作品を全て読んでもいない。
英語だってチャンチャラ分からない。それ以外の言語など最早鼻くそを塗ったくった落書きにしか見えない。ただのそこいらにいる、ただの詩人である。
朝は怠惰な惰眠を貪り、昼はやりたくもない文字打ち盤に乱数を殴り、夜はまた怠惰に惰眠を貪る。
それでも私は詩人である。日々のつまらぬ情景を、文字として打ち出して他者に伝える。そう考えると君らだって詩人だ。
140字に自分の生活を押し込めるスタイル、チンケな図や絵と共にダラダラ話すスタイル、様々な鼻くそ文字を使って有象無象に伝えるスタイル。
近頃は詩人が多くなってきた。
何を隠そう私も詩人である。目に見えた物をほんの少し洒落たように見せかけた、上っ面だけ見れば立派ば詩人である。他人よりほんの少し物知りで、表現の仕方を少しだけたくさん知っているからそれっぽい文章をなんとなく書ける。
取るに足らない詩人である。
では本物の詩人はどこにいるのだろうか。
私の友人の作った詩にこのような表現がある。
「寝てるときも起きているときも飯を食っているときも愛しているときもヤってるときもその感情は全部文字でしか考える事が出来ない。つまり自分の感情を詩を通してしか表す事が出来ない。だから自分の人生とは、詩なのだ」
ぽい。実に詩人的である。
これが本当の詩人なのだ。人生全てが詩に包まれている。本当に詩人とは憧れる。
憧れるが成れはしないというのもよく分かる。私の人生をかける価値は残念ながら見出す事が出来なかった。いや、囚われる前に逃げたのだ。
私の言葉が詩に支配されたくない。
そう考えるなら私は、詩人風言語出力装置なのだろうよ。
つまり私も君らも、ただの装置だ。
世界を語る 日々ひなた @tairasat9
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