第5話 新婚って言う程珍しい?

結婚したらしい。

人の家に住むというところ以外変わったところは見られない。

ただし生活の形は変わり、女性側に合わせる事になる為幾つかルールがあるらしい。


ルール①台所には立つな。

食欲の概念が無い世界での台所は、何かに特化して一つの事を行う場所に変わっている。ここでのそれはミルク作成、それ以外のものを並べると匂いで直ぐにわかるという。


ルール②別の誰かと外出はしない。

婚約を発表すれば穏やかになるが、長い間二人きりになるとミルクの国の住人はチャンスだと判断し求婚してくる「アイツいけるぜ?」ってなる。

なのでくれぐれも注意。


ルール③国を出れない。

規模が大きく、不自由しない為国を出る理由が余り無いと思われており、国を出ようとすると物凄く変人扱いされる。現代でいうと、極端に東京に拘る人を白い目で見る感覚に似ている。


ルール④ミルクしか飲まない。

国の名通りミルク以外のものは無く、店の中や道端に自販機はあるもののラインナップはみなミルク。ボタンの上の文字はHOT《ホット》。故にコーラはいつも隙を見てハズレガールに調達をお願いする。余所者はご用心。


ルール⑤そこそこ強い。

癒しをもたらす住人達はそちらに徹する故に控えめな力だと思われがちだが実際の戦闘力は結構高め。集まっての統率的な力という意味では無く、個々の力と見たときにコーラの体感では、なんとなくレモンスカッシュを超えている。勿論ブラウンも例外ではない。


ルール⑥普通にしてると死ぬ

街は常にシュガーミルクが降り、床に積もり続けているが実質雪では無いので溶けはしない。定期的に崩して潰さなければ延々と積もりミルクに息の根を止められる。


ルール⑦割と自由度が高い。

通常であれば上記のルールは絶対であるが、結婚相手がブラウンだ。人一倍抜けている性格ゆえゆるゆるな規律で生活している。台所の使い方を気をつけておけば、後の事は何となく切り抜けられる。少なくもコーラはそう思っている。


『とまぁ以上が纏め上げたルールにな

 りますが、問題などは?』

「うん、問題は無いんだけど。

そもそもルールを余り知らなかった」

『そうですか。』

「シュガーミルクって放っとくと死ぬ

んだ。早く言ってほしかった、死に至る情報を本当に黙ってるね。」

『いずれわかる事かと..』

「鬼のようだ、常にギリギリです。」

『本日のご予定は?』

「なんか出掛けるみたいです。」

『突発的ですね、楽しんで下さい』

「え〜、楽しめるかなぁ。」

『ドリンクウォーはどう致します?』

「あれは一回休むよ。

あそこに役割があるかも知れないけど一回コッチで何か探してみる」

『そうですか..わかりました。』


(実は知ってるんですけどね、役割)


「コーラさん、行きますよ?」

「あ、はい。」

(アナタの役割は私を楽しませる事)

スパークリングタウンも、婚約も何も繋がらない。役割は既に完了し、出口はとうに空いている。

『もう少し、楽しませて下さいね。』

ミルクの国の住人はやはり感覚が鋭い

言う通り、女は嘘が好きみたいだ。

                完

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