第3話

高校生のわたしたちのお気に入りの遊びは、カラオケボックスに行き、流行りの曲を歌うこと。

時にはソファーの上に立ち、飛び跳ねながら歌ったりもした。


その日もわたしはカラオケボックスへひとり向かった。

地元の古びた小さなカラオケボックス。

そこで友達と待ち合わせをしていた。

店内に入るがまだ友達は来ていない。

レジカウンターには年配の男性がいた。


「ひとりできたのかい?」

ニコニコしながら男性は聞いてきた。

「友達と待ち合わせです、少し待たせてもらってもいいですか?」

「いいよ、いいよ。あ、そうだ。外は暑かったろう。ジュースがあるから飲みなさい。そこの椅子に座っておいて」

男性は待合の小さなテーブル席を指差した。

親切な人だなぁ。

わたしはそう思いながら椅子に腰掛けた。


男性は冷えたオレンジジュースを自分のものも用意し、運んできた。

向かい側に腰掛けながら話しかけてくる。

「この前も友達と来ていたな、近くに住んでいるの?」

「はい、近くです」

「そうか、いつもありがとう」

男性は満面の笑みでオレンジジュースを啜った。

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美月 @sweetestsands

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