第3話 届いたよ

ワンコが元気をとりもどすと、ママが買ってくれたリードでお散歩デビュー。


外は晴れ渡る小春日和、ワンコはしっぽフリフリ、そこら中の匂いを嗅いだ。


暫くすると、向こうから


「テン!テンじゃないのか!」


その声にワンコがピクっと反応した。そして、いきなり走り出し油断していたあたしの手からあっという間にリードごと離れて、ワンコは声のする方に駆けていった。


あたしは、そこに歩いて行くと、ワンコはブンブンとしっぽを振りまわし男の人の顔を舐めまわしていた。


男の人は、デブで黒ぶちメガネ。服装はダサい柄のTシャツにGパン!しかもオッサン!


(最悪!これがワンコの元飼い主!)


ダサさ爆発じゃない!素敵な出会いを期待してたのに!


あたしは、その人の前で仁王立ちした。

男の人は顔を上げると


「あの…あのテンを預かってくれて…ありがとう…」


「預かってって?!貴方が捨てたんでしょ!」


「ちっ、違うんだ居なくなってしまったんだよ」


「なにゆってんの!拾ってくださいって手紙をくわえてたじゃない!」


「そっそれは…」

オッサンはうろたえた。


「あの僕…もうすぐ30になるんです…」


(29!あたしよりたった5つ上!もっと上に見える…)


「そっそれが、どうしたのよ!」


「そっ…それで30にもなろうと言うのに、カノジョ

いない歴が同じで…」


(当然っしょ!無理ない!)


「誰かにラブレターを書いてみたくなったんだ」


「誰かにって!誰?」


「いや…そんな相手もいないけど…とにかく書いてみたくて、家にあった紙に思いついた事を書いて封筒に入れて机に置いといたんだ」


「それで!」


「そしたら、その手紙と一緒にテンが居なくなってしまったんだ。どこも開いてないのにどうやって出ていったのかもわからなくて、毎日探していたんだ」


(えっ!それじゃあワンコはこの人に返さなきゃいけないの?)


てか、ワンコは、残念ながらあたしといる時より嬉しそうな顔してる。


ワンコを肩に載せ若いオッサンが立ち上がる。


「ごめん、悪いんだけど…」


その姿に、あたしは、突然ドキドキ


(どうしたの?何この胸のときめき?)


ダサくて、オッサンのこの人が、とても、素敵に見える。

アイドルスター?いや、それよりも


イケメン俳優?まだまだ…もっと素敵にみえる


もしかして!まさかの一目惚れ!


「あの…テンを返してもらってもいい?」


「あっええ…」


ダサい黒ぶちめがねの奥の彼の瞳が嬉しそうに笑った。


(そうだ!ラブレターの返事をしなくちゃ!)



「好きです。私を拾ってください」



ワンコがくれたラブレター。あたしの心に届いたよ。











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ワンコがくれたラブレター まりも @marmokk

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