第2話 助けて!
病院について、先生の前にあるだけのお金を出して
「これで、お願いします!」
「でも…助かるかどうか、わからないですよ」
と言われたが
「お願いします!」
と頼んだ。どうしてもワンコを助けたい。
何時間かして、手術が終わり先生に呼ばれた。
「どうにか命は取り留めましたよ。後は予後の経過次第です」
あたしは、ホッと胸を撫で下ろした。
「何か、食あたりの原因になる物は食べましか?」
と聞かれ、あたしは与えたご飯の説明をした。
「人間に食べられても犬には食べられない物もあるんですよ。ネギや玉ねぎ、チョコレートも駄目ですね。後、部屋に落ちてる物を誤飲する場合もあります」
そう聞かされると、思い当たる事が多すぎる。あたしはしょぼんと先生の話を聞いた。
「とにかく元気になれば三日ほどで退院できます。入院費用ががかかりますが…」
「はい」
あたしは、家に帰り猛然と部屋の掃除を始めた。ドタバタする音が聞こえたのか、ママが顔を出す。ゴミ袋にバンバン、物を詰め込むあたしを見て
「未来、それじゃあ駄目よ。ちゃんと分別しなくちゃ」
そう言って、手伝い始めてくれた。今までだったら
「余計な事しないで!」
と叫んだが、今はそんなことを言ってられる場合じゃない。
飲みかけのコーヒーカップは洗い。食べ残しのお菓子の袋。ゲームの空箱。全部全部、捨てた。
一日かけて、ようやく久しぶりに絨毯とご対面。
ママが下から掃除機を持ってきて、仕上げの掃除機をかけてくれた。
「ようやく、人間らしい部屋になったわね」
そう言うと、下に降りてった。
パパと弟が覗きにやってきた。
「どうした!この部屋?明日は台風か!」
「うるさいわね!出ていって!」
相変わらず素直になれないあたし。それでも、ひとりでは生きて行けない事がわかった。
次の日、病院にワンコを見に行くと小さな檻の中でまだ、起き上がれず寝たまま、あたしの顔を見て力なくしっぽだけフリフリした。
まだ、予後の治療がある。あたしは、いつものコンビニに行き、働かせてくれるように頼んだ。
「でも、君、すぐ辞めるからなぁ…」
と店長が渋った。
「今度は続けます。お願いします」
と頼み込んだ。
そして、先生の言う通り、ワンコは三日後に退院できた。前と同じで元気にあたしの顔を舐め回すワンコだが、傷口を舐めないようにエリザベスカラーなるものを首に巻き。お腹の傷口もまだ、生々しい
「ごめんねワンコ。もう病気なんかにさせないからね」
ワンコを抱っこして家に帰ると、ママがワンコ用のご飯とリードを買って渡してくれた。
「ママ、ありがとう」
「お金はちゃんと返すのよ」
「うん」
あたしは、夜のコンビニで働きゲームも何もしなくなった。ママはあたしにスマホだけは返してくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます