ワンコがくれたラブレター
まりも
第1話 ニートな未来
引きこもり歴何年のあたし未来。
名前は未来だが、お先は真っ暗だった。
部屋には、パソコン、スマホ、ゲーム機にゲームソフトが散乱していた。
高校を卒業して、入った会社はブラックでモラハラセクハラ上司にパワハラお局にイジメられ、あえなく撃沈。
それからは、親の手前、面接は受けるが、どこも不採用。
とうとう、ニートな、ほぼヒッキーとなってしまった。
これでも、メイクしてお洒落をすれば、そこそこなのよ!でも、面倒臭い!
家では、ピンクの色が抜けきった。スウェット。外出は、トレーナーにGパンで充分。誰も私なんか見てないし平気!
お金は無論ない。
新しいソフトが出ても親は買ってくれない!
仕方ないので、いつも人不足のコンビニで働き、目標額になると辞めちゃう。
家族はあたしをいないものとする。
ご飯は、いつも部屋の前に置いていくだけ、たまに、まだ高校生の弟を連れて旅行に行くが、何も連絡なしで突然いない。
お腹が空いて下に行くと
「これを食え」
と言わんばかりに、インスタントラーメンが山と積まれてる。
母よありがとうと一応感謝し、お湯を入れてカップラーメンを食べる。
そしてある日、コンビニで貰った給料で、狙ってたソフトを手に入れた帰り道。ご機嫌なあたしの目の前を小さな雑種のワンコが口に何かをくわえてやってくる。
ワンコは、短いしっぽをフリフリ、私の足下に寄ってきた。
(野良犬?)
それにしては、綺麗だけど…
口に咥えていたのは、手紙だった。
手を出すと、ワンコはあたしの手の平に、手紙をポンっと置いた。そして、あたしの顔を見てしっぽをフリフリした。
受け取った封筒は、真っ白で封筒の真ん中にピンクのハートのシールで閉じてあった。
あたしは手紙を開けると、真っ白な紙に
「好きです。僕を拾ってください」
と書いてあった。いったい、どういう事だろう。
「好きです」?
意味がわからない。とどのつまり、このワンコはオスで捨てられたのだな。
いや、困った、うちは一軒家だがニートなあたしが連れ帰っても、飼ってくれそうもない
手紙を閉じてワンコの口に戻すと、あたしは急いで家に向かった。でも、ワンコはずっとついてきて、とうとう家までついてきちゃった。
どうせ、干渉してこないわね!
そう思い、ワンコを家につれてあがった。
それを見たママは流石に
「みらい!何その犬は!飼うつもり!」
あたしは、知らん顔で二階の部屋に行った。
ワンコは、しっぽをフリフリじゃれてきた。
それから、あたしとワンコの生活が始まった。ゲームやらなんやら、ゴミだらけの部屋でもワンコは、いつもご機嫌で遊んでた。
餌は、あたしのご飯を挙げた。
あたしの汚部屋を気にもせず懐いてくるワンコ。
「あんたが、人間だったら良かったのになぁ〜。もしかしたら、魔法がとけてイケメンスターに変わるとか」
と虚しい希望を想像し話しかけていた。
そんな、ある日ワンコが苦しそうに、倒れていた。
ゲロゲロ吐いて。ベチャベチャベチャウンチ。
息をハァハァしながら動かなくなった。
「大変!医者に連れてかなきゃ!」
あたしは、慌てて動物病院へ駆け込んだ。先生は
「何か誤飲か食あたりを起こしてますね。直ぐに手術をしないと助からない」
「ええ!じゃあすぐに!」
「手術費用がたくさんかかりますよ」
「……いくらぐらいですか?」
「手術費用だけで、10万、後はお薬代や入院費も別にかかります」
「10万!!」
あたしにそんなお金がある訳ない!
持ち金総額、321円
「どうします?」
先生が聞く
「ちょちょっと待ってて下さい」
ダッシュでうちに帰る
「ママ!お金を貸して!10万!お願い!」
「何、馬鹿な事言ってるの」
ママは、とりあいもせず掃除機をかけている。
「ワンコが死んじゃうの!お願い」
そう言っても知らん顔だった。確かにあたしの話など聞く訳が無い!
あたしは、二階の自分の部屋に行き、パソコン、ゲームのコンセントを引き抜き。ゲームソフトも全部、袋に入れ、また下のママの前に行きそれらを目の前に置いた。ついでにスマホも出してみた。
目を丸くするママに
「これを、全部売ってもいいから!お金を貸して!」
ママは、黙ってタンスの引き出しを開け
「今、あるのはこれだけよ」
と10万と少しの1000円札を渡してくれた。
あたしは、それをわしづかみにすると、また動物病院へと戻った。
(ワンコ生きてて!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます