寄宿舎で暮らし、学校に通う13歳の主人公テオドアのストーリーは、彼の豊かな感性をよく表す一人称で進んでいく。
冒頭から一文字も無駄がない文章で綴られる、「学校全部がそわそわして落ち着かない」状況での、夜明けの穏やかな時間帯との対比が素晴らしく、目を離せなくなってしまう。
また、後半部分の、何を考えても何をしてもどうにもならないテオドアの感情が最後まで美しく描かれ、その美しさが虚しさや切なさを大きく膨らませる。
読み手の想像力を試すように淡々と進むストーリーで味わえる余白。
これこそがこの作品の真骨頂だろう。
冒頭で引き込まれることは必至だが、ぜひ最後までじっくり味わってほしい名作だ。