第22話 はぁい復活しました~
「・・・・・・う、ふぁああ・・・・・・」
俺は目を開けた。
左右が土の壁みたいなので囲まれて、真ん中の方だけ光が見えている。
そこからにゅっと延びてくるスコップ・・・・・・何やらよくない予感しかしないのだが。
「案の定かよ!!」
どさどさ落ちてくる土が顔面にかかる。ミミズがほっぺたを滑り降りていく感覚がとても気持ち悪い。
俺はあの猪の件で死んだと判定されたのか土葬されようとしているらしい、火葬とか鳥葬じゃなくてまだよかったと思える俺は前頭葉かどっかいかれてるのかもしれない。
「待って待って生きてる!!俺生きてるから埋めないでって!!」
「なんだ、なんか今死人の声が聞こえたぞ」
「生きてるから待てっつってんだろがァァアアアアア!!」
まだ節々が痛い体をたたき起こして深さ1mくらいの穴から飛び出る。
チハヤとかがいないかあたりを見回したが不在のようで、周りには土ぼこりにまみれた男のみ。
もしかして埋葬だけしといてくれって感じで遺棄でもされたんでしょうか俺は。
「ゾンビが出たぞ、剣持って来い!」
「どこがゾンビ!?明らかに生命の息吹感じません!?ね!?」
ちゃんと自意識もあるし四肢が腐ってるとか内臓ポロリもないし俺は完全な生きてる人間だ。
例の口が悪めな天使っぽい人にもらった権能とやらで回復してるんでさあ。
「な・・・・・・死人が甦るなど・・・・・・」
「元から死んでませんからね、瀕死だっただけです」
顔面についた土を払って俺は目を二回ほどしばたたかせた。
太陽はもうかなり低くなっていて、まあ今が春として考えれば16時くらいか。
俺が猪にぶっ飛ばされたのがまあ14時近く(だったはず)だからかれこれ2時間くらい眠っていた計算になる。
・・・・・・ということはもうチハヤは行ってしまったか・・・・・・。
「おやっさん、埋葬頼まれてた人が生き返りましたぜ。どうしやすか」
鉱夫の一人らしい男が近くにいた極道っぽい男へ訊ねる。
彼はサングラスのパチモンみたいな眼鏡を取って首に引っ掛けて俺をまじまじと見つめてきた。
俺をここで働かせるための品定めでもしているのだろうか。
「・・・・・・お前・・・・・・アレ、だな」
双眸が俺を射抜く。
俺のなにを見たのか、男は納得したようにゆっくり首を縦に振る。
「アレ、とは」
「なぁに、こっちの話だ。お前のツレならあっちで取引屋といるぜ、行ってこいや」
背中を強く叩かれ、俺は小さいプレハブのような小屋に入れられる。
なにがなんだかわかっていないので首を傾げていると、前から某かが飛んできた。
鳩尾にヒットする謎の弾頭。完全な不意打ちだったので思わずぐぼぇあなんちゅう情けない声をひり出し俺はひっくり返ってしまう。
「いってぇ・・・・・・」
「カツノリ!!やっぱ、やっぱ生きてた!!」
ぶつかってきたのはチハヤである。
俺の姿を見た瞬間感極まって跳んでしまったらしいのは可愛らしくていいのだがなにぶん俺へのダメージが大きすぎというもんだ。
「ああ生きてたよなんとか。チハヤはずっと待ってたのか?」
「ショーさんがいろいろお話しててね。私は終わるまでどこかへ行くわけにもいかなかったもん」
俺の胸に顔をうずめるチハヤ。
土と汗まみれなのにそんなことはどうでもいいとばかりに額をすりすりしてくる。
「・・・・・・俺がぶっ飛ばされてから特に変わったことはなかったか?」
「んーとね~・・・・・・あのでっかいのは軍の人がもってっちゃった。5人以上でのグループで殺せって討伐命令が出てた害獣だったからあとで報酬は与えるって言ってたよ。カツノリがぼろぼろだったからあんま信じて貰えなかったけど頑張ってほんとのこと言ったからね。ショーさんもちゃんと言ってくれたから安心して」
「・・・・・・それはありがたいこった」
あのでけえ猪やけにパワフルだと思ったらそんな厄介な奴だったのか。
居眠り中に寝首を掻くという卑劣めな手段を使ったとはいえ倒せたのは幸運だったというわけだ。
「でも俺埋められる所だったんだが、ほんとに死んでたらどうするつもりだったんだ?」
「・・・・・・それは決めてなかった。軍の人と話してるときはカツノリ、なんとか息してたもん。でも話が終わってすぐ息が止まっちゃってね、死んじゃったって思って私どうしたらいいかわかんなくって・・・・・・ショーさんもこの状態から復活させる病院も教会もないって知ってたからこっちに来たの。まさか話がどんどん進んでカツノリがお墓に入れられるなんて思わなかったけど」
つまり手遅れと判断してさっさと始末しに来たと。
合理的かもしれんがこっちとしてはちぃとイラつく話である。
早とちりで殺されたんじゃたまったもんやないっての。
「ひどい目に遭ったもんだけどまあ生きてるだけマシか」
五体満足でいられるのは幸運というものだ。
野球もこの肉体のバランスで動くことを大前提にしてフォーム作りをしているのだから、崩れたらまた再構築するのに何ヶ月かかることか。
「やあやあ、やっと話終わったよ・・・・・・って、ん?」
「・・・・・・どうも~」
この世ならざる者を見る目で俺を観測してらっしゃいます。
これは幻じゃないんですよショーさん。ちゃんとカツノリはここにいますよって目を擦らない、ほっぺたつねらない。
「ワタシハ、コウセキヲサワッテイルウチニ、ゲンカクショウヲワズラッタノカ?」
「患ってないから大丈夫ですよ、つかなんで片言になってんですか」
死者蘇生なんておおそれたことを誰かがやってくれたってわけでもないのに大げさな・・・・・・
「え、マジで死んでなかったの?無事だったの?」
「そうだって言ってますよ。アヴァロンもびっくりの不死身さ加減でしょ俺」
そうやっておどけて見せはするがなんだか果てしなく虚無。つらい。
取引終わったんでしょ、聖都行きましょうよ。と無理やりショーさんを連れて行く。
外にあった馬車の置き場はすぐ目に付いたので、そのまま全速前進。
早いこと冒険者としてそれなりに身を立てられるようになりたいのだ、ちょいとくらいお急ぎ便でもいいでしょうが。
勇者ですけど野球をさせろ~野球バカの異世界暴走記~ 結城祐樹 @Hiraisan2525
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