夏〜少年と青リンゴ〜
@kazz1987x
ポストに届いたスタートの合図
クッソ、マジか。
あいつ何考えてるんだ。
出て行った妻からの訴状がポストに入っていた。
浮気をしたのは妻の方だ。
再婚だった彼女は娘が2人いたが、彼女達を僕の元に置いて出て行き浮気相手の家に転がり込んでいるらしい。
なのに僕を相手に裁判するというのか。
ちょっと何が起きているのか分からない。
妻に勝算は何もない。
まあいいか、これでキッチリする。
願ったり叶ったりだ。
これでこの街ともオサラバ出来る。
妻は前回の離婚の際に、子供を学区外に引っ越させない、子供の籍は元旦那の方、という条件で離婚したらしい。
だから僕が妻の地元に引っ越し、そこで暮らし始めた。
僕はここでは他所者。
周りは妻の知り合いだらけだから、何もしていない僕の方がこの街では肩身が狭い。
噂によれば妻は僕の悪口らしき適当な事を言いまわっている様だ。
子供達を置いて浮気相手の家に転がり込んでいても、ここでは悪者は僕。
子供達の籍が妻の元旦那の所にある以上、離婚が成立して僕が妻の旦那で無くなると、彼女達を守るの僕の役目が終わる。
だが、いつでも妻や元旦那の所に行きたければ行ける娘達が、毎日学校から帰ってくるのが僕の家というのが僕が今でもこの街にいる答えの全てだ。
だが悪い事ばかりではない。
一人暮らしでソコソコの経験はあったにしろ、子供達の食事やお弁当、洗濯や掃除や洗い物、買い物から送り迎え、主婦(主夫ではなく)としての経験は今後もしも結婚するとしたら良い経験になるだろう。
そして(もちろん色々気遣っているだろうが)今までと変わらずにそばにいてくれる僕とは苗字の違う娘達は、全ての真実を知るこの地での数少ない僕の味方でもある。
とりあえずは人生で初めて受け取った訴状をテーブルに置き、それをジッと見つめながら今晩の献立と裁判所の場所と明日のお弁当のメニューと裁判で何を話そうかを考えている夕方。
めっちゃシュールだ。
(第1話完)
夏〜少年と青リンゴ〜 @kazz1987x
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。夏〜少年と青リンゴ〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます