地獄が予告されていればこその絶望感

夏祭りの日、正体不明の化け物から追われる羽目になった四人組のお話。より正確には、半年前のその出来事を、夢に見てうなされる人の物語です。
夢、と言っても「夢だから何が起こっても平気」というものではまったくなく、むしろ真逆。
過去の出来事を、何度も夢に見ては後悔する、という事実。それが逆説的に物語の行く末を暗示しており、つまりは最初から惨劇が確約されているに等しい状況。その上で、お話が進む中で積み上げられていく、その要素の選び方がもう本当に好きです。
例えば登場人物同士の会話の、その様子から読み取れる信頼や友情など。好感を抱いてしまうようなプラスの要素が多くて、にも関わらず向かう先は(おそらく)地獄という、この真綿で締め殺すみたいな重苦しさが絶妙でした。
そして物語が進めば進むほど、どんどん狭まっていく生還の余地。繰り返される「選択」の瞬間と、その度に積み重なってゆく後悔。そして辿り着いた先、夢から覚めた瞬間の生々しさ。終盤、結構な分量を割いて描かれた光景の、その押し潰されそうになるほどの重み。
強烈です。取り返しのつかない現実の重さを、たっぷり味わせてくれる作品でした。