第6話 宮城

 宮川康文

 佐藤勇✘  

 井上顕

 大方道隆

 綾田安兵衛✘

 斉藤剛✘

 柄本陽介

 

 仙台タウン。元犯罪者から更生した井上顕は、介護ヘルパーの職を得て、妻のさくらと幼い息子の勇とつましいながらも3人で一緒に暮らしていた。

 そんなある日、自動車工場を営むいとこの斉藤剛が地元のギャング組織に命じられた仕事を手伝ってくれと、顕に頼みに来る。はじめは断っていた顕だったが、人が見つからないと殺されるという斉藤の言葉に、不本意ながらも承知して手伝うが、警察に検挙され、再び刑務所生活に入る。


 斉藤はさくらを罪償いと称して自分の工場で雇うが、ある夜、さくらを酔わせたあげくに犯す。翌朝、目覚めて動転したさくらは交通事故に遭って寝たきりになってしまう。

 復讐に燃える顕は一計を案じて、さくらの親友、江川春奈に預けた勇に会うことを口実に、担当の地方検事・大方道隆と取引、ある宝石強盗事件を自供、斉藤を密告者に仕立て上げ、組織の老ボス、綾田安兵衛の凶暴な孫、柄本陽介に斉藤を始末させる事に成功する。

 柄本は椅子にロープでくくりつけた斉藤に麻袋をかぶせ、トカレフで蜂の巣にした。

 息子に会うため1日だけの仮出所をした顕の護送に当たったのは、彼を逮捕する際仲間の発砲で顔面を負傷、その後遺症に苦しめられて顕を恨む椎名正孝だった。

 椎名は弘前署刑事課から仙台署警備部に異動になったのだ。しかも、降格して警部補になってしまった。


 3年後、2012年8月に出所した顕はさくらと再婚し、改めて平穏な生活を送ろうとするが、彼に中山葵がつきまとい、綾田安兵衛の死後新たなボスとなった柄本陽介検挙のための囮捜査への協力を迫ってくる。顕は再び危険な道へ足を踏み入れる事に。


 勇は9月15日の18時頃に四日市の家に泊まりに行き、翌日の16日の朝に母親が迎えに行ったところ勇はいなくなっていた。タスクフォースは16日未明から早朝までに何らかのトラブルがあったと見方を強め、捜査を行った。

 タスクフォースには中山葵、江川春奈、佐藤鉄矢、相武健太、近藤彬がいた。

 佐藤はオロオロしていた。

「息子が、息子が……」

 頭を抱えてテーブルに突っ伏した。

「ボス、あの調子じゃ……」

 仙台署2階の更衣室で春奈は葵に言った。

「佐藤さんを捜査から外そう」

 寝室や玄関、浴室に血痕があり、さらに寝室のカーペットはL字形に切り取られ、血はカーペットの下の畳まで染みこんでいた。

「勇君が生きてる可能性は極めて低いわね?」と、葵は言った。鏡に映る彼女の顔は死人みたいだ。このところまともに寝ていない。

 春奈は浴室の血溜まりに念力を送った。


 18日朝、葵、春奈、佐藤、そして復帰した椎名は秋保温泉に向かった。

「伊達政宗も湯治に訪れたらしいよ?」

 覆面パトカーレガシィを運転してる椎名が言った。

「友達の息子の生死がかかってるのよ?」と、葵。

「すまん、空気を読めなかった」

 温泉街の中央を流れる名取川沿いをレガシィはサイレンを鳴らしながら疾走している。覗橋の上下流約1Km、深さ20mにわたって峡谷美が続いてる。秋保石と呼ばれる巨岩がせり出している。『奇面岩』と呼ばれているユニークな岩もあった。

 腹が膨れた勇の死体がプカプカ浮いている。勇は幼児にしては太っていたが、水死すると腹にメタンガスが溜まる。

 佐藤は失神した。

「ブー、しっかりしろよ!」

 椎名は佐藤をゆさぶった。


 私は自分の腕に誇りを持っていた。

 安兵衛、勇を始末した。安兵衛は私に散々介護させたが金をまったく払わなかった。死んで当然だ。勇は私をブタと罵り🐷って画用紙をよこした。

 

 柄本陽介は、歴史小説にチャレンジしようとしていた。『独眼竜』で名高い伊達政宗の忠臣、片倉小十郎景綱を描く予定だ。

 白石は温麺やこけし、白石城などが有名だ。西に蔵王連峰、東に阿武隈山系、西から東に流れる清流白石川と風光明媚だ。

 執筆には行き詰まり、好意を持っている女性には振られてしまい、白石城の三階櫓の天守閣ではオバサンは執筆の邪魔ばかりしてきた挙げ句、自分も脚本家になると言い出す。

 陽介は『時音の宿』の部屋に籠って執筆をしながら、行き詰まると知り合いの女性たちを思い浮かべてマスターベーションばかりした。木造4階建ての大正ロマン漂う旅館だった。600年の歴史を誇るこの宿は伊達政宗も入湯したことがあるらしい。

(渚、祐希、あずさ、ちとせ、春奈、さくら、たか子)

 掌に白濁とした液を迸らせた。


 井上顕は強迫性障害を患ってしまっており、そのため極度の潔癖症であった。ある日、ついに彼の精神状態はボロボロになり、日常生活にも支障をきたすようになってしまう。彼を心配したさくらは、彼に精神分析医の乙女を紹介する。

 顕は乙女の元を訪れ、診断を重ねる内に、彼の障害は死んだ勇に原因があると考えられることを告げられる。

 乙女は顕に、勇の実の父親、佐藤鉄矢と会うことを薦める。

 乙女の正体は柄本、EMOTOのアナグラムはOTOME。ちなみに、EDWINはDENIMのアナグラムだ。


 椎名は、魔族の秘宝の秘密を受け継ぐ一族の末裔。祖父に、秘宝は当時の忍者らによって徳川幕府の手に渡らないように関ヶ原の戦いの際に封印されたと聞かされて育った椎名は、トレジャーハンターとなるのが夢だったが、祖父の説得で刑事になった。

 富豪の冒険家、綾田安兵衛からトレジャーハントの出資を受け、親友の斉藤剛と共に魔族の秘宝を探し求めていた。その過程で彼は聖なる剣を発見し、『青葉城』に秘宝の秘密が隠されていることを突き止める。

 安兵衛は宣言書の窃盗を提案したが、椎名が堅く拒んだため、以後二人は対立する。

 椎名は魔族の秘宝が保管されている『青葉城』の責任者である大方道隆や葵たちに安兵衛の危険性を警告するが相手にされず、やむを得ず、聖なる剣を保護するために、安兵衛一味との銃撃戦をかいくぐりながら、自ら聖なる剣を盗み出す。


 安兵衛からも追われ、さらに聖なる剣の窃盗犯として指名手配された椎名は、彼らの追跡を逃れながら、秘宝の在り処につながる手がかりを次々に突き止めていく。

 だが、それも長くは続かず、ついに安兵衛に聖なる剣を奪われ、葵にも追い詰められて逮捕されてしまう。

 安兵衛は椎名が葵に逮捕されたことを承知の上で、佐藤鉄矢を人質に取り、合流して聖なる剣の在り処を教えるよう脅迫する。

 椎名は松島の五大堂に秘宝が隠されていることを教え、五大堂の地下に侵入するが、すでに宝は持ち去られた後だった。坂上田村麻呂が東征の折に建立した毘沙門堂がはじまりだ。五大明王が安置されてるってのは有名な話だ。

 安兵衛は椎名を殺害しようとするが、佐藤鉄矢が「この場所も手がかりに過ぎず、真の秘宝は鳴子温泉郷にある」と嘘を教え、彼らを鳴子温泉郷に向かわせることで難を逃れる。

 その後、読み通りに真の秘宝を五大堂の地下で発見した椎名は、葵に秘宝発見の報を告げて独立宣言書聖なる剣を返却する。

 葵は、秘宝発見の手柄に免じて椎名一行の罪状を帳消しにし、一連の騒動の原因は安兵衛にあるとして、彼を鳴子温泉郷で逮捕した。

 安兵衛、剛は一度殺されたがゾンビ化していた。


 10月11日。仙台は、いつもと同じ朝を迎えていた。青葉警察署に勤めるベテラン巡査部長の新見五郎や、ヘッポコの平山錦巡査をはじめ、警察官たちも普通に業務を開始した。


 だが、午前8時40分過ぎ、突如、青葉城にに、ヘリコプターが激突した。続いて仙台駅にも、ヘリが激突。仙台市民だけでなく世界中の人が我が目を疑った。


 新見たちは、城に取り残された人々を避難誘導すべく、さらなる恐怖が迫っているとも知らずに部下たちと共に城へ向かった。

「ヘリには爆弾が積まれていたらしい」

 新見は覆面パトカーの助手席で言った。


 佐藤鉄矢は、勇が死んだことによる後遺症によって、幻覚と不眠に悩まされていた。休職中の佐藤のもとに、かつての恋人、瀬島祐希から娘の美咲が行方不明になったので探し出して欲しいとの手紙が届く。


 佐藤は釈然としないまま、親娘の暮らす竜頭島に向かったが、そこは女性が支配的な地位を占めて奇妙な風習が目につく不思議な島であり、携帯電話も通じないうえに社会から隔絶された土地だった。

 美咲の手がかりを探す佐藤を、島民たちは巧みにはぐらかす。やがて、佐藤は美咲が存在するという確かな証拠を掴むが、祐希は美咲が2人の娘であることを告げた。

 古いしきたりにのっとり、娘が生贄にされようとしていることを確信した佐藤は美咲の救出を試みるが、島の支配者、留守大輔の仕掛けた巧妙な罠にはまってゆく。


 大輔は留守政景の末裔だ。

 政景は天文18年(1549年)、伊達晴宗の三男として誕生。永禄10年(1567年)、父・晴宗の政略によって留守顕宗の養子となり、奥州の名族・留守氏を継ぐことになった。その後、村岡氏や余目氏の反抗を鎮圧すると共に、兄・輝宗や甥・政宗を補佐し、実家の伊達氏の勢力拡大に貢献し、各地を転戦する。


 天正18年(1590年)、豊臣秀吉の小田原征伐に参陣せず、所領を没収された。同年、岳父・黒川晴氏が政宗のために拘禁されると、その助命を嘆願し、許された。その後、文禄の役にて朝鮮へ渡海して出陣した。帰国後は正式に伊達氏一門に加わる。


 慶長5年(1600年)の関ヶ原の戦いでは、政宗の命により伊達軍総大将として、上杉景勝の攻撃を受けていた最上義光の救援に赴いた。小白川に着陣し、撤退する上杉軍を率いた直江兼続と交戦。戦後の伊達政宗の書状によると伊達勢で80~100の首級を取り、一門でもある大条実頼が負傷するほどの激戦であったという。


 後に政宗より伊達姓に復することを許され、慶長9年(1604年)、一関2万石を与えられた。


 慶長12年(1607年)、死去。享年59。菩提寺は岩手県奥州市水沢の大安寺。同寺には4人の殉死者と共に描かれた、極めて珍しい肖像画が残る(慶長15年(1610年)虎哉宗乙賛)。


 長男・宗利は金ケ崎城主、その後水沢城主となり、仙台藩の一門である水沢伊達家の祖となる。


 椎名は幼い頃、スーパーヒーローに憧れていた。ウルトラマンのコスプレをして気仙沼に現れたテロリストを倒そうとするが、加齢臭漂う男にあっさり刺された上、車にはねられ病院送りとなる。

 その模様を撮影していた見物人がいた。柄本陽介だった。

 医者の腕が良かった為に死ななかった椎名だが、ウルトラマンのお陰だと思い込むようになる。

 動画はやがてYouTubeにアップされて話題を呼ぶ。


 ある日椎名は、春奈が利府にいる麻薬の売人に悩まされていることを知る。さっそく彼はその売人がいるアパートに乗り込むが、多勢には敵わずピンチに陥る。

 するとそこへ、彼と同じように仮面ライダーV3のコスプレをした葵が現れ、瞬く間に売人たちを殺していき、さらには近藤彬も登場する。

 近藤は、自分を陥れ、妻を自殺に追い込んだ柄本陽介率いる犯罪組織を壊滅させるため、相武健太に戦闘技術を叩きこみ、柄本の配下の売人たちを次々に殺していたのだ。 

 近藤は椎名に、困ったことがあれば自分たちを呼んでほしいと言い、去っていった。


 後日、売人たちを全滅させたのは椎名であると勘違いした柄本陽介は、部下に彼を殺すよう命じる。


 二本松の町では少年隊によって何の罪も無い多くの老人達が『ゾンビ』の濡れ衣を着せられ次々と無残に処刑されていた。

 少年隊を率いていたのは柄本陽介だった。

 処刑を執行する柄本は『ゾンビ』が蘇らないよう祈祷を行っていたが、霞城に捨てられた死体の一体が突然蘇り、柄本陽介を殺害した。


 数日前、女川で戦うテロリストの軍勢の先頭に新見と平山の姿があった。

 初めのうちは殺した敵の数で賭けをするほど戦いを楽しんでいた2人だったが、いつ終わるとも知れない長い戦いで次第に疲弊していく。

 2人とも『銃を撃ちたい』って理由で刑事になった。

「椎名は神に背く犯罪者であるから皆殺しにしろ」との柄本陽介の号令のもと市街地に突入した2人だったが、暗がりでの乱戦の最中に新見は誤って丸腰の女性を殺してしまう。

 新見と平山は、椎名を殺すというだけで女や子供を含む無抵抗の市民まで殺戮する行為を「神の栄光である」と喧伝する柄本陽介と対立してテロリストを脱走した。


 石巻にやって来た新見と平山とは、この地でインフルエンザの流行により多くの死者が出ている事を知る。

 補給のため立ち寄った町で脱走騎士である事がバレて逮捕されてしまった2人だったが、彼らの武勇を聞き及んでいた井上顕から放免と引き換えにインフルエンザの原因である中国人女性を処理場まで送る任務を依頼される。

 

 新見と平山は、中国人女性がインフルエンザの原因だと信じて疑わない病理学者の立川八郎、インフルエンザで妻子を亡くした元自衛官の野口流星、加齢臭漂う迫田五郎、血気盛んな高校生山岡雅裕を連れ、中国人女性を監禁したトラックを守りつつ登米にある処理場へと出発する。

 新見は女性が拷問により自白を強要されたと主張している事などから彼女に同情し公平な裁判を行わせると約束するが、道中で中国人女性の不気味な言動が露になっていく。まず魔女狩りに懐疑的な野口が不用意に檻に近付いたところ驚くべき怪力を発揮した中国人女性に襲われて鍵を奪われ、女性は檻から脱走する。

 彼女を追う最中、新見は死んだはずの息子、新見重幸の声を聞き、まるで幻覚でも見ているかのように迫田が構えていた銃をこめかみに突きつけトリガーを引いた。

 重幸も刑事をしていたが、柄本陽介によって3年前に射殺されている。

 そして北上川に架かる登米大橋を渡る途中、中国人は遠吠えを真似た奇声を発し刑天(首のない巨人、鉞を持っている。)を呼び寄せて一行を襲わせ、山岡が死亡した。

 野口はマシンガン攻撃で刑天を葬った。

 ようやく処理場に辿り着いた一行であったが、従業員たちは既にインフルエンザで全滅していた。

 警察資料館で護符を発見した。明治22年(1889)に建築され、昭和43年(1968)まで登米警察署庁舎として使われていた木造の洋館だ。護符は留置所にあった。

 古代文字を読むことが出来る立川が魔女を払う祈祷を上げることになった。

 立川が詠唱を始めると一行は不死身になった。しかし、身を守ることは出来ても、魔女の攻撃は止まらなかった。

 魔女に憑依していた悪魔が姿を現し、一行に襲い掛かり、応戦した一行を圧倒的な力で蹴散らすが、不死身の新見たちに怯み処理場の中に逃げ込んだ。

「おまえはまだ若い」

 新見は平山に逃げるよう勧めるが、「こんな戦い多分二度とない」と平山は断った。


 悪魔が逃げ込んだ処理場の最上階へ向かう途中、不死身の魔法が解けた。不死身になれるのは1時間だけだったのだ。

 処理場の最上階に辿り着いた一行が見たのは、インフルエンザで死んだ多くの従業員の死体であった。

 悪魔は疱瘡ババアという、文化年間(1808〜1817)に疱瘡が流行した年に遺体を掘り返して食った。真っ赤な顔と体をして、白髪がボーボー生えている。

 一行に、疱瘡ババアと彼女に操られて蘇った死体が襲いかかる。

 戦いの中、立川が疱瘡ババアに首を折られて殺され、新見の危機を救った平山が疱瘡ババアに焼かれて灰となった。

「平山ァッ!」

 新見は泣き叫んだ。

「泣いてる暇はありませんよ?」

 野口は処理場に来る途中に魔弾を見つけた。マシンガンのマガジンにセットし、トリガーを絞った。

 疱瘡ババアは四散した。新見は蘇った死体に首筋に噛みつかれ、野口に「柄本陽介を倒せ」と言い残して息絶えた。

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リベンジ🔫ドッグ 北海道・東北殺人事件 鷹山トシキ @1982

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