第23話 月より団子
俺こと山田健太(やまだ けんた)は、月野姫(つきの ひめ)のマンションのベランダから月をながめていた。日本政府が用意してくれた彼女の部屋は、俺の家族が暮らすマンションのはるか上にある。が、しかし、俺の家は3階。彼女の部屋は最上階の35階。
マンションの上に行くほど部屋が広くなり、造りも豪勢になる。まあ、その分、マンション価格も大違いなんだけど。マンションカーストの底辺と頂点では、まったく別物だと思い知らされた。10畳を超える広々としたリビング。ベッドルームなんて天空に浮かぶお城のごとき。広々としたベランダには物干しざおなんてなかった。
マジですか!正に絶景じゃありませんか!東京スカイツリーどろこか、晴れていれば富士山だって一望できる。窓から駅前を行く人々を見下ろせば、アリンコの群れにしか見えない。上に住む者が下に住む者を、見下したくなる気持ちもわからんでもない。それこそ天狗になった気分だ。
彼女の引っ越しを手伝った時は、驚きの連続だった。それでも一月もすれば慣れてしまう。慣れは人間の更なる欲望を生み出す原動力なのだ。が、無限に慣れないものがある。目の前に!
月野姫!
彼女の超絶美少女ぶりは例えるものがない。ガハハハッ。うらやましいだろ!一生見続けても飽きない芸実品なのだ。ピカソの落書きがわからなくても断言できる。彼女は女神そのものだ。
「健太!」
「何?」
「私ね。未来から来た宇宙人なんだよ」
「えっ」
「未来人は月に暮らしているんだよ」
「じぁあ。最初から人間だったの」
「はい」
「私の住んでいたのは月の『静かの海』と呼ばれていた場所。ずっと先の未来に街ができるの」
姫は遠くを懐かしむようにさびしそうな顔をする。それが、また、たまらなく愛おしくて、かわいい。
「帰りたくなった?」
「うんん。健太といたい!健太が私の故郷になって」
くっー。聞いたかみんな!顔が熱いぜ。
「未来のことを知りたい?」
「んーん。どうだろう」
「未来には『恋』がないんだよ」
「・・・」
「だから私は過去にきたの」
「・・・」
「健太に会えて良かった。お団子食べよっか!私が作ったんだよ」
「うん。食べる」
「ふふっ。おいしんだから」
うぉー。姫のさびしそうな顔もいいけど、笑顔がやっぱいり最高だぜ。
いつも一人で眺めていた星空がなんだか今日は華やいで見える。まあ、理由は分かり切ったことだけど。
おしまい。
突然ですが、ほぼ、ぼっちな俺に宇宙一の超絶美少女が告白してきました。 坂井ひいろ @hiirosakai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます