第28話



 アデレ-ナは二日間の間、粘り強く交渉したものの結局、聖域からの外出許可の合意をその場で"テオドラと帝国の重鎮じゅうちん達"からは得られなかったものの何とか"前向きに検討する"ということでおりを付けてきたのだった


 それを聞いた、皆はガッカリしたがアデレ-ナなりに相当に努力したことは確かなのでラミアも渋い顔をしてはいたものの文句は言わなかった……

 どちらかと言えば、一番ガッカリしていたのはアデレ-ナ本人のようだった……何故なら、聖域から外出許可が出なければ"聖・封印の女神"教会へも行けない事となり……

 

 そんなこんなで、アデレ-ナが聖城から帰ってきてから早一週間が経っていた



 朝早くから誰かが屋敷のドアをコン、コン、コン、と叩く音がする……


 「はいはい」

そう言って、アデレ-ナかドアを開けるとそこには二十歳前後の若い従者二人を伴った40~50歳ぐらいの男が立っていた


 「アデレ-ナ・アルベリーニ殿に御出おいででありましょうか?」

そう言うとアデレ-ナがコクリとうなずいた


 「私めは"クレート・バルボ"と申す者であります」

 「聖城より"テオドラ"様の命により参上仕りました」

丁寧な口調で言うと深々と頭を下げる……従者二人も同じように深々と頭を下げた

 「これをお届けに参りました……お目通しを……」


 突然の訪問者にポカンしているアデレ-ナにクレートが封書を差し出した


 アデレ-ナは封書を手に取ると封を切り書面に目を通すとニコリと微笑んだ

 「分かりました……このおおせに従います……」


 アデレ-ナが答えるとクレートは

「では、私めはこれにて失礼いたします」

そう言うと侍従と共に去っていった……



 玄関での話し声に気付いた私や他の皆も玄関に集まってくる


 「どうしたのアデレ-ナ……」

 「今の人は誰…… 何の用だったの……?」

無言で立っているアデレ-ナを心配した私が問いかけると


 「やりましたよっ! 皆さんっ!!」

 「聖域からの外出許可が出ましたっ!!!」

アデレ-ナが嬉しそうに言うと、皆も歓喜の声を上げた

何せ、ここ三ヶ月以上もただ漫然まんぜんと日々を送っていたのである……


 浮かれる私達にアデレ-ナが

「但し、外出許可は明日からの三日間だけです」

そう付け足すと


 「え~! たったの三日間だけ~」

ラミアが不満そうに言う


 「贅沢言うんじゃありませんっ!」

 「三日間だけでもいいじゃありませんかっ!」

ふくれっ面のラミアにアデレ-ナが言うと条件を更に付け足す

 「それと……聖城からのお目付け役が三人同行するそうです」

 「教会の慣例かんれいにより三人とも女性だそうです……」

アデレ-ナが申し訳なさそうに言うとラミアの顔が更にふくれる


 「いいじゃないですか、お目付け役がいても……」

 「それでも私は嬉しいです……初めての海ですから……」

カリナがアデレ-ナをかばうかのように言う


 「ん~っ……!」

カリナの嬉しそうな表情を見てラミアもそれ以上は何も言わなかった

かくして、二泊三日の夏の海への旅行は始まりを迎えるのであった



 皆であれこれと話をしながら荷物を鞄に詰め込む……皆、ウキウキしているのが分かる……夕食も終わり、日もすっかり落ちた頃……


 「さてと……荷物の準備は出来たし……」

 「後は水着ねっ!」

ラミアがそう言うと私以外の五人は不思議な顔をする


 「み……"水着"って何ですか……」

アデレ-ナがラミアに問いかける……そんなアデレ-ナに

 「水着は水着……って……」

 「もしかして……水着を知らない……の……」

ラミアの声が不安そうになっていく

 「もしかして、海で泳いだりとかしない……の……」

そんなラミアの話を聞いて呆然ぼうぜんとしている五人に

 「じゃっ! あんた達って海に何しに行くつもりなのよっ!!!」

ラミアは少しキレ気味に言うと……セレスティナが……


 「砂浜や岩場で貝を取ったり……釣りしたり……」

 「それを料理して食べたりするんじゃ……」

 そうセレスティナがポツリと答えると私以外の他の四人はコクコクと頷いた


 

 「私ゃねっ! 海にりょうしに行きたいんじゃないんだよっ!!」

 「魚釣って、貝採って食うだけのために、わざわざ海まで行くかっ!!」

 「リゾ-トだよっ! マリン・リゾ-トなんだよっ! !」

必死になって訴えかける……そんなラミアに容赦なく注がれる冷たい視線……

 「エレ-ヌっ! このボンクラ五人衆になんか言ってやってよっ!!!」 

ラミアは涙ながらに私に訴えかける……


 どううやら、今の時代には"水着"と"海水浴"という物と理念は無いようだ……それに"リゾ-ト"も……

 私は、五人に"水着"と"海水浴"という物と概念を詳しく話す……そして、ビキニの水着のサンプルを錬成してラミアに着てもらう……そうすると……



 「なにを馬鹿なことしてるんですかっ!!!」(サリタ)

 「そんな破廉恥な恰好かっこうっ! 恥ずかしくてできませんっ!!」(ビアンカ)

 「人前でそんな恰好して平気なのはラミアさんぐらいですよっ!!!」(アデレ-ナ)

 「それに、そんな恰好で真夏の海に行って塩水に浸かって日焼けしたらとんでもないことになりますよっ!!!」(セレスティナ)

四人から猛烈な抗議を受けてしまうが……ただ一人、海を全く知らないカリナだけは戸惑っていた……


 「その……水着って……下着とどう違うのでしょうか……」

カリナがポツリと言った……そうすると、ラミアの目が鋭く光る


 「それはっ! 水に濡れてもが透けないっ!!!」

サンプルのビキニの水着姿で胸を張って堂々とした態度で言った……そんなラミアをボンクラ五人衆は唖然と見ているのだった……そして、その視線は更に冷たさを増し……


 「こんな、馬鹿は放っておいて私達だけで楽しみましょう……」

アデレ-ナがあきれたかのように言うと他の四人もラミアを見放した……

あれこれと楽しそうに話をする五人から孤立してしまいボッチになったラミアは……


 「ひどいよっ! みんな酷いよっ!! 私をけ者にするんだよっ!!!」

ラミアをそう言いながら涙を流し私にすり寄ってくる……そんなラミアに


 「仕方がないよ……風習や文化が違うんだから……」

 「マリン・リゾートは私とラミアだけで楽しみましょう」

そう言うとラミアはコクリと頷くのであった



 そして、ラミア以上にその存在すら忘れ去られそうなほどのボッチがいた……それは……ポチだった……


「クォ~ン」

今やポチ小屋となったアデレ-ナの小屋の外で夜空に向かっての遠吠えもむなしく……

楽しそうな五人の話し声、すすり泣くラミアの声にき消され私の耳に届く事は無かった……


 皆が部屋に戻り屋敷は寝静まる……珍しくアデレ-ナも大人おとなしく眠りにつく……ラミアも傷心のうちに水着を着たままで眠ってしまった

 (なんやかんやで結局、三人部屋になってしまった……その方が私の身のためにもいい……)


 静かに寝息を立てるアデレ-ナの顔を見ていると本当に"生体兵器"なのかと疑ってしまう……アデレ-ナの頬にそっと手を当てると少し微笑みながらすこやかな表情で何か寝言を言っているのがわかる

 「むにゃむにゃ……」

 「だめですよっ……そんな所触っちゃ……もう……」

 「エレ-ヌさんて本当にエッチなんだから……エヘエヘ……」


"……前々から気になっていたんだが……こいつは……どんな夢見ているんだ……"

"人の夢をのぞき見るのはゲスの極みな事なのだが……どうもわたしの事のようだ……" 

 そっと寝ているアデレ-ナの額に自分の額を当てるとボンヤリとアデレ-ナの夢が垣間見える……


 "うっ!……垣間見えたものは口にするのもおぞましい欲望と肉欲にまみれたお下劣げれつ極まりないものだった"

 私は慌ててアデレ-ナから離れるとすこやかなアデレ-ナの表情が急に中年オヤジのスケベ笑いに見えてくる……


 私は自分のベッドに潜り込むとアデレ-ナのデカい乳の先っぽに迷わず弱い電撃を加え寝たふりをする……


 「ぎへっ!!!」

アデレ-ナは一瞬飛び起き……寝ぼけ眼で辺りを見回すと……

 「あれぇ~夢~なのぉ~」

 「凄くリアルだったなぁ~」

 「でも……いいわぁ~続き続き……」

そう言うとまた眠ってしまうのであった……

 

 かくして、夜は更け……海への出発の日の朝がやってくるのであった……



 第二十八話 ~ 終わり ~















 














 





 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

~ 目覚めたら石棺の中 ~    ひまじん @sanpin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ