お茶漬け食べて転生ーしょんっ!!

雪白紅葉

お茶漬けの話

『――には、お茶漬けがある』

「お茶漬けか。暫く食ってないな」


 テレビCMで流れた某人気アニメキャラのコラボレーションCM。最近見てなかったが日本的な場所を舞台にしているらしく、その国で和服の主人公がお茶漬けを食べていた。

 お茶漬けなんてここ数年食ってないな。スーパーまで買いに行くか。


 スーパーにやって来た。

 地味に種類があるが、やはりここは鮭茶漬けにしよう。おっ、なんかコラボでカード的なおまけがついているのか。パッケージを見ると鮭増量って書いてあった。そりゃ良い。俺は焼き魚の鮭は食わないが、お茶漬けの鮭は好きである。

  

 早速帰ってきた。お茶っ葉はこの前買った千円のがある。台風の影響もあるのか葉っぱがクズっぽいのが残念だが、粉っぽくなってる以外はまあ飲めるのでそんなに問題は無い。

 お湯を沸かして袋を切って、ご飯に茶漬けの素をかける。

 作り方にはお湯をとあるが、お湯だけだとなんか味薄くね。ってわけで、お茶を上からじゃばばのばっと。


「いただきます」


 ふぅ、久しぶりに食うな。別にお茶漬け食わなくても死なないからな。納豆も食ってねえな。元々食えないけど。

 鮭は確かに前見た時よりふっくらしている。ぱくり、うむ。美味い。


「――はっ」


 気付いたら白い場所にいた。

 あれ、俺今お茶漬け食ってなかった?


「お主は死んだ」

「唐突に誰やねん」


 声はするけど姿はない。相も変わらず真っ白世界。そもそも俺は目を開いているのか? 自分の体も視界に入らん。

 だけどもどっこい俺知ってる。これ異世界転生ってヤツ!!


「ズバリ、この声は神様ですね!」

「そうじゃ」


 正解は!


「お主がお茶漬けの素と一緒に買った餅、メーカーそこじゃ無かったぞい」

「何だって……」

「それはさておき、お主は死んだ」

「これまたビックリ。いや知ってたけど、何で俺死んだん。心不全?」

「アナフィラキシーショックじゃ」

「何……俺大豆食ってないぞ!?」


 俺は大豆アレルギーだ。納豆食えないと言ったのは好き嫌いじゃなくて大豆アレルギーだからだ。

 アレルギーには細心の注意を図っていた。まさか別のアレルギーがあったのか……!? それを知らずの内に口に……。


「知らずの内にと言うのは正解じゃの」

「やっぱり! 俺って何アレルギーがあったんですか!」

「大豆アレルギーじゃ」

「知ってます!」

「よう見てみんしゃい」

「ん……?」


 目の前――自分の目がどこにあるかは分からないが――に差し出されたのは俺が買って来たお茶漬けのパッケージだ。

 中央の商品名横には鮭増量とでかでかと書いてある。


「いや、お茶漬けに大豆は使われていないはずですけど……そもそもこのメーカーの今まで食ってて問題起きた事も無いですし」

「それはお主が何年も食べていなかったからじゃ。横を見てみろ」

「横……? はっ!?」


 そこには大豆の力で鮭が大きくと書いてあった。大豆の力でどうやってでかくなんの!?


「そして左下じゃ」

「大豆アレルギー追加だって!?」


 大豆アレルギーが追加されました、って書いてあるじゃねえか! ちゃんと読んどけよ俺!

 てかなんでうわ知らんかったわぁちゃんと確認するんだった……慢心してたわ……。


「去年追加されたんじゃよ」

「知らんかったわ……」

「さて、お主はこれより生まれ変わる事となる」

「異世界転生ですね!」

「違うが?」

「ほへ」

「まあどうせ忘れるんじゃ。脳細胞は別のものだしの」

「何……ま、待っ!」

「次はアレルギーの無い人間に生まれるから安心しての~」

「待ってええ!」


 異世界転生だと思ったのに! アレルギー無いのは正直助かる納豆食おう。

 

「おぎゃあ」

「元気な男の子です」


 おぎゃあ!! 



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