008 黒猫との出会い ~08~
その声は耳元で
どうなりたい……?
その問いの答えを考えようとすると、すかさず問われる。
何を正義とし、何を悪とする……?
貴方にとって意味がある事とは……?
聴こえてくる問いに涼雅は頭に手を当てた。
「なにこれ、頭の中気持ち悪い」
「ウガッチ、今はとにかく集中して」
カイは涼雅に集中を促す。そのやり取りの中でさえ、涼雅の頭には次々と問いが行われた。
大事な人って誰……?
いつからキミはキミであることを自覚したの……?
魔法をどう考える……?
涼雅は問いに答える事が出来ず、集中が途切れないことに意識をし続けた。繰り返される問いが行われる中、一際大きい声がした。
キミが望むものってなに……?
それが聞こえた瞬間、涼雅の中で何かが開いた様な、目覚めた様な感覚を得た。
「終わったみたいだね」
「これは……、一体何だったの?」
涼雅は問いから解放され、手を後ろにつき、楽な姿勢をとった。
「今のは魔の起動っていうもので、簡単に言うと自分専用の魔法を覚えるための儀式みたいなものだよ」
「頭にたくさん声が聞こえてきたから、何かと思ったよ。自分専用の魔法ってどういうこと?」
「今まではオレッチら獅子種の魔法使ってた、というか、借りてたに近いんだけど、ウガッチが獅子種の魔法を使うのは色々と厄介なんだ。オレッチも魔力が足らなくなりそうだし」
「そんな影響受けてたんだね。魔力って使い過ぎるとどうなるの?」
「んー。多分死ぬと思う」
涼雅の軽い質問にカイは軽く重い内容を伝えた。それを聞いた涼雅の表情が曇る。
「それ大分危なかったんじゃないの?」
「まぁまぁ、魔力は使い過ぎると死ぬより先に気を失うから、よっぽどの事がない限り大丈夫さ」
「そうなんだ。これからはライオンハンドは使わないようにするよ」
少し元気を無くした涼雅を元気付ける様に声を上げた。
「さぁ!これからウガッチ専用の魔法を見せてもらうぞ!さっき、頭の中に何か魔法みたいな名前言われなかった?」
「さっきのたくさん言われたやつかー。えーと、」
思い出すために涼雅はこめかみに指を当て、思い出し始めた。
「確か、グラリアって断片的に聞こえた様な……」
「じゃあ早速、使ってみよう!ウガッチも魔力使い過ぎる死ぬから気を付けてね!」
「そんな簡単に言わないでよ。とりあえず、やってみるね」
涼雅は少し歩き、3メートル程の先にある木に手をかざした。
「グラリア!」
ライオンハンドと同じ様に集中してから、魔法を唱えた。すると涼雅の手の平からバスケットボールくらいの大きさの灰色に光る弾が発射された。
「これは、光線になるのかな?いや、もしかしたら……」
カイは考えを口にし、涼雅の魔法を見続けた。そして、発射された弾は木に衝突した。涼雅は木に何かしらの影響があると考えて体を強ばらせた。が、木は何も影響を受けていなかった。弾が外れたのではないかと思う程に何も起きなかった。
「これは、何の魔法なんだ?」
「んー。もしかしたら突き抜けてるんじゃないかな?」
カイの言葉を確かめるために涼雅は木の後ろに回ったが、一貫として魔法が当たった様なところは見られなかった。
「もしかして、意味無い魔法だったりする?」
「そ、そんな魔法なんてある訳……、うわっ」
涼雅とカイが考え込んでいると、強い突風が吹いた。
「すごい風だったね。」
「ほんとほんと。」
突風が吹いたことで涼雅とカイは反射的に目を覆った。すると、弾を当てた木から、風が巻き起こり、小枝がその影響でパラパラと落ちた。
「今のは?」
「これってまさか……」
カイが何か言おうとした時、二人の背後から近づいてくる気配に気づいた。
パラレルミックス 岩下けん @iwashita-ken
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