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すると、部屋の中にうるさくもなく、小さくもない、ちょうどいいくらいの音量の音で、そのクラシック音楽の音が流れ始めた。
その音を聞いてサンはとても驚いた。
音がすごくクリアで、(まるで、本物のオーケストラをオペラの劇場で聞いているみたいだった)それはサンが予想していた以上に、サンの耳と心を感動させた。(お、なかなかやるな、とサンは思った)
「綺麗な音だね。すごくいいスピーカーでも使っているの?」にっこりと笑って、サンはルナに聞く。
ルナが音楽に興味がある、……と言うことはないとは思うけど、(ルナは音楽とかスポーツとか、読書とかゲームとか、そういうものに興味がほとんどなかった。あるのは自分の研究だけだった)でも、これだけ音楽が綺麗だと、もしかしたら私に隠していただけで、実はそうなのかも? とちょっと本気で思ってしまうくらいに、その音楽は素敵だった。
「研究所の設備が最新だからね。こういう余計なところにも、結構、資金を贅沢に使っているのかもしれない。こういう、生活スペースのような、細かいところまですべて私が管理をしているわけじゃないし。詳しいことはわからないけど。あとは、空気が綺麗だからかな? 人工的な空間の中でずっと空気を清浄し続けているから、ここ(月面ステーション)はあんまり空気が汚れていないんだ。地球みたいにね」ルナは言う。
「空気が綺麗なんだ」なるほど、と目をつぶり、音楽にうっとりしながら、サンは思う。(あまりにも音が綺麗なんで、サンは危なく一人で踊り出しそうになってしまった。ルナが一緒に踊ってくれれば本当は最高なんだけど、きっと変な顔をされるだけだと思った)
「うん。エベレストとか、富士山とか、そう言った高い山の山頂の空気みたいにここの空気は澄んでいる。そんな透明な空気の中で、音楽を、それもすごく安心した環境の中で、聞いているからなのかも。それで綺麗に聞こえるのかもしれない。今まであんまり考えてなかったけど」ベットに腰を下ろしながら、天井を見て、ルナは言った。
それからルナはベットの横にあるボタンを押した。
「え?」すると、サンはとても驚いた。
……なんの音もなく、宇宙ステーションの中みたいだった真っ白な部屋の中の壁と天井がゆっくりとスライドするように動き始めて、床の下に収納されて、ルナの部屋からは、真っ暗でなにもない、月の風景が丸い部屋の中の全面からよく見えるようになった。(このとき、サンは本当に感激した)
「まずは、軽く食事でもしようか。乾杯でもしながらさ」サンを見て、ルナは言う。
「……うん。いいね。それがいいと思う」嬉しそうな顔で、にっこりと笑って、サンはルナにそう言った。(本当に最高だと思った)
二人の見上げる月の真っ暗な空には、青色の地球が孤独に一つだけ、ぽっかりと、なんだか不安そうに浮かんでいた。
眠れる楽園 雨世界 @amesekai
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