第19話 称賛の嵐

 

「今日発売の週刊Rabbitが、次の総理大臣候補である佐川大臣の不倫をスクープしました。気になるお相手ですが、清純派女優として今売り出し中の、大崎りりのさんです。」


 その日のワイドショー番組が、佐川と大崎りりのの不倫を大々的に報道していた。

どのワイドショー番組を観てもトップニュースは全て、佐川大臣一色だった。


 さらにその日、佐川大臣は国会前で不倫とは関係のない定例会議の報告会見を行う予定だった。

しかし、定例会議の内容会見より世間は、今回の不倫報道について佐川がどう語るかの方に注目している。

国会前には、報道陣がたくさん集まっている姿が夕方ニュースに映っていた。



 「時任!よくやった!」


 手を出し握手を求めてきた冴島デスクに、俺は手を伸ばした。


 「一週間発売を逃してでも、今回のスクープは大きかった。世間的にも、今回の不倫は特に注目を集めている。なんせ、次の総理候補だったからな。不倫が暴かれ、国民も佐川が総理になるのを認めないだろう。」


 世間が許しはしないでしょうね、俺は本誌を手に取った。


 「それに、不倫でわかった事がもう一つあります。政府活動費を横領していたと明らかになりました。出張費と偽り、大崎りりのと旅行していたんですから。不倫だけではなく、横領の罪も出てきました。もう政界復帰は難しいでしょう。」


 素晴らしい、と冴島デスクはまた握手を求めてきた。


 うちのエースが通るぞ、とフロア全体に響き渡るくらいの声で叫んだ。


 「時任さん、すごい反響ですよ。」


 後輩の、花倉がネット画面を見せてきた。誰でも書ける閲覧サイトだった。


 『また、週刊Rabbit⁉︎年始から凄すぎ!』

 『おい、他の週刊誌、Rabbitを見習え!』


週刊Rabbitの称賛の声が多い。


 「これは、またハードルが上がったな。」


ですね、と花倉は俺に笑った。


 「私も、時任さんみたいに早く認められたい!」

 

花倉は、昨年入ってきた新人だった。

やる気はあるがそれが下手に空回りしてしまう性格だった。

頑張れ、と俺は花倉の肩を叩いた。


次総理候補の不倫には、負けるかも知れないが、俺にはもう一つ密かに追っているネタがあった。

今をときめくアイドルグループだ。


だか、憶測だけで記事にしては、週刊Rabbitは必ず反感を買うだろう。

この手のアイドルのファンは、怖いからな。



俺は、原稿を開き“SOLEIL”と記入した。

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SOLEIL 紫苑れんな @ren_shion

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