第2話 母


マキが死んだ。私にとって朗報とも言える訃報が耳に飛び込んで来たのは12月24日のクリスマスイブだった。私はサンタクロースの贈り物かと柄にもないことを自室のベッドの上で考える。自然に上がる広角。マキの訃報が記されている暗めの画面に映る自分の顔がどれだけ嬉しいのかを物語っている。

「ふふっ」久し振りの高揚感に思わず声が出る。なんなら神経という神経が喜びに満ち溢れて手足をばたつかせる。朝取り替えたばかりのシーツが私を中心に弛んでいく。酸素カプセルに入っているかのように脳に空気が満たされていく。

しかし無意識に流れる涙。意味不明な涙は私がお気に入りの柔軟剤の香りを纏った枕を濡らして行く。

この光景を第三者が見たものならば迷わず精神科、または警察へと連れていかれるだろう。


-何故なら私はマキの実の母親なのだから-

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豚は空を見上げられない えびこカニ子 @ebityan531

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