第6話 王
日が百以上回り日本なら半年程の時を灰色の都で待っていたが同胞が迎えに来ることは無かった。
活動途中みたいな場所から始まったからてっきり何かの不都合でこのからだに入り込んでしまったタイプだと思って迎えを待っていたが、誰も来ないことを考えると新しい身体を得たタイプなのだろうか...?
住めば都とは言ったもので最初は造形も色使いも何もかも気に入らなかったこの都だが、住むうちに造形も変わってきて最近ではかなり気に入っている。
それにこの都市に入るときに使った魔法で産み出された枯れ木達がこの都市に住み着いたのかあちこち歩き回っているから見ていて少し楽しい。
ただ問題は時々人間達がここに攻め込んでくることだけが不満である。
確かに人間が勝手に攻めてくるのは食事もできて一石二鳥だが、別に最初にたくさん食べたからまだ当分はなにも食べなくていい。
というか多分この身体は生きていくだけなら多分なにも消耗していない。
まあそれも最近は枯れ木達が勝手に追い払ってくれてるからたいした問題ではない。
今はこの手元の洋書からなにか情報が手に入らないか解読を試みているが学者でも何でもないので一向に進まない。
このレベルの都市なら学者もいただろうからその人たちにやらせた方が...その人たちの言語もわからないか。
そもそも意志疎通ができない。
都市の方から枯れ木達が戦う音が聞こえてくる。
また人間達が来たのだろう。
最近は食事どころか見に行くこともすくなくなってきているが今日は煮詰まった頭を冷ますために見に行くことにした。
戦況は拮抗していた。
今までの人間達の数に任せた戦法は枯れ木達との相性が頗る悪い。
雑兵を倒せば倒すほど枯れ木達は奪った生気で数と力を増やすのだから数で攻めてくる人間たちは毎回最初だけで直ぐに勢いがなくなっていく。
勿論雑兵だけではなく、そこそこ力を持った人間も出てくるが、それはこっちの数で圧殺できるのだ。
だからこっちに勝つには圧倒的強者による生気を奪う暇のない瞬殺や遠距離から全て破壊するなどの方法しか思い付かない。
だから拮抗することはまずない。
だからこそこの戦いには興味が出た。
まず枯れ木達はいつも通りどこかで学んだのか本能かわからないが都市中に張り巡らせた枝で触れたものから生気を奪い取る。
そうするだけで雑兵は次第に武器を振るう力を失い、歩く力を失い、生きる力を失う。
その後に生き残った精鋭に集団で枝を伸ばして刺したり、縛り付けて殺す。
だが今回の敵は都市に張り巡らせた枝が生気を奪っている事に気づくと、先頭に立つ女が炎で周囲を焼き尽くした。
枝で枯れ木とはいえ彼らは意外と燃えにくく、それを燃やすのは簡単なことではない。
実際枝は燃えたが本体達は燃えずに生き残っていた。
だが枯れ木達は必勝の戦法はまだ残っている。
彼らは攻撃すればするほど生気を奪い力を増すのだ。
元々戦えば戦うほど疲労する人間相手には強力に効く力の筈が今回の敵たちは(というかほぼ先頭に立っていた女なのだが)、疲労を欠片も見せずに次々と枯れ木を屠っていく。
その戦いは何時間も続ているのに未だに決着は着いていない。
消耗戦なのだ。
彼らはどうやら疲労しない、もしくは疲労に対しての耐性を持っている。
だが生気を奪われば力は失う、傷をつけられれば血を失う、戦い付ければ武器は消耗し失う。
だが彼らの倒す速度は生気を奪い枯れ木達が仲間を増やすよりも速いから徐々に減っている。
だが減っているのはどちらも同じ。
だがこのままなら削りきられるのは枯れ木達だろう。
案外この枯れ木達のことを気に入っている。
露払いをしてくれるところとか、目が合うとお辞儀してくるところとか意外と愛嬌があって好きなのだ。
だから手を貸してあげることにした。
パンダルー・ロア~転生したら心も体も悪魔でした~ よりとも @yoritomob59
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