そして現在に至る。




時計は、午前6時28分を指している。

布団から起き上がる気力が一向に湧いて来ない。このまま二度寝をしてしまおうか…いいや、でも…。


このお布団という最強武具を手放してしまえば、寒さという悪魔が攻撃してくるに違いない。なんせ、お布団なしの私はあまりにも無防備。到底寒さに打ち勝てるはずがないのだ。一発であの世に葬られる事となろう。








「仕方ない。私の命がかかっているのだから学校も許してくれるだろう」






誰となく言い訳を済まして、二度寝ともいう安全地帯に意識を手放そうとしたとき、







「寝んな。起きろ。」






邪魔をしてくる奴がいた。



ドタドタとうるさく私の布団に近づいてくる足音。

誰かはわかりきっていた。






「どこぞの魔王ですか?私の領土に足を踏み入れないでください。」



「なんだ、寝ぼけてんのか?」




あきれた声を聞いた瞬間、私のお布団は否が応もなく取り上げられた。







「ああああああああああ!!!!寒い!なんて仕打ち!私が何をしたというの!!」







異世界転生したら言ってみたい言葉ワースト16くらいにランクインしてそうな言葉をありったけの声量で叫んでやった。




私から布団を没収した奴は、毎朝私を起こしに来ては、なぜか朝食もうちで食ってく近所に住んでいる幼馴染の成瀬 蒼だ。彼はここら辺じゃ有名な不良で、喧嘩を売るのが趣味な野蛮人であるがそんな彼の容姿は、主張の激しいピアスを着けた金髪長身美少年だった。解せぬ。





朝から美しいのベクトル振り切ってる異次元の顔を直視してしまったせいで、心底気分を害した私はムスッとするも、当の本人はその事に気づいていない。






「朝から元気がいいな。早く飯食って学校行こうぜ。」






いきなりその顔に似合わない力強さで襟首を掴まれると、一階のリビングまで強制的に下ろされた。








リビングには、香ばしい焼けたパンの匂いが立ち込めていた。次いで、卵、ハム、ソーセージの匂いまでするときた。







ぐうぅ






たまらず鳴り出すお腹は、とどまる事を知らなかった。


未だに襟首を掴んでいる奴の手を振り払うと、急いで食卓に着いた。






席に座ると、台所に母の姿を見る。







「早く食べないと、冷めんぞ」






いつの間にか背後に迫っていた蒼にハッとして、母の事を頭から追いやり、一緒に朝食につく。







食べ終わって学校の準備を始めた。

私が動き始めたのを確認した蒼は、ソファにもたれかかってテレビを見始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

汚い奴ら 福会長 @hukukaityou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ