青空に溶けて、そして君はいなくなる。

みちる

プロローグ

夏生まれ、向日葵が咲いていた。だから私の名前は夏葵なのだと、遠い昔、母は教えてくれた。


向日葵は、お天道様の方を向くの。貴女にはね、輝かしい場所で生きて欲しいの。


母は夢見がちな、少女のような人だった。柔らかい春の日差しの中に包まれて何不自由なく生活してきた、所謂「お嬢様」だったのだと今ならわかる。

柔らかいレースが印象的な、淡い、ピンク色の服。大きなリボンのついたカチューシャ。可愛らしい茶色のバッグ、同じ色のお淑やかな革靴。

母が私に買い与える物は、幾つ歳を重ねようとメルヘンチックで。私に自我が芽生えなければ、今頃はイタイ女子高生になっていただろうと思う。

一人娘に過度な期待をかけて、女の子らしく慎ましく、陽の当たる場所で生きて欲しいと母は願っていたらしい。が、私は母が望む「女の子」にはなれなかった。

中学三年生の時、私は母のお人形であることをやめた。制服以外のスカートなんて、もう何年履いていないだろう。

高校二年生、夏。

向日葵の揺れる校庭で、私は一人の少年と出会う。

少年の名前は、沢村 春文。

夏に溶けて消えた、私の初恋の人。



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青空に溶けて、そして君はいなくなる。 みちる @mitiru_tear

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