第3話 優しいひと
授業をしめて、教授が教室を足早に退室していく。
ぐったりと疲れた気分。
休み時間がはじまるなり、アーカムはスタスタと教室を出て行ってしまう。
残される俺とパラダイム。
話は聞こえていただろうに、
「いいや、面倒ごとに巻き込まれたくないアーカムのだな、うむ」
「あぁ、その、なんだ、ガーリィ。飯でも食べにいくか?」
たじたじのパラダイムに促され、昼休みでごったがえす食堂へとおりる。
適当なランチメニューを頼み、広大なカフェテリアの一角に腰をおろせば、また気まずい時間の始まりだ。
「えー、おほんおほん、んっん」
「ん?」
皿をつついているかたわら、とりあえずこっち向けよ、とばかりに喧しい咳払いが聞こえてくる。
首を傾ければ、おや、見覚えのある顔だ。
「いつぞやの小柄な女生徒ではないか」
「その覚えかたひどいと思うんだけど、まぁいいや。焦ってて名前告げ忘れちゃったもん」
「君の名前など、微塵も興味がないのだがね。勝手に名乗られてもこまーー」
「わたしの名前はテラ、テラ・ツールです。よろしくなのだよ、ガリレオ・グレゴリックくん」
チッ、勝手に名乗りおるからに。
首をふり、対面の座席をみやると、まこと嬉しそうな顔をしてニヤつくパラダイムの顔がうつった。
「待て、なんだその顔」
「へへ、いや何でもないさ♪ 俺がいちゃ邪魔だよな!」
「……へ?」
7割型皿の中身が残っているというのに、笑顔で配膳をさげていくパラダイムは、透かした顔でガッツポーズをおくって、さっさとどこかへ行ってしまう。
いらない気遣いを。
ーーカチッ
時間にはまだまだ余裕がある。
「だが、そうだな、次の時間は霊薬調合にかんする物だったから、早めに教室に移動したほうがいいだろうな、うん、そうしよう」
「またそうやって行こうと……ああ、ちょっとちょっと、待ってよ、もう少し、あと5分くらいお話ししない!?」
謎に引き止めてくる女生徒。
ええい、なんで俺に構ってくるんだ、このちっこいのは。
「テラ、とか言ったか。なんで俺に構うのだ? この俺が学年で最も優れた学術系スーパーエリート魔術師だからか?」
「……はぁ、わたしは構わないけど、やっぱりガリレオくんに友達が少ないのは、ガリレオくん自身に問題があると思うんだよね」
「ッ! な、なんだ、いきなり。この俺のことをディスり始めるからに!」
なんだ、なんだ、コイツは。
俺のことを虐めに来たのか?
もしや、今朝の醜態のせいで目をつけられた!?
まずい、俺は時間の非効率な利用と、不毛な争いが大嫌いなんだ。
「なぁ、テラ・ツール。俺たちは会わなかったことにしないか。君の加虐心を刺激したのなら、謝ろう。だから、ほら俺も本気だしらそれなりに戦える魔術師だし、そういうのは良くないと思うのだよ」
「ん? ああ、そうなるの事もあるのかぁ……いや、これは失敗だね。でも、安心してね、ガリレオくんを虐めような思ってないもん。いや、むしろわたしだけがガリレオ・グレゴリックを虐めから守れるっていうか……ね?」
「なにが『ね?』だ。本当にそろそろ行かせてくれないか?」
「わかった、もう行っていいよ」
今度はやけにあっさりしている。
一体どういうことだろうか。
ため息ひとつ、テーブルのうえを片付け、自身の配膳のうえにまとめて、席を立つ。
「あっ、ガリレオくん」
去ろうとするなり、背後からまたテラの声が聞こえた。
「ガリレオくんは、優しい人だよ」
「……は?」
「それ」
テラノ指差す、俺の手にもつ配膳のうえにを確認。
「ほら、わたしのお皿も片付けてくれてる」
「ん、言われてみれば無意識に乗せてしまったか……というか、それだけか。こんなんで人が計れるなら世の中の苦労はなくなると言うものだ。気にするな」
俺はそう言い、食堂をあとにした。
「まったく、配膳をついでに片付けたくらいで……」
そうは思ったが、『優しい人』などと直接に言われるのは、存外に悪くない気分なのであった。
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書く気力がなくなってしまいましたので、ここで完結です。
【未完結】魔術大学では5回目くらいで成就します! ファンタスティック小説家 @ytki0920
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