第6話 天使の卒業式 7
「じゃあ、さよならだね、リキエル」
「あなたこそ、そうね。まあ末永く健康に生きていけばいいんじゃないかな」
「そうだね」
「太一と、振り返ったときに幸せだったと思える日々を過ごしてほしい。私はそう思ってるよ」
「ありがとう」
「だから、じゃあね、そよぎ」
その会話を私は惜しく思った。ただ、時間は残酷にも過ぎる。私が好きな二人は、なぜだろうか、私がこの存在になってからでは一番に短い付き合いの二人だった。繰り返すことを選ばなかったから。
それは、偶然なのかもしれないし、置かれていた状況からの必然だったのかもしれない。私と深いかかわりのある者たちだったからかもしれない。あるいは、そういう強い意志を持った二人だから私が好きになれたのだろうか。
彼らを見届けたい、そのために天使になることを選んでしまった。彼女の言っていた『呪い』が、まさに自分に帰ってきて、私に残された時間の長さに、少しめまいがする。
ただ、もう私が六花だったころの物語は、これで終幕にするべきだと、やっと思えた。
ただ、まだしばらくは、リキエルとして存在してみるのも悪くない。この街から離れてみるのもいいだろう。
自分のルーツから、卒業をする。これからの私も私だけれど、これで、橘六花としての私とはさよならをしよう。
彼女からもらった卒業証書をしまって、私は姿を消した。
天使といた1日 浮立 つばめ @furyu_hatsubaki
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