全体的に、無理のない展開になっていると思います。
一矢報いる為に猟師の名を借りているとも思えるクレフさん。
私の好みの綺麗でいて悩める女司祭、シャルさん。
そして、謎の少女ミラさん。
この三人が主軸となっております。
物語のテーマは何だろうかと思わざるも、『因果』と言うキーワードがはっきりと打ち出されていて、分かり易いです。
結局は、その『因果』という名の『縁(えにし)』に、それぞれの思う所があったようです。
剣よりも魔法の面で語られている点は、神聖な感じと魔的な感じが表れていて、とてもいいと思いました。
敵は、魔のモノと一瞬は思いますから。
『因果』であっても、妬み、嫉みと言っただけもものではなく、作中、街をも動かし、宗教をも考えさせられました。
『親子』、『友人』、そのキーワードも散見して、バランスがいいと思います。
人などの名前の持つ意味も成程と思いました。
描写は、動きが程よく、会話文も挟んで、文体としても読み易いと思います。
キャラクターの話で言いますと、作者様の『東の国の呪術師たち―纏繞の人々―』の萌花さんの次に、本作のシャルさんが好きです。
最初に居たシーンにシャルさんが、ほぼ終わる頃に戻るとき、わくわくしました。
一番目立っていたのは、ミラさんかなとも思うのですが。
ラスト、微笑ましく終わって、気分は、ほかほかです。
よい物語をありがとうございます。
是非、ご一読ください。
因果応報という言葉がある。
けれど、因果がもたらすのは、何も報いだけじゃない。
過去に囚われ続けれる者は、前も足元も上手く見ることができなくなり、進む道を見失ってしまう。
この物語は、奇妙な縁で知り合った三人が旅の道連れとなり、行き着いた先でそれぞれの因果と向き合い乗り越える、人間ドラマメインのファンタジー作品です。
精緻な筆致で描き出される世界観は、恐ろしい戦争の爪痕や教会内の宗派の対立など、ダークな雰囲気をたたえています。
ストーリー自体は、とある目的地に向かって旅をするというシンプルなものですが、登場人物それぞれの過去や心の瑕疵が絶妙に絡んできて、展開に奥行きと深みを生んでいます。
一人では見つけられない道であっても、二人なら、三人なら、因果を断ち切って前へ進むための灯火たる炎を得られるかもしれない。
これまであった心の闇が綺麗に晴れ、温かな気持ちが残る、素晴らしい読後感のラストでした。