初恋の人
雨世界
1 君のことが大好きです。
初恋の人
プロローグ
君のことが大好きです。
本編
あなたは私の初恋の人だった。
春の駅
僕が君と再会したのは、本当に偶然だった。
僕たちは小学校、中学校の同じ教室の同級生で、高校で別々の教室に別れ、そして大学は別々の大学に入学して、そこで完全に一度、『お別れをした』、関係だった。
それから二年後のある日、僕たちは東京の駅で偶然に出会った。
僕たちは本当に驚いた。
二人ともきょとんとした表情をして、その目を丸くしていた。
「久しぶり」僕は言った。
「……うん。久しぶり」ちょっと照れたような顔で君は言った。
「今、なにしているの?」
「普通の大学生。君は?」
「まあ、同じ。普通の大学生やってる」にっこりと笑って君は言った。
僕はそれから、言葉に詰まった。
君になにを言っていいのか、よくわからなくなってしまったのだ。君は黙って、僕の言葉を待ってくれているようだった。
でも、僕は結局、君になにも言えなかった。
高校生のときの、卒業式の日と同じように、僕は「それじゃあ」と言って、笑顔で君の前からいなくなろうとした。
「待って」
と君は言った。
「え?」僕は君のほうを振り向いて言った。
「あのさ、久しぶりに会ったんだしさ、もし時間あるなら、少しどこかを一緒に歩かない?」
にっこりと笑って君は言った。
「うん。わかった」
君を見て、僕は言った。
それから僕たちは、君が言ったように、春の駅の周辺を少しだけ歩いて、美しく咲く桜を見て、それから近くにあった喫茶店に入って、そこで二人で温かいコーヒーを飲んだ。
「実は、君のことがずっと前から好きでした」
その喫茶店を出て、桜の咲く、たくさんの桜の花びらの舞う、(その桜の花びらの舞う風景の中に、僕と君はいた。僕が君に恋をした、私があなたのことを好きになった、あの日と同じように)春の駅の前でお別れをするときに、僕は君にそういった。
君はとても驚いた顔をしたあとで、「……嬉しい。私も、ずっとあなたのことが大好きでした」とちょっとだけ泣きながら、そう言ってくれた。
それから、僕たちは恋人同士になった。
……そして、それから大学を卒業するのとほとんど同時に、僕たちは結婚をした。
結婚式の日。
僕たちは誓いのキスをした。
僕は君にキスをして、君は僕のキスを受けいれてくれた。
「ずっと、君のことが大好きでした」
僕は真っ白なウェディングドレス姿の君にそう言った。
「あなたと、ずっと一緒にいたかった」
泣きながら、君は僕にそう言った。
初恋の人 終わり
初恋の人 雨世界 @amesekai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます