高嶺の花の女子生徒である坂佐井さんと、その隣の席の男子仮沢くんのお話。
かなり極端な個性を持った天才系ヒロインと、少なくとも当人の主観では「自分は平凡である」と認識している視点保持者の少年。古き良き学園ものドタバタラブコメの系譜、なんて、いやなんか知った風なこと言いましたけどでも個人的にはそのつもりで読んだというか、とにかくラブ成分がしっかりコメコメしているところがよかったです。
特筆すべきはやっぱりキャラクターの個性、特に坂佐井兄妹のそれが強烈でした。
話を振り回すも進めるも自由自在、強烈な人物造形のインパクトで引っ張りながら、でも決してそれだけでは終わらない物語性。軸となる恋愛の部分をしっかり描き切って、そしてその上でのエピローグの余韻。このバランスというか力の配分のようなものが、本当に綺麗でもう惚れ惚れしました。
約一万字の短篇というフォーマットに、きっちり狙いを合わせたアプローチの仕方。仕上がりの美しさにうっとりさせられる作品でした。