第8話 魔人種

 かに思えた。が極光に輝く魔力の槍が上昇して来る。ムスペルスヘイムで焼かれながらもそれは原型を保ち最上階まで上昇して来る。

風分霊エアリアル!」

 咄嗟に風霊結晶を掲げて叫ぶ。

 風霊結晶に魔力を吸い取られると結晶から緑の光とともに風が吹き荒れる。

「防壁だ!最大出力」

「了解なの!」

 可愛らしい声とともに結晶か掌大の小さな女の子が現れる。彼女がその小さな手を翳すだけで嵐とでも言うべき障壁が爆誕する。

「スピリア サード」

 声に呼応し二つの銃が手に収まる。一回転させて靴を3次元戦闘用に変化させる。

「エアリアル彼女らを守れ」

「はいなの」

 思考を変えエアリアルの風の壁を足場にして一気に降りる。槍はエアリアルがなんとかするだろう。だから全能力を一点に集中させる。能力値ステータスの限界を階位レベルの限界を疑似的に超える超絶の裏技スキル【階位操作レベルコントロール】を使う。四肢と頭の力をコントロールして右脚の階位を16まで底上げする。階位操作にはその強力無慈悲な能力だがそれ相応の制約がある。


一に底上げする部位以外は現階位の半分となる。

二にその階位の捧げた階位の半分が該当階位に分配される。

三にその戦闘で得られる経験値は半分以下になる。


ただこれらは肉体面への負担を考慮した結果であり6ヶ月の自然治癒を許容するなら好きなだけ階位を落としその分上昇させられる。無論、経験値も本来のものが得られる。階位操作の下位スキル【能力値操作ステータスコントロール】はデメリットがない。まあ現階位で得た能力値ステータスしか操作出来ない制約があるが。長々しいがそこまでしてでも討つべき相手であるわけである。ただ会長のムスペルスヘイムにより大分弱っている。そこに推定階位16の右脚の蹴りを重力加速度を乗せて放つ。相手の腹を蹴飛ばしアルティメアを構える。土埃の向こうから禍々しい魔力を放ち迫ってくる。ああこの感じは久し振りだ。

魔人種デモンズか。地球こっちにはいないはずだからグランディウス向こうか?」

 覚えのある気配に記憶を探る。少なくとも地球に送還される前3ヶ月からこの気配は感じとっていない。ということは少なくともデモンズとは言え雑魚というわけでもない。むしろあのマッドサイエンティストやその創造物を思わす。そう考えるとかなり不味い。なにしろあの頃は彼女がこれまで見てきた中で最高峰の神霊使いが居た。エアリアルはそんな彼女から授かった分霊。他には火分霊ブレイドラ土分霊ダムズ水分霊ディナが居る。ただ汎用性に優れ支援型なのは風分霊エアリアルだ。彼女の風は遠隔でも支援を可能とする。

 そっと目を瞑り考え動く。エアリアルが同調してくれているお陰で風が完全に味方してくれる。


剣聖スキル 武技 刺突系【ゴディススラスト】

剣系スキルで最速を誇る単発の刺突攻撃。神をも貫くとされる一撃。それが首の皮一枚で避けられる。流石に反動があるか。全身のGに体の耐久がもったなかったらしい。でも剣系スキル全刺突系共通効果で繋ぎの技となる。


「《誇れ》《穢せ》」

 2種の言霊が聖魔の力を解放する。仮にも影打ちとはいえども聖魔剣。神匠謹製だから破壊力は折り紙つき。蒼と紅の光が混ざり合う。そのまま横に薙ごうとするが長袖から短刀を出し弾かれる。物理特化パワードかよ。どちらかというと僕はトリッキーなタイプで1対1サシで近接戦闘でもかなり多くの手を使う。

「《収束コンサレイス》」

 素早く後ろに跳び3種目の言霊を解放する。2つの光が収束して紫の光となり刀身に宿る。それには相手も恐怖を抱いたのか短刀を二本構える。

「ファイヤボルト」

 セフィロトを抜こうとした瞬間にぼそりと呟かれた魔法・・が一瞬で構築され放たれる。慌ててそれを切り捨てる。というか今の声女性かよ。


魔法名のみつまりは即行魔法という代物だ。今までで戦った相手の中で5本指に入るほど使い手が少ない魔法だ。詠唱破棄の魔法との違いは展開される魔法陣の大きさに由来する。詠唱破棄された魔法陣はかなり大きくなる。これは魔法陣に本来詠唱で補う部分が加算されるためだ。


即行魔法相手にはセフィロトは使いづらいし最強の弾も階位が同等なので意味をなさない。それに最恐の魔弾も魔人種ましては物理特化には通じない。

「ライトニングボルト」

 再び彼女が即行魔法を行使する。剣で打ち消しそのまま袈裟懸けを繰り出すも短刀をX字にして防がれる。にしても2種のボルト系の即行魔法とか嫌な予感しかしない。生死不明のアイツがどちらかの世界に居るとなると辛いものがある。間違いなくエレオノーラを狙ってくるだろう。面白そうという理由で。それに魔術や科学がそこに集結されるとアイン無限光アイン・ソフ・オウルしかない。いや今は分りもしないアイツの事を考えても無駄だ。ささっとコイツを片付ける。なら手段は問わない。緋色の大剣を取り出し変則二刀流で構える。

「エンハンス・ステータス エンチャント・スピード 有効化アクティベータ 英雄殺し」

 放つは二刀による一撃。とある事情で殺さざる負えない英雄を殺めた一撃。風の加護をも乗せて届かせる。

固有術式オリジナル 零式 リッパー

 鋏のように剣を交差させ断ち切る。すると頭と体は離れる。体は消えない。魔人種上位の特徴である。下位だと死体なんか残さずに消える。ちなみにドワーフ、エルフ、獣人含む人種は死体は残す。魂が消えてなければ蘇生が可能だがそれ相応の罰則ペナルティーがある。


 一見するとそこまで時間が掛からず殺せているが魔法や分霊に固有術式など公の場では使えないものを多く使っている。それに護るべき者のそばを離れるなど護衛としては失格だ。

「気にしたら負けか。やっぱり汎用型魔導銃の開発は急務だな。そう考えると登があの提案を呑んでくれると有り難いな」

 その主目的がセフィロトの隠蔽とは言え護身用や陛下直属の軍用魔導銃も必要だろうし。それにアイツが居るのであればエレオノーラが狙われる理由も分かるかもしれない。


 学園を訪れたのも良かったと思いつつ月光眼で隠蔽して飛行魔法を行使して会長の部屋へと戻った。

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クロスワールド 髙﨑 レイ @reitakazaki

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