ぜんざい
「はい。ぜんざい。」
静かに彼女はカップを差し出す。
それは、甘い香りのする、初詣のイベントで配られていた、ぜんざいだった。
彼女はぜんざいを取りに行っていたのだ。
「辛い時には、」
「「甘いものってね。」」
「美味しいな。」
「うん。」
2人は思う。
誰かが居なくなった。
悲しい。けれど、同じ状況になっている人は、いる。
この世界には、誰かがいる。
助けてくれずとも、傍にいてくれる。
わかってくれる人がいる。
聞いてくれる人がいる。
「猫舌だったでしょ。あっつあつなの持ってきてあげたよ。」
「知ってる…もうヤケドしたからな…
流石幼馴染だな…」
「お約束ですから。」
それに、この世界は死だけではない。
誕生もあるから。
人間の世界と、大きく見ればこの世界は、輪になって廻っているのだと。
だから。
「そういや、お誕生日おめでとう。」
「うん。お誕生日おめでとう。」
前を向くしかない。
そして、
「あ。年、越してる!」
「嘘だろ?!」
新しい年を迎えて、
「じゃあ…」
「「あけましておめでとうございます。」」
「今年もよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
前に進もう。
夜空には星が瞬いていた。
2002年 1月1日 0時2分
廻 巫 廉 @Kannagi-Non
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