不条理

彼女の話を聞いて、彼女のおばあさんと自分のおじさんを重ね合わせていた。

俺はいつも、お世話になっていた。

勉強とか教えてもらっていた。

人生についてとか。

凄く、為になった。

なのに。

「死って不条理だよな。」

「…何で。」

「俺のおじさん。亡くなったんだ。」

「…そう。」

「子供が産まれる所だったんだ。だから、病院行こうとしていた。そう、俺が連絡したんだ。」

「…うん。」

「交通事故だった。飛び出した子供を救う為に。轢かれたんだ。」

「…そう。」

「子供の方は難産でな。中々産まれなかった。おじさんが死んだ時間に、子供は産まれた。」

「…そっか。」

「まるでさ、自分の命と引き換えに子供を助けたみたいだろ。自分の子供を。」

「…うん。」

あんなに楽しみにしてたのにな。

電話では、叫んで、俺の耳が壊れるかと思ったのに。

なのに。

飛び出した子を助けて。

自分は子供を見られず死ぬなんて。

「不条理…だよな。」

静寂が俺たちを包む。

少しして、隣の彼女を見れば、彼女はそこに居なかった。

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