第5話 最弱だったし、たぶん四天王

ーー『コメディとは哲学である 』4代目勇者417〜498年




我輩は聖剣の守り人をやめた。

しかし、種族【聖剣の守り人】だったことに気づいた今、聖剣を売り払った意味はなかったような気がしてきた。


ゴブリンの耳を引きちぎるのは終わった。勇者の言っていた通り死んだふりをしている奴がいたが、剣で腹を突き刺すと案の定暴れたから、頭を踏んでそのまま体重をかけて潰してきた。

オークどもはもう完全に死んでいたので、皮を剥ぎ牙を取って食べるように解体して肉を取った。


いらない部分は一箇所にまとめてオークもゴブリンも積み重ねて火の魔法で焼いておいた。


炎が燃え盛る中で、奇声をあげながら火だるまになったオークが飛び出してきたが、蹴っ飛ばして炎の中に返すともう二度は出てこなかった。


淡々と作業をするのを、豚姫(オーク)は見ていた。

この雌豚は、馬車ごと吹き飛ばした衝撃でドレスが破れ身体中を木屑で汚していた。

やっとオークらしくなったと思った。

「ヒック……オヨメニイケナイ」


何がお嫁にいけないだよ、お前の番なんて牧場にいけばいくらでもいるわ。


やっぱりオークはこうでなくては。

服を着てるオークなんてオークじゃない。



さてと。


「おい」


「ヒ、ヒィィ……ヒトゴロシ!!!」


「ハハッ、人じゃないだろ?豚殺し……いや屠殺の間違いだ」


「ナニヲ……イッテルノ……」


「魔物を倒すのは当たり前だろうが」


「ワタシタチハッ!!!!」


「黙れ。……耳障りなんぁだよ、豚が、大人しく"ぶうぶう"言ってりゃあいいんだよ」


「ユルサナイ……」

そう言って睨みつけてくる豚姫(オーク)を俺は精霊剣で背中を指し、もう一度言った。


「死にたいのか?………言え、言うんだ。

豚は豚らしく鳴け!!」


「ヒック………ドオシテ。オトウサマ、オカアサマ……ゴメンナサイ。"プリジア"ヲフミニジルコトヲオユルシ……ッギャ!?」


いつまでも何かボソボソ言っている豚に我慢ができなくなった俺は、まだ焼いていなかったオークの死体を引きずって来て目の前に放り投げた。


顔が潰され、胴体は引き裂かれ臓物がこぼれ落ちた死骸。


俺は蘇生魔法でその死骸に魂を吹き込む。


「ア……ァ………………」


体をピクリとも動かした後、声を少し漏らして、恨めしそうに泣き崩れる豚姫をみて、そのまま死んだ。



「鳴け」


鳴かない豚姫の元にまた新たな死体を引きずってくる。

鳴かなければまた仲間を不完全な状態で蘇生する予定だ。


さあ……てどうするかなーっと。お?


「ブ……ブウ……ブヒィ!ブウブウ!!ブヒ、ヒヒヒ……ッブウ」


「ハ、ハハハハハッ!こりゃあ傑作だ!」


はーすっきり、なんかモヤモヤが消えてよかった。

やっぱり常識が一番だな。


オークは人の言葉を話さない。というか基本的に魔物は喋らない。叫びはするが意味のない鳴き声だけ。

過去に………喋っていたのは、あ、そういえば魔王と、その眷属は喋っていたような?うん?どうだったかな。


魔王の癖に勇者をガン無視して、聖剣をぶっ壊すために襲撃してきた野郎はそんなにいなかったからな。

あー、もしかしてこいつ、魔王四天王とか言うやつ?

やっべえ、四天王最弱を勇者が倒す前に倒しちまったんだが……。


ああ、これは、まずいことに。


ん?いや、別にいいや。

だって俺、聖剣の守り人は辞めたじゃん。

種族は聖剣の守り人でも、職業的には元聖剣の守り人だし、今はフリーダム!ニート!フリーターッ!!!


ああ!なんて甘美な響き!



俺は自由だ!


勇者なんて知らねえ!


聖剣に甘えてんじゃねえよ、初代勇者みたいに角材で魔王倒してろ!俺に勇者を導くとかへんな役割押し付けてんじゃねえよ、ぺっ……!


イライラしてきたので、唾をオークの死骸に吐き捨てて遠くに蹴っ飛ばした。

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1000年以上前の常識しか知らない聖剣の守り人は、今の非常識で犯罪行為を積み重ねる! トウフHUIS @GRiruMguru

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