第中章 本音ノ本音に導きます

「私を諦めさせるために、みんな揃いも揃って」

聡美の提案に物わかりのいい尋歌もそうだし、別の道の魅力を教えるメイドもそうだし、悪気ない聡美はいいとして、琢磨!!!

なんなの? 時間はないことになってんの?

あの思い出は? これ以上ない小さい時からのかけがえのない時間は?

あっさり聡美に惹かれるくらい、私って女不適合者だった?

そりゃ麻雀しか頭にない人間だけど、みんな、みんなじゃないな、麻雀好きで家庭を持つ幸せな麻雀プロもいるよ。私が4人で打ちたいから、3人を誘ったことで招いたことだから、私が悪いのか。

にしてもあっさり過ぎじゃない?

生産地より消費されているこの街の日常の食べ物納豆のように、かなり粘り気のある関係性だと思ったけどなあ。

分かる。お金持ちだからじゃなくて人間性に私も惚れたから。聡美の魅力は確かにこうだからどうって言えない。

でも、私と聡美は仲良し女友達になるけど、聡美は悪くない。出会って好きになる。行動に移す、自然の流れだから。

琢磨の気持ちが分からないよ。何仙人みたいに振る舞ってさ? 問い詰めるから。

普通そっち? って思うと思わない? 聡美が悪役でさ。

「その決まりは誰が決めたんだ?」

逆玉最高サイコ野郎。

「そういう理由じゃないって俺以上に美果が理解している」

だから腹立つの!

「美果の社長業応援するし、俺なんかがお役に立つなら」

「どうでもいいそんなのっ!!!」

麻雀好きマシンでいれば良かった、こんな気持ち知らずに済んだ。

「あくまで一途に聡美だと」

「だからそうだよ」

「恋破れた私」

「聡美が現れるまで恋心を意識しなかった」

幼なじみ過ぎて、分からなかったよ。とんでもない外圧で、知ってしまった。

「じゃあ年数は関係なく、はじまりは崖霜聡美だ」

この先どんな幸せが待っていたとしても放棄したくなる。コイツのこの態度。

恋にこじれていてもしょうがない、次に向かえばいい。

「なんで諦めるの?」

あまりに日本らしくない海外の価値観を提案してくる聡美。あのね、ここは。

「常識に生きたいの? 美果ちゃんは。私自身の本音に生きたいんじゃないの? 」

それには何よりもアンタが障害なんだよ聡美。

病む病む病む、病みつきになる。病~みのおかれた状況に、ほい、ほい、ほほほほほい。

おかしくならなきゃ耐えられない。

「これはこういうもので絶対不変の真実が過去の囚われていた遺物に変わる」

「私にとってはあなたが異物よ」

言っちゃった。醜いなあ。

「救いはないのね」

こんな悲しい夏休みある? どれだけメイドさんが大事に私のことを思っても、策略にしか思えない。

人生の勝ち組が全てを刈り取っていく。人生は非情だ。

「気持ちを変えろなんて言わないし、琢磨が本気ならしょうがないけど、悪魔の騙しとしかさ。こんな都合よくさ、意識し始める歳に日本に来てさ、他国の男もこうして惑わせている悪女」

金持ちの道楽。

「だから一生恨んでもいいって」

「私の悪意も幸せに変えるつもりでしょ」

目を覚ませ、神宮寺琢磨。

「あ、分かった、なるほどさすが」

琢磨が私ではなく聡美一筋と言うとどうなるか、私一筋と言うとどうなるか、人間関係を2パターンでカチャカチャ変えた。

全部消滅するかもしれないが、そもそも琢磨に恋愛の興味は女の早熟さほどは芽生えていない。だから恋とかよりも、単純に一緒にいてぐちゃぐちゃ過去のことを言わない同じやん。

一生の未来になったら同じやん。わざわざ嫌なこと言う私切られて当然やん。知り過ぎていることをマイナスにしか生かせてないやん。

「だから、法律婚の解釈が私と美果達で違うんだよなあ」

そういうことじゃない。しかもそれって将来の話でしょ?

「未来の目標に向かって努力しないの?」

それとこれとは……琢磨がやっぱり海外に行ってほしくないと言えば、留まるの?

「琢磨の歳を基準にそれまでは離れてます。チャンスじゃん、美果ちゃんにとっては」

「狂人だ」

その期間与えても、聡美は琢磨に選ばれると思っている。

もしかして最短で行こうとしてる?

「ルールは守りますよ」

家、養い……聡美に対しては愚問だ。毎年会社員の一生分の給与を楽々稼ぐ一族に対して。しかもそれは搾取ではなく、きちんと世界の社会貢献になっている。

「より貧しい人を助ける活動へ支援はしたいけど、金銭額より仕組みが大事なのはこちらも同じで」

思想の違いから、救世主を敵認定してしまうなど悲しみの行き違いで命を落とす事態になることもある。誰かがそういう悲劇から守らないと。当面は金余りの富豪が世の中を良くする儲けなしの財団頼みになるかもしれない。

「とにかく、譲る気はないと」

「気持ちを気づかせたのは私」

聡美に言われると、ムカムカする。私達の時間に土足で入られたようで。

「最大限譲歩している、尋歌ちゃんはオッケーしてくれた」

尋歌は幼なじみじゃないじゃん。福島ノ浜側から来た子だから。

「価値観に合わないものは徹底的に排除する精神で、日本がこの先も繁栄するならいいけれど」

私的なことを大袈裟に表現しないで。

「人前に立って麻雀したいのでしょ? 好奇の目で見られるよ」

複雑化しようとしているのは聡美でしょ?

「確かに法整備や認識面、長く続いた常識が制度疲労を起こしている。私はむしろ、面倒なものを引き受けられるのはこういう家くらいしか」

「面倒? 社長しろしろと迫っておいて何?」

聡美は結局有利なフィールドに私を引っ張り出して、幼なじみの有利な部分を薄めようとしている。

「そうでもしないと」

だから聡美は悪くない。私が聡美の立場で幼なじみの人間を好きになり、男が態度を曖昧にしていたら同じ行動に出る。

問題は琢磨だ。確かに一緒にいただけで約束を交わしたわけではない。そういう感情でいたというより、子ども同士の戯れ仲間であった。

だとしても、裏切ったような。

「琢磨を悪く言われると私も傷つく」

カップル一心同体やめろ! まだ話は終わってない。

「何回聞いても変わらないし、変えたら悪いと琢磨が思っている」

でもさ。最終的には一対一になるよね?

「それはほら、早く決めて困るのは美果ちゃんでしょ?」

なんで高1の夏休みにこんな話をしているのだろう? 法律上無理なのに? 未来が来れば確実に聡美がするつもりだから。なんなら琢磨に書かせそう。だから今話している。

「カップルに幼なじみ権力で横やり入れる女にも優しいあたし」

あーもう!! しまいこめばいいんでしょ?

少なくとも、聡美はそれを望んでいる。そこに至る前に、尋歌と私に女性としての喜びが欲しいならどうぞって、何様? 金持ち様?

崖から突き落とされるような気分さすが崖霜家。

そもそも尋歌はあまり日本ではメジャーでない決断をできるのは、尋歌自身に稼ぐ能力があるから。他人の決断は否定しない。尋歌は尋歌の人生だ。

私は違うからね。違う理由分かるよね?

将来の話じゃなくて今の話。

琢磨、本気で本音で言って。寝るな。

「だからむにゃむにゃ」

むにゃるな。

「こんな優柔不断男、切り捨てないと聡美に傷がつく」

「おやおやそう責めてきますか美果ちゃん。そんなことで離れるとでも」

「こんな悪魔」

たまらず琢磨の腕をぐいっと引いた。引っ張り返された。

私ひとりガキのままで時が止まっている。

本当に、私ってバ。

メイドさんの機敏な反応で身体をがっちり捕まれた。

「私が嫌なので、申し訳ないですが、美果さん少し拘束しますね」

私が私を傷つけようとしたことにひどくショックを受けている。メイドさんの気が済むならと了承した。私の了承を待って、メイドさんは丁寧にがっちり、何か事を起こせないように。

くすぐったい。

「美果ちゃん、脇がら空き」

あのね、ふざけて話をそらすな。

「私はみんながハッピーになる考えを、そもそも普通に心理的に物語の定番ですよねって感じで美果ちゃんと琢磨君がゴールしたとして、今の現状を変えられる?」

麻雀は楽しく打ちたいよ弱いけど。3人は明らかにプロとして通用するけど麻雀プロに価値を感じてない。

「たまにできればいいかなってくらい」

マッチしないことはよくある。

ただ、このマッチするしないに関しては、麻雀とは別軸の大事なことだ。

「段階と多様性がいよいよ必要な段階に見えるけどなあ? だってだんなDEATHとか明らか不健全じゃない。なら別れても育てられる選択の幅を作るなり、最良選択をみんながとれるわけじゃない」

「じゃあ、私が主で、聡美が属でも良くない」

「自分ひとりの勝手な主張」

「美果は大事な幼なじみだが、恋愛相手としては俺は聡美のほうが好きだ」

「目が金になってない?」

「目的達成の手段に過ぎない」

目的達成の手段が大事なんじゃない。私とだと働かなきゃいけないから。しかもブラック企業の罠ばかりのこの地で。2人とも頭良くないし、麻雀の夢を追いかけるなんて言えなくなるかもしれない。

「美果にはもっとふさわしい」

「ふさわしいのは私と琢磨」

ここまで来て隠すのは得策じゃない。

「仲のいい友人で」

塩分混じりの水がダム崩壊して服を濡らす。体内の塩っけがどんどん出ていって、せんべい好きな私にとってはバランスがとれるというもの。水分も意識して取りすぎていた気もするし。

「私の会社で一生働かす」

「社長権限ですか? 職業自由の選択はどこに」

「あなたの愛してる聡美はそれがご希望みたいだけど」

不自由を得た琢磨に切り返す。

「事業は麻雀関連の、快眠グッズって」

「琢磨の寝姿気持ち良さそうだから」

はあ、やめよかな。感情で事業決めちゃいけないのだけど。

「身の回りのものにアクセント的に麻雀っぽい印字なり印刷なり、欲しい人どのくらいいるかは分からないけど」

麻雀の腕はなくても麻雀見る専、麻雀プロ好き勢はいるはず。そういう人にも麻雀を日常生活で感じられるように。麻雀が好きで好きでたまらない女子が持っていて恥ずかしくないおしゃれな、でも麻雀好き同士だけが分かるさりげない演出がグッズに施されている。

「麻雀人口が増えている今なら、ネット活用でいけると」

何より、私が欲しい。私が一番のお客さん。

「関連でちゃんと、せいぜい増やすにしても聡美と琢磨と尋歌と数人くらいの会社」

そんなに責任持てない。私の道楽で生活できるかなんて私はそれを勝負する価値あるけど。

「確実に赤字にならないようにプロや雀荘に来る方、麻雀チーム戦のライブビューイング来る人になら直接会って聞ける。だいたいの商品構想は描くけど、第一は購入者が欲しいもの」

もちろんお客様の想像を越える商品も仕込みつつ、だけど。

「俺と聡美のもつれより麻雀に恋しているもの」

「かもしれない」

フラれて当然である。私が勝手に才能を感じている3人は、麻雀プロになる気がない。それぞれ別の夢に対するアプローチを麻雀に応用して強くなっている。私も麻雀以外の好きなことも見つけると麻雀強くなれるかな?

麻雀弱い麻雀バカがここに爆誕してしまった。

「美果の麻雀好きを受け止められない俺は」

麻雀に関する温度は琢磨、聡美、尋歌は同じだ。私に誘われて面白さを知った以上にはならない。

「趣味が違ってもうまくいくケースある、性格なんて違うほうがいい、確かにそうだが俺は疲れるのが何より嫌いだ。だから人間の睡眠欲に関して興味がある」

沸き上がる欲望を削ぎ落とす作業、禅に対しても独自の考え。琢磨のしたいことははっきりしている。

「寝て見る夢そのものの解明もされてないのに夢オチは悪だとか、そもそも夢オチは何でもありだからの大元、寝て見る夢というのには法則性はないのか。診断できるなら、心理状態の本音の置換に過ぎない」

夢を見る状態が無防備だから隠し事できない。

防衛本能はあるから、そもそも全部は覚えてないし、いや大規模な統計調査がいるかも。

「余力ある調査ができるのは教授の世界じゃなくて世界を知る崖霜家かなって」

「打算じゃん」

「金は手段だって言ったじゃん」

「そんな弱味出したら食いつくされるよ」

「もちろんそれ以上に崖霜家に貢献するよ」

どこの馬の骨ではいられなくなるのは確かに。

「はっきりと失恋」

変わらないのか。

「変わるかもよ」

それは辞めて。勘違いするから。

「恋愛の選択肢が狭すぎるんだよここは」

また聡美みたいなこと言う。最愛の人だからって影響受けすぎ。

「ではなんでこんなことになっているのでしょう?」

精神的行き詰まり、諦めの境地、知り過ぎた弊害。大人が若気の至りを潰す社会。

「労働する場ではないと、サービスを受ける場だと、ここが選択される社会だと」

世界から自由に選択できる側からすれば、そうなるのか。

「俺もメイドさんに教わるわ、実践的な語学」

何もかも奪うのね。

なんか、辛い。

「そもそも麻雀を覚えて美果が満足する打ち手になるようにみんな人知れず努力を」

分かりました私が悪かったです降伏いたします。強くなりすぎも結局は私がそう望んでなってもらったのだ。感謝だ。それが結果としてキューピッドになったことに複雑だから感謝しきれないのかもしれない。

「俺も寝る時間惜しんで」

琢磨の寝る時間を削るは重い言葉だ、反省。

「もちろん俺も美果の幸せを願っている」

「なら」

「なら?」

「尋歌の了承したこと、私も了承する」

明確に差別され好奇の目で子が見られるかもしれなくても、それは大人の認識不足のせいであり、子は悪くない。

「俺はそういうのは聡美だけでいいのに」

琢磨に選択権はない。女性の意見は大事にしなさい。誰が毎月好き好んで犠牲を払っているのか、対価ももらえないなら、苦しみだけが人生に残る。

「だから私も稼がなきゃいけないのよ。他人の会社や組織に捧げない方法を知らないといけない」

「麻雀には捧げるけど」

「麻雀には捧げますよ」

尋歌と私はスタンスが違う。麻雀のタイプも人生の歩みたいルートも。

「未来の話だよね」

「高校卒業くらいのね、でもこれだけのことを、本気で実行に移せる相手かを見極める期間としては、短い気もする」

常識がひっくり返るもんなあ、せいぜいチープなフィクションの話だろと思っていた。

「福が舞い込む福の島だからここは」

福島ノ福島は多分そういう意味じゃない。福を求めるパワースポットとして観光地になるのは、地元にお金が舞い込んでいいことだと思うけど。

「観光の目玉を外に伝えづらいなら福島って名前を大事にして運が良くなるとかうまく言葉にしてさ」

あのキャラクターも来てくれたし、良運良縁スポットに県全体をつつむのが得策、かもね。

「地元の人も、幸せのきっかけを観光客から教えてもらって相互に幸せをつかむ」

イメージは、2011で止まっていていいのかいや良くない。

「俺は間違いなく聡美の仕事の補助役であり、美果の会社の補助役として働かせてもらえるなら働くよ」

「家のこと出来るの?」

「ほぼできるでしょ」

確かにほぼできる。琢磨が家庭を責任持って仕事として担う。聡美が稼いでくる。

あれ? あの作品そうじゃなかった? マスコットが少女に詐欺的契約を迫るやつ。

「体力勝負だよ、神経も使うし」

ほぼ母みたいなことを男がやるのは大変だよ。

「今から俺が崖霜家の受け継がれてきた伝統を覚えるほうが大変だよ。もちろん美果の麻雀道も大変だし、尋歌のプログラミング関連も大変だ。それなら料理洗濯掃除ゴミ出しのほうがいい」

女性に自己実現をしてもらうための人生でよいと。

「俺が主導しなくてもいいし、睡眠に関する人類の研究は」

男性だけが社会に出て働け? これが不幸のはじまりだと、常識は破壊してこそだと。元より腕力に差はあるのだから、社会的立場まで男性が独占しちゃダメでしょ。

「ここまで言っても変わらないなら、好きな地元もとよりこの国を離れないといけない。故郷はひとつでも、現在の住まいは変えざるを得なくなる」

他人は知らない。神宮寺琢磨は崖霜聡美が崖霜家の人間として主になっていて欲しい。それは何もかもそうなれとも言ってない。琢磨は聡美のバックアップがしたいと、ただそれだけ。

「バックアップって意識もないけどね、家が快適って睡眠欲を叶える最重要で核心部分だから」

なるほど琢磨も軽睡眠は邪道だと。ちゃんと家で睡眠できるならそれが一番だと。

「専門家と意見交換はしたいけどね」

仕事はしたい人がするべき、女性だから家はさすがにおかしい。いつまで幻想の中の世界にいたいの?

現実が集団で幻想共有しているようにしか、琢磨には思えないらしい。フェミとかではなく、琢磨なりの理想追究の先に家事があったと。

「聡美に気持ちよく仕事から帰ってきたときに食事は私好みの栄養を考えた料理が用意されている、入りたい気分の時にお風呂は用意されている、気持ちよく朝目覚め、仕事に向かうことができる。俺が家庭を担ったら、少なくとも睡眠欲に関しては最上級の満足を提供し続ける自信がある」

食もスーパーに行けば補完してくれるものがたくさんある。主婦を助けるなら主夫も助けるでしょうね。そもそも琢磨には主夫仲間も必要ないかもしれない。

「一択しかないから、不自由で病むのでしょ。そもそも国宝級のレジェンド女性声優さんは、家族の支えがあってでしょ」

具体例が来た。あの声であのキャラクターを見続けることができるのは、確かにそうだ。

「美果は雇う側になるんでしょ? ならよりいっそう人と人とのつながりを大事にしないと」

苦手だ。

「俺も苦手だよ。いろんな性格の人間と向き合わなきゃいけない、主夫は外で働く最愛の妻に最適であればいい」

うわ、なるほど。コミュ症は特技に変えると。

好きな人なら本気になれる。

「別に知った顔の人だけでスモールビジネスなら気を遣わずに仕事できそうだけど」

業務拡大する気は元よりない。麻雀好きに確実に満足してもらえる小規模の商売をしたい。

私の好きな麻雀プロも、ちょうど快眠に興味あるツイートをされていたから、やっぱり需要あるんだなあって。これ、小説の中の話かと思ったらホントなんですよ。ツイ消ししてなければ、さかのぼればあるはず。

SNSも、麻雀を広める重要要素。わたくしごとの恋のごたごたで止まっていた更新、動かしますよ。

「あらゆるクレームを代表が受け止めなければいけない。責任者として」

麻雀好きを不幸にしたいと思ってグッズを作るつもりはないが、万が一こちらの責任で商品サービスに不満足な点があれば誠心誠意謝り、改善させる。

「するよ、そのための社長でしょ」

だから偉ぶるためになりたいわけじゃない。もし私にプロ雀士の道が難しいならそれでも麻雀に関わりたいから麻雀グッズの事業を興すのも選択肢かな、ってくらいだ。

どのみちプロになれば容姿から何から言われる。その覚悟を決めても表舞台に立ちたいのよ私は。

「俺は別に」

だから家の警備に回れ! それが聡美の望みならそうすればいいさ。

「まだカップルだよ気が早いなあ高1の夏休みだよ」

すっげえ時が経った気がする。なんかもう大人になったような気分。去年までの夏休みはこんなことになるなんて思わないというか普通は望まないよこんなこと。確かに成功者は人が自由を謳歌している時に汗をかき上昇気流にのった人。その激流に打たれている。

任せる。任せられるように育てる。

「あーやっぱり嫌だ。私が琢磨とカップルになりたかった」

「二股は人生の災厄しか呼ばないから俺のほうからお断りします」

「それでいて……」

もうこれ以上言ってもしょうがない。ワンオペでくたばらないように、聡美?

「もちろん私が2人に提案しているのだから、私の家が責任持って環境を、専用の環境を作ります」

合理的に考えたら、絶対得策。じゃあ女は人生を祝福されるために男にさんざん何を望んでる? いや家のことしないならそうなるでしょ。

もう、言い争いの連鎖。

私だけが、幼少の頃から琢磨を知っているなら当然琢磨は私を選ぶはずという幻想で頭がいっぱい。そうなったら私は琢磨に何を望んでそれを琢磨はできるか、できずに私がイライラする未来が容易に想像できる。

「崖霜の力で琢磨になんかあったらただじゃおかないから」

「私が美果ちゃんに嫌われるのは当然だし、そうするつもりはないけど、監視役として美果ちゃんほど適任者はいない。あとね、その後も」


《ユルサレール博士の助けが、必要なら》


出た、トンネル工事で市と町村の繁栄のために自分の大好きな山を明け渡し、ユルサレール力を得た博士。ボケないための発明屋さん。私達の関係性までその力を使ってくれるの? 麻雀だけじゃなくて。いいよ大丈夫。

麻雀のチーム戦はその特性を生かし野球シーズンの真裏。夏休みはまだかまだかと待ち遠しい時期なのである。

「ベタにデートしようよ、いや普通に麻雀部で夏の思い出をつくる」

とりあえず、福島ノハワイに行くのは確定として、尋歌に聞こう、福島ノいわきの観光に関しては。福島ノ雪国方面である会津一帯も、どうせなら。聡美が日本にいる間に回っておこう。

それ以外は聡美が勝手に観光なり調査なりして知って。

普通にバーベキューとかしたいし、花火を見に行く格好にもなりたいし、祭りも楽しみたい。

「道留は来るかな?」

ゴルフ練習に絶好の時期だろうけど。

『り』

了解だって。

「私達を前にして断る殿方がいたら教えてほしいわ」

まあ、私は知らないけど、聡美は食べているものが違うのか血筋なのか美女だし、尋歌も知的なカッコよさの光る美女。頭のいい女を求めるなら尋歌だろうね。にしても聡美はいつでも自信満々だね。

「誰も古い考えによって不幸せにしたくない。麻雀が縁で出会った美果ちゃん、尋歌ちゃん、道留君? そして琢磨も」

私の許容量と聡美の許容量、どちらが上か答えは明らかだ。にしても聡美は、普通に女子に聞いたらめっちゃ拒否される考えだよそれ。

「普通は普通じゃなくなる。他者の否定でしか生きられない人間は置いてきぼりされる」

確かに他人の人生に悪態をつく人間の心は荒んでいる。

「そもそも世界に住む崖霜の精神は私も引き継いでいる」

特定の住所を持たずにその時その時で住む場所を変える。家の伝統ってことね。

「ひとつの文化に肩入れし過ぎずに、世界の総和で世の中を見ていかないと、均衡が壊れる」

世界を見る広い視野は、そう育てられたのね。

「別に私が美果ちゃん側になってもいいけど、かなり迷うけどここは本音をさすがに優先したい」

そんな理由で譲られても困る。人としてのふさわしさ競いだから。

せめて麻雀くらいちゃんと聡美に勝てるようにしとかないと、私の究めたい本分だろと。

でも麻雀を究めたいとなると、苦手過ぎてじんましんの起きる数字に強くなければいけない。お買い物のレベルでない高度な損得計算を瞬時に。相手の打ち方も覚えて生かさないといけない。

ただ、麻雀強くなるは私の自己満足に過ぎず、琢磨へのアピールに一切なってない。

幼なじみ効力って、こんなに賞味期限早かったっけ? 私の未熟さとか色々噛み合っちゃったんだろうな。

だから私は麻雀好きの凡人で、恋すら迷走中の女。招いた原因は麻雀なのに、それでも麻雀が好きな気持ちは変わらないの、本物の愛でしょ。

女子が好きな恋愛ソングの愛の対象が全部麻雀に変わる私。そもそも恋愛戦線に参加してない疑惑。そんな私でも、女としての幸せの知恵を授けてくれる崖霜家の聡美専属メイドさん。

なるほどこうやって影響力を。

「私はこれから世界に散らばる崖霜家の次期当争いに美果ちゃんと尋歌ちゃんと挑むことになる」

勝手にあなたの家の後継者争いに巻き込まれるのね、勝手にして。

「破れたら、どうなるの?」

「いい暮らしは継続」

「勝ったら?」

「崖霜家の覇者」

意味あるのかなあ? まあ聡美達にとっては意味あるのか。私も麻雀知らない人にどの麻雀プロ勝った負けたに対してぞんざいに言われたら憤慨するから。私は熱くなれるの。

「ここらで冷静な意見も聞きたい」

学校一の才女の出番。

「私は美果とは立ち位置が違う」

いや、それでいいの?

「子はかわいい」

やっぱり尋歌でもそう思うよね。

「不健全なダンナ不要論がネットで展開されるなかで考えた。依存しなきゃいいんじゃない?」

ダンナに悪口を言うことで精神の均衡を保とうとする醜い大人の女。まあそれだけの男なのかもしれないが、はっきり言ってどっちもどっち。

尋歌は故郷がいつ帰れるか分からないから、自分で稼ぐ道の勉強も学校勉強と並行して学ぶ理由があったが、まあそうでなくてもね。

「心地よく過ごせる仲間だけで小さくまとまればいいのよ」

わざわざ災厄を招く必要はない。

「私には聡美も琢磨も拒否する理由がない。あと美果は自分に自信が無さすぎ」

だって。

「だってかってに美果のいいとこ」

言ってくれるの?

「麻雀バカ」

誉めてる?

「強みじゃない。私は言われた誉められポイントを伸ばしていただけ」

学校の勉強か。

「突き抜けて研究者はすごいし尊敬するけど、私もその道でいいのか?」

尋歌も進路を悩んでいるんだ。

「悩むには早すぎる、いやでもあれだけのことがあって思考停止になれたら相当おめでたい人だよね」

変えたら変えたで、化石燃料使いすぎどうのと言われるというね。

「まあ、まだ試行錯誤できるから、私達は」

いつまでもは無理だけど、まだ高1の夏休みだよ、シリアスだよね私達。

「いや誰よりも幸せな自信がある。主に美果のおかげで私も友達、はじめて親友が出来た」

尋歌は孤独だったのか。勉強が出来すぎるのも困り者だ。

「確かに美果の言う通り聡美の思惑通りに事は進んでいる。田舎の人間を騙す新たなブローカーと言っても差し支えない」

都会に電力供給の旨味を地元の先輩たちは教わったのちに、今度は世界規模の華麗なる一族から自分たちへの旨味を教わる私達。

「許諾したけど、根の腐ったとこまで肯定しているわけじゃない」

まあ、両方から責められそうだけど、尋歌ならはね除けるでしょ。私も尋歌を守るし。

「ところで会社経営の本気度は?」

「とりあえず文化祭で試作品創りたい」

ちょうどいい披露の場がJKにはある。この手を使わないわけにはいかない。

「部活動の一環として打ち込めるし、多少は外部の人にも見てもらえる。アピール文とかも考えられるし、もちろんそれで満足するわけではないけど締め切りがあると頑張れるじゃない?」

「一周回って文化祭の出し物を決めるのね」

「琢磨には教室に快眠空間を作ってもらうわ」

ふかふかなのを確かめるのOK、実際に寝るの禁止で。そうしないと生徒会長が飛んできそうなんで。

「麻雀×快眠の出し物で」

4人で麻雀をする以外の活動が決まる。ネットの麻雀大会参加もしてみようか?

「忙しいなあ」

嬉しい悲鳴だけどね。

だけどぽっかり穴が空いている。やはり奪われた想いは消えない。絶対に聡美にとって譲れない線以外の面であらゆる豊かな富を提供されても、私は譲れない線を取り返したい。

崖霜聡美に対する呪いだよね、これはもはや。

琢磨もこうなるつもりはないけど巻き込まれている。男の夢のまた夢を望んでいたわけでもないのに巻き込まれる。

私に麻雀に巻き込まれ。

聡美に恋愛に巻き込まれ。



尋歌は琢磨をどう思っているの?

「どうも思ってないよ」

本音で話そうよ、負け組同士腹割って。

「私、負けなの?」

慰めるよ。

「いや、自分で選んだ最良の選択肢」

ならさ、琢磨でいいの?

「美果が教えてくれたじゃない」

はーもうダメだ、女子は共感が大事だって学ばなかった?

「嫉妬心で女同士不幸の沼に引っ張りあうのは違うでしょ?」

共感なんて嘘だ。恋愛が絡んだら絶対ムリ。

尋歌もなかなかスゴいこと言っているのだけど、学校トップの成績を出し続ける先生達には尋歌の悪評なんて耳に入らない。別に悪いところはないしいい子だけど、明らかに日本だと異質の選択をしようとしている。

「○○人らしくって何? こういうコミュニティにいる人間ならそう考えるようにって強制でもされてるの?」

いやほら、この宗教圏にいる人ならこうとか宗派をつくって対立してとか色々世界にはあるって尋歌は勉強得意なんだから私より知っているじゃない。

「現場の生の声を聞いて学びを深めるなら崖霜家にお世話になったほうが」

そうだけど、そうじゃない!

「麻雀を広めるきっかけになったのは、スポンサーさんでしょ?」

そうです。はあ、まだ猶予はある。

最初の最初、聡美は琢磨に対してというより、私を心配していた。あまりに麻雀バカ過ぎて他が見えてないから。のめり込むのは事業なり目標達成につながる推進力になるが、私の好きは麻雀が強くならない好きで、3人の雀力ばかりかプライベートまで幸せにしてしまっている。

聡美の私を心配したくなった女の勘は当たり。

「尋歌側は結論出ているのか」

「だから聡美と琢磨と話しなさい、聞いててあげるから」

尋歌の心強い御言葉。



「私の美果ちゃん心配愛が琢磨君への恋愛に代わり嫉妬心」

えーと、残念ながら私にそっちの線は。見るのは好きだけど当事者の心は育っていない。

「俺以外にもいい男いるぞ」

そう、聡美にそれを言いたいの私は。

「崖霜家で誰よりも優秀な人間に育てあげる自信がある」

「ほら、政略じゃない、愛のない」

「愛がある上で、よ。もちろん」

「感じられない」

「普段の私達、見る?」

もう既に、聡美も琢磨も恋愛モードなんだよね。さんざん恋愛バラエティー見たじゃん、うまく行きそうなカップルの見本例じゃん、なんで私が割って入れないようになってるの?

性格生き方人生の歩み方間違いか、確かに甘美な魅力が麻雀にはあり、最愛なはずの家族が離婚になる麻雀プロ、多い。何より道留の父が雀荘狂で、もちろんそれだけが理由ではないだろうが離婚となった。

もちろん麻雀のせいではない。私が悪い。

長い時間の関係性に甘えてぞんざいな対応を琢磨にしていたのは私だ。女性なんだから、レディーファーストだから、子どもの時はそんな意識なく琢磨と接していたじゃない。

聡美はさまざまな国々を渡り歩いているから、それぞれの地の清濁を受け入れた上で主張するからこちらも話を聞きやすくしてくれる。それで私も余所者の聡美に心を開いた。

「みんなと仲良くしたい」

でも、その権利は譲る気がないと。

琢磨の気持ちになる。そりゃそうだ、こんな人間より、聡美を選ぶのは裏切りでもなんでもない。

「美果を闇落ちさせたくない」

幸せには出来ないくせに。

こういうしくじった心の私も救うつもりなんだよね。分かるけどさ、いらない優しさだよ。

分かっちゃいるけど止められない。聡美だって私がそうだって分かっていても、まあ、理屈じゃないもんね。

「諦めないけど今は負け」

とりあえずそう私は宣言した。いつ勝てるんだって話なんだけど。油断大敵って言葉を軽んじていたら自分がそんな目に合った。

「勝ち負けじゃないって」

常識の更新を尋歌みたいにすんなりいかないのよ私は。同い年だけど、頭の出来が違い過ぎる。固い、カチンコチンで冷たいもの食べてないのにキーンとしていて使い物にならない。

多分こういう精神状態なのがまた悪循環を生んでいる。誰のせいにもしたくない。噛み合っちゃっただけなんだ。

精神が健全でなければ、麻雀の攻守のバランスも崩壊してしまう。多分何をしても満足いく結果にならない。

「高校で何をするか、その先の未来も決まったわね」

全部聡美の思い通りにする気はないよ。でも敵対もしない。これまで通り、部員同士仲良くしましょう。

こんなことなって、麻雀の勝ち負けが本気になりすぎはしないか心配なんだけど。私に闘志が足りない面は、あったかもしれない。麻雀を広めたい気持ちは元からあったけど、自分が麻雀強くなって広めたい気持ちは薄かった。こういう魅力的な選手がいる、麻雀打ってない時はこういう一面もある、麻雀と接点がない人に伝えられる人、やっぱりなりたい。

そして多分、そんなに早まるつもりもなかったんだけど、人生のスケジュールが早まりそう。クラスメイトから何か言われるのを適度に聞かないようにする術はもう学んだ。そもそも厨二病発症時にさんざんおかしいことはしたんで。

怖いのは、私と尋歌も聡美の崖霜家の政略争いの協力な援軍になるということ。尋歌は気にしない風だけど、私普通に怖いんだけど。聡美は巻き込んでいる自覚があるからか、福島ノ福島に建てた豪華別荘を私達に解放している。

「どの道さ、麻雀を世界スポーツにしたいならコネクション必須だよ」

想いだけで麻雀は広まらない、別の文化圏の人間と話せるチャンスは確かに欲しい。

尋歌も勉強秀才からくる孤立を解消して、みんな幸せ、なのかな?

夏休み、南にある都会よりちょっと短い夏休みは始まったばかりだ。


普通の夏休み生活が色褪せて見えるようになった。厨二病はイタイのだけど、通り過ぎて考えも熟成してくると世の中の見方を変えるのに有用なプロセスであったとありがたく思う。

まさか私が学校の勉強以外の勉強を進んで休みにするようになるとは思わなかった。多分ここに、もうひとつ大きな勉強をすることになる。でもなんか怖くない。自分で集めた麻雀仲間が最強過ぎて心強くて、乗りきれそう。

多分聡美の考えていることは、世界の金持ち一族で日夜繰り広げられている勢力争いの中でも、そこまでの方法は思いつかないよということをしようとしている。

今、故郷を外からどう見られているのかは分かるようで分からないけど、私も琢磨も、尋歌はもっとか、小さい子どもの心にしっかりとトラウマを残して過ぎ去っていった。どんな形であれ救いがあれば掴んでしまう気持ちを他人に否定されたくはない。

そういう心理を見抜いたのであれば、まあしょうがないか。

あくまでも私達の選択であって、他の人もそうだとは思われたくない。

だから私に故郷の代表はふさわしくない。普通に嫉妬心溢れる麻雀好きの女の子でしかない。自分なりにオシャレして、気持ちをあげてイライラを乗り切る普通の女。

もう、アイツにとって何番かもいいや。

そもそもアイツは恋愛に興味出して小細工始める同級生男子に全くついていかず、自分独自の自制方針と寝る時の快楽追及をしていただけだった。それが様々な国々を経て福島ノ福島に来た崖霜聡美の目に止まり、奪われた感覚になって幼なじみに恋心があったのだと意識させられ、尋歌はまた独自の考えでアイツを見ている。

こうこうこうなりそうなんだけど、どう思う?

球樹道留に聞いてみた。ゴルフ最近どう? からのこれ。

「他人を否定したくはないが……」

頭を抱えてしまった、そりゃそうだ。

「何か俺で助けになることがあれば。人生経験豊富な先輩紹介できるぞ。悩みも深まるだろう」

頭ごなしに否定してもおかしくないカミングアウト。それでも尊重してくれる道留。ぶっちゃけられる第三者がいて良かった。

「俺もそんなに美果が幸せそうなら麻雀再開しようかな」

「ぜひぜひ」

私達4人より強いから、歓迎だよ。スポーツの勝負勘は必ず麻雀でも生きる。本気で取り組めば、必ずトッププロになる。ゴルフで一通り体力の続く限り挑戦した後に麻雀プロでも全然大丈夫。

「競技人生を二回味わえる」

この道一筋だけが偉いわけじゃない。むしろ父親との確執あるのに道留が麻雀に前向きになってくれただけでも嬉しい、男としても立派になったんじゃない?

「あ、ありがとう」

カッコいいよ、まずはゴルフで一流目指して、合間の息抜きで麻雀アプリでもして勘を忘れないようにしてくれたら麻雀広め人として最高に嬉しい。語彙力ないな。嬉しいじゃ効かないくらいの表現で道留の生き方を賞賛したい。

「分かったよ」

いつまでもどこまでもスポーツマン特有の爽やかさを纏う道留。頑張れとしか言えない。


私は本当にこれでいいのか。

じゃあ3人を集めて麻雀部を結成してなかったとして、1人黙々と麻雀熱を高めながら嫌々学校の勉強に向かうのと、国際経験豊富な聡美と勉強なんでも教えてくれる尋歌と、そう、何考えているのか分からない軽睡眠で秘めた才能を発揮する奇人の琢磨と交流できている状況。

そりゃぼっちじゃないほうがいい。

人間関係の上での面倒くささはもちろんある。聡美の悪魔的提案からはじまり尋歌は服従したようで自己をしっかり持っている雄々しさに戸惑う。琢磨も嬉しいはずが困惑、そんなつもりはないのだから当然だが、責任はとろう。たとえ聡美の裏テク中の裏テクで世界の金持ち達をびっくりさせたとしても、それは私や尋歌には関係ない。それは聡美のストーリーだ。

ここまででなくても、他人といるって基本ぶつかる。自分のしたいこと出来ないし、何となく主導権を持つ人間についていく。今も私達は聡美に主導権を握られているのかもしれない。

「私が一番下だから、この街の素晴らしさをみんなに教えてもらっている」

福島ノ福島歴なら確かに聡美は1年生だ。

「美果の立場は聡美をよく思わなくて当然だし、でも私は2人に会えて良かった」

そう、尋歌、そうなの。私も2人に会えて良かった。2人だから、色々許せる。


やっぱり他人と、もちろん信頼できる仲間を見つけたからだけど、ぼっちよりこっちのほうがいい。自分自身でしていた努力が、2倍3倍じゃ効かないくらい大きな掛け算になる。

だらだら過ごすだけの益にならない相手ならいらない。聡美も尋歌も琢磨も、麻雀プロになるつもりがないのに麻雀打っていて絶望を感じるほど強い。麻雀ファンの私が手も足も出ない。強くなる努力の仕方を知っていて、それは他の分野で独自の学習方法で体感しているから。

私だけが凡人。だけどそんな私にも、麻雀を教えてくれた子ってだけで優しくしてくれる。

麻雀のきっかけを広める役はできる。強くなる好きじゃないのかなあ? やっぱり麻雀グッズ販売路線からの社長業のほうが向いているのかな? いわゆる裏方というか、監督路線?

いずれにしても、歳を重ねたらメッキが剥がれて醜くなる迷走女にはなりたくない。今のうちにまっとうな努力の方法を身につけておけば、老化に負けない女性として幸せな人生の歩みを持続できる。

だから私は、夏休みなのに勉強している。夢のための勉強ね。

ちやほやされてる時に勘違いしてたら落とされた時に誰も救ってくれないからね。態度悪くて助けたいと周囲も思わないし。

「すごい自己主張強いよね私」

こんな熱血女についてこれる男いるのかな? 確かにそう考えたら、琢磨はベストなパートナーではないな。聡美の温度がちょうどいいのかも。

すんなり諦められた。

「いいの、ホントに?」

「そのかわり」

「私がそうしたいから、それはそうして」

まあでも、ホントにそうなるかは天次第だからなんともだけどさ、恐ろしいこと考えるよ。琢磨の理想を叶えつつそれすら聡美自身の崖霜家内影響力に繋げていくって。こんな聡美についているメイドさんはそりゃ優秀だし、胆力あるわ。

「おそれいります」

「ホントにいいの? 琢磨を崖霜家に引き込んで?」

「幼なじみの、子どもの頃のベストな関係と今のベストな関係は違うから。厨二病を境に、私と琢磨は距離が離れた」

身体的な変化もあるし、それまでとは一緒ではない。高校進学時には、ベストな相手は変わっていた。それは自然の摂理。

あれだけ、結婚相手の年収が大事オバサンが世の中を跋扈していたら、琢磨も結婚にはお金が大事って刷り込まれて私よりも聡美ってなるよ。こういう考えだからダメなんだろうけど。

「聡美の言いなりでそうするんではない。だって嫌々麻雀してないでしょ? 魅力を感じて能動的に麻雀に取り組んでいる。私もしたいからするの、聡美が引け目に感じることない」

最後に、琢磨だな、責任の当事者中の当事者。

「安らげる睡眠空間の演出と軽睡眠中に物事ができる、もしかして必要になる?」

すごく助かる。特にそれが、やっぱり琢磨で良かった。



私と聡美と尋歌はほどなくして、琢磨の子を宿した。聡美の本来の日本滞在期限頃である高2の夏くらいに立て続けに出産。当然聡美は日本滞在延長。

結婚は、まだできないので、琢磨が結婚できる歳になったら聡美と琢磨でする、ということで落ち着いた。

尋歌はダンナいらずで子育てを早いうちにしたい考え、尋歌の聡明さならきっと賢い子になるはず。心配してないけど相談はもちろんのる。

私は、まあ悪戦苦闘の連続になる。凡人だし。親はなぜか反対しなかった。しておかしくない。大変になるの確定なのに。変な噂も立つ。

この歳で、婚外子の赤ちゃんいる娘のいる親。しかも全く多数派ではない国。

もちろん責任持って育てるし、琢磨も自分のための睡眠探求が赤ちゃんに活かせて嬉しそう。琢磨に任せるとめっちゃ寝つきいいんだけど。ママ側が嫉妬するくらいに寝かしつけの才能に溢れるパパ。


てなわけで常識を外れまくった私達。まじでママとしての顔もあって麻雀チーム戦の選手でもある人生の先輩として聞きにいきたい。

まじで人生なんてどうなるか分からない。ただ麻雀仲間を集めて楽しく高校生活を送るはずが、こんなことに。

優秀過ぎた、たまたま私の同級生が、聡美に至ってはタイミングばっちりで福島ノ福島に来たから、福ノ福ノ福が舞い降りたのかもしれない。


幸せは、世界を変える。

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